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2006年4月12日 (水) 更新

[発言録] 窃盗罪等の罰金刑新設法案に対する質疑

2006年4月6日(木)
参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
 杉浦大臣になられてから初めての質問をさせていただきます。荒井先生のように格調高く入れませんが、率直に今回提案されています法案について御質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 今回の法改正の部分でありますが、まあ近いのでは、先ほどもありましたように平成三年の法務委員会での附帯決議、すなわちまあ法務委員会で様々議論がありました、財産犯について選択刑を導入すべきであるということを附帯決議として挙げられております。その後、十六年の附帯決議、そして大臣諮問の、第七十五号の諮問というふうになっていっているわけでありますが、最初の平成三年から見ますと、もう実に十五年期間を経ております。えらい長いこと時間が掛かったなというふうな気がするんですが、これだけ時間が掛かった理由というものはどんなものがあるんですか、お聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(杉浦正健君) 先生御指摘のとおり、平成三年の当委員会における附帯決議以降長い年月が経過して、いろんな経過がございました。まあ当局にこの点、詳細を説明させたいと思います。

○政府参考人(大林宏君) 恐れ入ります。
 ちょっと詳細にわたりますけれども、ゆっくりでよろしゅうございますか。
 御指摘のとおり、平成三年の当委員会における附帯決議で、財産犯や公務執行妨害罪等に関し、選択刑として罰金刑を導入することについて検討を求められたところであり、法務省におきましては、その後も、平成五年までに開催した法制審議会の審議等も踏まえ検討を継続してまいりました。ところが、この平成三年ないし五年ころにおきましては、公務執行妨害罪や成人による万引き事犯の検挙件数が昭和四十年代後半以降ほぼ最低水準にあったのが、その後これらがいずれも急増傾向に転じました。
 数値を具体的に申し上げますと、成人による万引き事犯の検挙件数は平成四年に三万三百三十九人と、連続的な統計が得られます昭和四十七年以降最低の数値を示しておりましたが、平成七年には四万五百八人となり、更に十年後の平成十六年には七万七千三百六十人となっております。
 また、公務執行妨害罪の検挙件数は平成五年に九百三十四人と、同様に昭和四十七年以降最低数値を示していたものが、平成七年には千百二十九人となり、平成十六年には二千八百五十三人となっており、またこのうち警察官に対するものについて見ますと、平成五年には八百四十五人、平成七年には千四十四人、平成十六年には二千五百四十三人となっております。
 このように、ここ十年を取ってみても、公務執行妨害罪や窃盗罪、特に成人による万引き事犯の検挙件数が急増しておりますところ、この中には国民の日常生活の安全等の観点から再犯防止の要請が高い一方で、犯行が偶発的であるなど比較的軽い類型の事案も見られ、自由刑を求めて起訴すべきか否かの判断に困難を生ずる事案も急増するとともに、特に万引き事犯への歯止めを求める声も高まっております。さらに、平成十六年にも衆参両議院の各法務委員会で附帯決議がなされ、盗犯に罰金刑を選択刑として導入することなどについて、政府として格段の配慮をすべきであるとされました。
 以上の事情から、今般、公務執行妨害罪や窃盗罪などについて早急に罰金刑を導入すべきとの判断に至ったものでございます。

○松岡徹君 事前にもいろいろと聞かせていただきまして、そこで今回の改正法案の提案理由で、大臣が主なところで、今もありましたように、犯罪の増加、近年犯罪が増加しているということを言われました。そしてもう一つは、最近の国民意識に照らしてというふうにあります。
 大臣にお聞きしたいんですが、この国民意識というものをどういうふうに今大臣はとらえられておるのか、お聞かせ願いたいと思うんですが。

○副大臣(河野太郎君) 近年、特に交通事犯に対する国民の目が非常に厳しくなっております。これをとにかく減らすために罰則の整備を求める声が高まってきておりまして、刑法における危険運転致死傷罪の新設、あるいは道路交通法違反に対する罰則の引上げなどを行ってまいりました。
 業務上過失致死傷罪の罰金刑につきましては、交通事故の被害者の方々あるいは御家族の皆様から、重大事故は懲役、禁錮刑になるとはいえ、人の命が奪われて罰金の上限が五十万円では余りに軽過ぎるのではないか、そういう上限引上げの御要望をいただいております。また、現に、業務上又は重過失致死罪で罰金刑が相当とされた事案で、罰金刑の上限額である五十万円が科される割合が四割を超えておりまして、もう上限に張り付いているということを考えますと、この上限額を二倍の最低限百万円に引き上げるということは国民の意識に合致するものと考えております。

○松岡徹君 その提案理由の中にそう言われてます。それだけ聞くと、要するに厳罰化といいますかね、重罰化というものを望む声にこたえるような提案理由としか聞こえないんですね。
 先ほどもあったように、様々この間議論されてきたことがたくさんあると思うんですが、その中で、もう一つの提案理由の中にある、起訴するかどうか判断に困難を伴う事案もあるということもあります。そういう意味ではそれは窃盗罪のところでもあると思うんですが、私はその辺のところを中心にして聞きたいんですが、今回の改正によってどのような効果というものが期待されるのか。私は、単に重罰化をすることによって、これらの犯罪が減るのか、あるいは再発防止につながるのかという、こういう視点がしっかりと議論されていなければ、単なる、国民意識は、重罰化を望んでいる国民意識にこたえるというための改正だけになってしまうんではないかというふうに思うんですね。
 そもそも、先ほどあったように、こういった犯罪が起こらないように抑止し、防止し、そして再犯を防ぐような、そういったものにつながっていくこと、そういう理念がしっかりと入っていなかったら駄目だと思うんですね。そういう意味で、今回の法改正によってどのような効果というものを見通しされているのか。

○副大臣(河野太郎君) 検察官は捜査を経た上で公訴を提起するか否かの判断を行うことになっておりますが、現行法上、窃盗罪あるいは公務執行妨害罪というのは懲役又は禁錮しか認められておりません。一、二回の万引きの前歴があった方が、数百円、数千円のものをもう一度万引きをした場合、こういう場合にどうするのか。あるいは、公務執行妨害ではありますが、若干酔っ払っていたとか、あるいは早く帰りたいのに職務質問が長かったといって公務執行妨害罪を構成するような事案を形成した場合に、今はもう懲役又は禁錮しかないわけでございますから、検察官の方も公訴を提起するかどうか非常にちゅうちょをする、起訴猶予になってしまう件数が多いわけでございます。
 そういうことになりますと、万引きをしても起訴されない、見逃してもらった、じゃ、いいではないかということになってしまうと、抑止力が働かなくなります。今回のように罰金刑を導入することになれば、検察官も罰金刑ということで公訴を提起することができるわけでございますから、今までのように自由刑かあるいは起訴猶予かということではなくて、その間の罰金刑を科せられるということであるならばしっかりと公訴を提起をする。そういうことによって、例えば窃盗罪であっても、軽い窃盗罪であってもしっかり罰せられるということは、やはり犯罪を抑止するという効果はあるというふうに考えております。

○松岡徹君 先ほどもありましたけれども、窃盗の場合、要するに起訴するか否かの判断に困難を伴うという理由があるように、現場のところでは、様々な窃盗事案のところでは、起訴猶予あるいは不起訴にするというような事案がたくさんあるというふうに思うんですね。
 その件数はどれぐらいかというのをいったってなかなかつかみにくいというふうに思うんですが、そのときにこの選択制の罰金刑を導入すると、当然今まで起訴猶予あるいは不起訴にしてきたものが罰金刑として成立していくということが、確かに一方で抑止にという部分もありますけれども、私たちは再犯防止というのをいいますと、例えば自立更生を促していくとか、それこそ現場の検察官の人たちは、窃盗事案に出くわしたときにこれは起訴をするべきかしないかという判断するときに、やっぱりその人の状況をずっと見極めて、いやむしろ不起訴に、起訴しない方がいいだろうという判断は、その人が自立していく、あるいは再犯はしないだろうと、こういう判断が働いていると思うんですね。
 今回、それがこの選択刑を導入することによってどういう形で機能していくのかというのが非常に不明なんです。私は、そういう意味では、今までのものが、そういった理念といいますか考え方が今回の法改正でなくなっていくんではないかというおそれを感じます。それぞれの犯罪の事案は様々いろいろな状況がありますので、その辺を是非とも考えていく必要があるんではないかと思います。
 その中で、特に私は再犯防止ということを考えますと、お聞かせ願いたいんですが、例えば資格制限というのが各法律のところによってありますね。例えば交通事案でも免許停止あるいは免許取消しという様々な資格のやつがあります。それ以外で、再犯をさせないというのは、正に自立させていく、更生させていくということへ導いていくことが大事なんですね。その資格制限というものが具体的にこれまでのところで、身体刑のみであったためにこのままいけば資格制限がきつくなるということで、この事案の場合ちょっと一ランク下ろしてとか、そういう資格制限に配慮をするというような判断はこれまであったのかなかったのか、お聞かせ願います。

○国務大臣(杉浦正健君) これは、個々の事件に対応する検察官等が事案に、それぞれ即して判断しているかと思うんですが、一般論として言うと、それはないと思います、そういう配慮は。これをやったら、刑罰は刑罰ということでやっておられると私は承知しております。
 最近、私のところへ個別恩赦が随分来るんです、大臣決裁で。一番多いのは復権ですね。医師の国家試験受かったけれども、あれ罰金刑を受けていると医師になれないんですね。それで恩赦してほしいという。結構あるんです。若いものですから、まあ反則切符で済まなくて罰金になったという人たちですね。これは、そういう人たちは個別恩赦の道が開かれておりまして、医師の場合、医師試験通って医師になる障害になるということですと大体個別恩赦が認めているように感じます。これは刑事政策上取られるべき配慮であって、そういう道もございます。復権、恩赦等々ございますので、それはそれとして有効に機能しておると思うんです。
 ですから、刑罰は刑罰として、もちろんその刑罰を科された者が果たした後に円滑に社会復帰できるよう配慮することも刑事政策上当然のことで、その道は開かれておると思いますので、私は、ここで罰金の範囲を拡大したということによってそういう方々の社会復帰の道がふさがれるということはないと思います。例えば医師になるにしても、故意犯に近い飲酒運転なんかで懲役刑を受けたというような人はなれませんからなかなか恩赦も厳しくなる。これは当然であって、もちろん医師として社会復帰するということも大切なことではありますが、それは個別恩赦の手続上で、中央更生審査会ですか、そちらの方で検討された上で出されればよいと思っております。

○松岡徹君 今大臣おっしゃったように、故意犯とかそういうのは当然だと思うんですよ。だけど、まあ要するに、今までのところで起訴するか否かの判断に困るとか、あるいは実際、今大臣おっしゃったように、資格制限にかかわるところにまで行くか行かないかというところでいろんな担当の検察官の人たちの判断が働いてきたことは事実だと思うんですね。そういう意味では、私は何も故意犯だとか、まあまあ犯罪もたくさんありますから、すべての罪は罪としてしっかりと裁くべきだとはいうふうに思いますが、自立更生、すなわち再犯防止という、あるいは抑止していくとかそういった観点の中に、自立更生ができるような環境づくりに阻害のないようにそういった判断ができるのかどうかという、それは是非とも検討していく課題だというふうに思うんですね。それを明記するかどうかは別にしまして、そういう課題をしっかりと検討をしていただきたいと思うんです。
 それと、この法改正による効果のところでもう一つ、今まで、この法改正によってどうなるのかということでありますが、刑務所が過剰収容の状況になっています。もし、今の刑務所の収容、全体の収容者の中でこの改正、法改正の対象に当たる人たちはどれぐらいになるのかということを事前に聞きましたら、例えば平成十二年でしたら、新規も入れまして、平成十二年で一万三千三百七人というふうに聞いています。平成十六年で新規収容者が九千五百九十五人で、継続も入れますと一万七千七百十九人というふうに聞いているんです。
 例えばこれが、すべてとは言いませんが、選択刑を導入すると過剰収容が解消されていくというふうに思われるんですが、いかがですか、効果としては。

○国務大臣(杉浦正健君) 今回の改正におきましては、比較的軽い類型の公務執行妨害罪及び窃盗罪等につきまして、罰金刑の新設によって相応の処罰を可能にするものでございますけれども、その一方で、これまで個別の事案において検察官が、あるいは裁判官が自由刑相当としていた判断に影響を与えるものではないと基本的に考えております。不起訴にしていたところで罰金で警告するというものだと思っておりますので、したがって、今回の改正が刑務所に収容される人員数には直ちに直接影響することはないんじゃないかと思っております。
 しかし、一方で、今回の改正によって一定の犯罪の再発や常習化の防止等の効果、まあ規範意識に影響を与えますから抑止力になるということもございますが、その結果として、犯罪の再発や常習化の防止等の効果が上がるということが期待されますので、その結果として刑務所収容人員が減少するということは期待できるのではないかというふうに思っております。

○松岡徹君 規範意識とか抑止の力が働いて、結果的には過剰収容の解消の一助になるんではないかとおっしゃっていましたけども、決してそれだけではなくて、今まで、実情を見れば、こういう罰金刑がなかったんですから身体刑として収容されているという事実もあるわけですから、当然のようにそこにも、結果として、何もそれをもくろんで今回の法改正をやったわけではないというのは重々分かっておりますので、そういう結果になるというのは別に悪くはないというふうに私も思っています。
 そこで、罰金刑を導入した場合、先ほど、上限額とかそれぞれありますけども、引上げとか新設があります。その額の妥当性なんですね。五十万が妥当なのかどうか、百万に引き上げることが妥当なのかどうかということについても、我々自身は大きな問題はないというふうに思うんですが、その辺はちょっと、そういうふうに思いますが、問題は、罰金を払えない者が増えるんではないかというふうな気がするんですが、その辺はどういうふうに見込まれています。

○国務大臣(杉浦正健君) ちょっと最後のところが……

○松岡徹君 要するに、罰金刑を新設する、あるいは上限額を引き上げる、そうすると罰金を払えない者が増えるんではないかというふうに思うんですが、どう思われますか。

○国務大臣(杉浦正健君) そういうケースも額を上げますと出てくると思います。今までも相当ございまして、何でしたら当局に報告させますが、労役場留置ということで、裁判所の言渡しに従って留置されている者は結構おります。

○松岡徹君 ちょっと時間の関係で早く言ってしまいましたけれども、要するに、罰金刑をやると要するに払えない者が増えてくる。その払えない理由も様々あると思うんですね、怠慢とかわざと払わないとか逃げ得をしようとか、様々あると思います。しかし、実際に経済的事由で払えない人たちもおることも事実であります。この額を一体だれが決めるのかというのは、当然そういう問題ありますし、その額の言渡しをするときの根拠は当然のようにそれぞれいろいろあると思うんですが、私は、この罰金刑をやると増えてくる、そうすると労役場留置の措置が増えてくるんではないかというふうに思います。
 労役場留置の現状を事前にお聞きしました。この間、平成七年からのデータでありますけれども、平成七年の一年間で労役場留置の措置を受けている人が二千六人、平成八年で千九百六十八人、ずっと行きますと、平成十六年で七千三百五十五人とずっと増えていっているんですね。なぜこんなに増えているのかというのが気になります。
 その上で、今回の罰金刑を、選択刑を導入すると増えるという憶測というのは当然出てくると思うんですね。当然、労役場留置ということになってくるんではないかと思うんですが、労役場留置の場合、現状をちょっと私もいろいろ聞きましたけれども、これは非常に古い制度なんですが、罰金刑というのは、労役場留置に入る場合は、元々罰金刑の代替の制度なんですね。私たちは、お金がない、わざと払わないというのは別に、経済的に非常に苦しいという場合、お金のある人は金払って労役を免れると、お金のない人はそれで労役場、すなわち自由を奪われて労役場留置になると。これは、非常に不平等といいますか不自然だというふうに思うんですね。
 払えないのは確かに問題です。そういう意味では、そのことについて大臣はどうお考えになるのか。私は財産刑の代替としての制度そのものの在り方というものを検討すべきではないかというふうに思うんですが、併せてちょっと大臣、考え方をお聞かせ願いたいと思いますが。

○国務大臣(杉浦正健君) 私も、今度、窃盗罪に罰金刑導入することによって労役場留置が増えるんじゃないかということを心配しております。
 これは、窃盗罪というのは、最近はお金持ちの人が万引きするケースもあるようですが、貧しい時代は生活に困って貧しい人たちが盗むということだったんですね。ですから、罰金といっても納められないと、おおむね。そういうことを前提にして自由刑だけにしたという事情が立法時にはあるようでございますが、最近は事情が変わってまいりました。ですから、お金にゆとりのある人が罰金刑を受けた場合には払えるでしょうが、しかし、生活に困って窃盗する人もおりますので、そういう人たちは納められない。したがって、労役場留置になるというケースは、推測ですけれども増えるんじゃないかというふうに思っております。
 その辺りは個々のケースに応じて裁判官が判断をして罰金刑の金額にしても言い渡すことになる余地は十分あると思いますが、先生がおっしゃられた罰金刑の在り方について、根本的に、例えば延納、分納の申立てを権利として認めたらどうかとか、そんなことをおっしゃる方もあるわけですが、本来は罰金刑は裁判に従って直ちに一括して払うべきものとして決められておるものでありますが、そういう考え方はちょっといかがかと思いますし、現行法の下でも、現実には検察官が、裁量と申しますか、当面これだけしかございませんといって一部を受け取って、後は持っていらっしゃいと、持ってこれなければ労役場留置ですよということで実質上分納を認めておる実情がございますから、法律上どう手当てするかと、実益に乏しいということも言えるわけでございます。
 労役場留置そのものを納められない場合に認めないとすれば、罰金を納めない人を未納部分についてどうするかという問題が生じます。納める人が、正直者がばかを見るというようなことがあってはなりませんし、この労役場留置の制度は、罰金という制度がある以上、これは除くわけにいかない制度だというふうに思います。長い間、明治以来続いている制度でございます。

○松岡徹君 ちょっと質問の仕方がややこしかったと思いますが、今あったように現状はやっぱり社会の変化があったと。この立法趣旨からすれば、大体窃盗をする、人のものを盗むという犯罪は、大体盗む人は、犯罪を犯す人はお金を持っていない人が多いと。そこに罰金というのは、大体ない者に罰金したって無理だろうというふうな趣旨がある。これは、要するに監獄法のときからですので、もう明治の時代からの趣旨なんですが。
 ただ、今の社会情勢の変化もありまして、金の、財力の差によって自由を奪われるか奪われないかということについては、やっぱりこれは不平等という議論が当然あったと思うんですね。私もそう思います。
 今回の選択刑を導入するということは、当然のように、大臣もおっしゃったように、労役場留置の措置者が増えるんではないかというおそれもあります。それが本当に罪を犯した者に対する罰としての効果を期待できるのかどうか。やっぱり、今日的にこの制度そのものも、労役場留置という制度そのものも検討する必要があるんではないかと思うんですね。
 もう時間もありませんから細かなことは聞きませんが、例えば罰金刑になったときに、労役場留置になったときに一日換算何ぼというふうに決めるんですね、裁判長が。一体、その差も一日大体五千円から一万円というぐらいの差があるというふうに聞いています。なぜこんなに差があるのか、どんな根拠でやるのかというのが全く見えないんですね。
 そして、この制度の中に、労役場留置の制度の中には、労役場というのはどこにあるのかといえば、刑務所と留置場に付設するということになっています。刑務所とはしっかりと分けることと言っています。過剰収容の現状の中では今どうなっているんだというふうに聞けば、やはり刑務所の中の一部を労役場として認めて、そこでやってもらっていると。
 そこで、労役の内容は何かといえば、結局、被収容者と同じ、懲役者と同じことはできませんから別にすると。別にするというと、労役留置を受けている人はどんな労役の場所でやっているんだといったら、独居房で一人でやっていると。その日の一日の日当換算、それこそ一日が五千円から一万円の差がありますから、非常にこの労役場の労役、要するにお金を払えない者はやっぱりどういうふうにその罪を償っていくのか。例えば先ほど言ったように、分納とか延納とかいう方法はないのかどうかということもやっぱり考えていく必要があると思うんですね。
 あるいは、労役場の施設も刑務所に付設するではなくて、別途、労役場というものをしっかりと新設していくというふうなことも含めてその制度の在り方は検討できないのかというふうに思うんですが、大臣いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 様々な御意見はおありのところと思います。
 労役場は、刑務所や拘置所に附属して設置されているところでございます。現実には、懲役、禁錮受刑者や未決拘禁者と収容する房や作業場所についても区分しております。
 御指摘のように、全く別の場所に設置することについては、今後の全国的あるいは地域的な労役場留置件数の動向もございますが、全国で発生いたしますので、津々浦々にこの点についてのコストの問題あるいは国民一般の皆さんの理解など、様々な観点から慎重に検討しなきゃいけないと思います。
 で、刑法においては、その労役場留置については罰金等の言渡しをするときにはその言渡しとともに労役場留置の期間を定めて言い渡さなければならない、これ刑法十八条四項ですが、その期間の決定を裁判官にゆだねております。これを立法論としてもう少しきちっとするとかいう議論はあり得ると思いますが、それで、現実には労役場留置の期間については一日当たりの換算額で定めるという実務が定着いたしております。最高裁の判例によりますと、その換算額は裁判官が自由裁量をもって定めることとされておりますことから、現実にはこの判例に沿って個々の事案ごとに裁判官が判断しているものと認識をいたしております。
 ただ、これが適切かどうかと、金額が大きくなると労役場留置が長くなるじゃないかと、懲役、禁錮と変わらなくなるじゃないかというような御議論はあり得ると思います。罰金額の言渡しについては、これは最終的には裁判所がお決めになることなんですが、そういう個々の事情を十分勘案されて、最終的に個々の事案に応じてお決めになるところだと思いますが、立法者のお立場で様々な議論はあり得ると思います。あり得ると思います。事態の推移、改正後、労役場留置の人数、中身の推移を踏まえて様々な角度から将来検討されるべき問題だと、私としては思っております。

○松岡徹君 それで、やっぱり今大臣もおっしゃったように、なかなか今の現状に労役場留置という状況がだんだん合わなくなってきているんではないかというふうに思うんですね。先ほど言いました幾つかの点はその根拠になると思うんですが、大体罰金刑を受けている者がお金を払えないために労役留置という措置、現状としては場所は刑務所でいきますよね。結局、懲役みたいな感じ、印象ですよ、印象を受けるんですね。懲役の人たちと同じような印象になってしまうということで、やっぱりこれは印象も余り良くない。だからこそ、この際、区分するというふうに言っていますけれども、もっとはっきりとそういった印象が持たれないような状況をどうつくっていくのかということも大事になってくるんではないかと思うんですね。
 それと、労役場留置というのは正に、もう一つ、諸外国でもいろいろ検討されていますけれども、社会奉仕命令というのがあります。これはいきなりできるかどうかまあありますが、そういう意味では刑務所で労役場留置という措置ではなくて、社会奉仕命令という形でそういうことは検討できないのかどうか、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(杉浦正健君) その前に、労役場留置ですけれども、本日現在、数聞きましたら、全国で八百人、約八百人だそうです。ですから、四十七都道府県で八百人ですから、現時点では非常に数は少ないと申しますか、言えると思うんですね。ですから、そういう現実に労役場留置された人の数の動向というのを、これは中身を踏まえなきゃいかぬというふうに思うことを申し添えます。
 それから、社会奉仕命令というのは、犯罪者に対しまして一定の期間、無報酬の奉仕作業を命ずる制度であると承知しております。諸外国においていろんなところでいろんな制度があります。我が国は採用しておりませんが、あることは承知いたしております。それぞれの国において、それぞれの国の社会、文化的な事情等を背景にして各国独自の制度を導入しておるというふうに聞いております。
 我が国では、保護観察対象者に対する処遇の一環として社会奉仕活動を取り入れている例もございますが、まだこれは全体としてやっておるわけではございません。これは裁判所の保護観察処分の内容として社会奉仕をさせるということでやっておるわけでございます。
 いずれにしましても、社会奉仕命令制度を導入を検討するに当たっては、我が国において行われている活動の効果や運用面での課題等のほか、諸外国における制度の実際、運用状況等々について調査分析を行うことが必要だと思っております。一つの考え方でございますが、これは法体系、刑事法体系で一つの新しい分野に相なると思いますので、多角的な検討が必要だというふうに思っております。大臣のPTでも検討しようかと、裁判所の判決で刑務所へ入れるんではなくて社会奉仕を命令すると、まあ軽い罪になるでしょうね、それは検討はしたいと思っておりますが、まあいろいろな面から検討する必要があると思っております。
 労役場留置は、これは刑罰であります。罰金も刑罰です。ですから、将来、その社会奉仕命令という制度が日本において立ち上がっていくというような将来考えた場合に、そこでこの労役場留置とどうリンクさせるかというのは一つの課題、課題というか問題にはなると私は思います。

○松岡徹君 私も大事な課題だと思うんですね。法改正とか、先ほど冒頭から申し上げたように、提案理由の中にもあったように、起訴するか否かの判断に困るとか、あるいは単に犯罪が増えているからこういう法整備をするのではなくて、犯罪の抑止やあるいは再発防止につながるという趣旨を生かしていくとすれば、是非とも重要な検討課題だと思うんですね。
 ちなみに、先ほど大臣おっしゃったように、この労役場留置の収容人員は、私は一年間の延べ人数であって、今おる人は今大臣おっしゃったように八百何人です。しかし、年間今、平成十六年で七千人を超える人たちが延べとしておるんですね。元々この労役場留置というのは期間が短いですから、ですからこういうサイクルはありますが、しかしその労役場留置に、措置になる人たちの中身もたくさんあると思います。非常に軽微な罪等によってなった場合に、そういう社会奉仕命令とか、そういった点を是非とも積極的に考えて検討していく必要があるんではないか。それこそ、この今回の法改正に伴って、一つの制度でありました労役場留置というこの制度そのものを、そういう観点からも制度的に見直していく必要があるんではないかというふうに思っておりますので、そのことを要望いたしまして、終わりたいと思います。

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