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2006年5月 9日 (火) 更新

[発言録] 入管法改定案についての質疑

2006年5月9日(火)
参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
 問題があるなら、できる限り改正する前に訂正した方がいいだろうという立場で質問もしていきたいというふうに思っております。
 今回の入管法改正の提案理由でございますが、改めて確認をさせていただきたいと思いますが、外国人の入国時における指紋提供義務というふうになっておりますが、その目的でございます。改めて大臣の方から手短にお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(杉浦正健君) 今回の法改正によりまして導入される上陸審査時の個人識別情報の提供義務は、先ほど詳しく御説明いたしました政府が決定いたしましたテロの未然防止に関する行動計画を踏まえましたテロの未然防止対策といたしまして、出入国の公正な管理を図り、ひいては国民の生命と安全を守ることを主たる目的とするものでございますが、同時に、政府として取り組んでおります不法滞在者対策及び外国人犯罪対策に資するものでもございます。

○松岡徹君 テロの水際で防止するということと、不法滞在といいますか、これはさきの衆議院の法務委員会での政府答弁でもあります、不法入国者対策に資するというふうにおっしゃっています。その不法入国者対策に資するというのは、具体にどんなことになるんですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 不法入国者を水際で防止するという趣旨でございますが、先ほども御説明しましたとおり、平成十七年度中に退去強制手続を受けた外国人五万七千百人余りのうち、その一三%に当たります七千四百七十人余が過去に退去強制手続を受けた者であることが明らかになっております。
 先ほど御説明しましたように、これらの者の中には、前に退去強制された当時の身分事項のままでは上陸を拒否されると考えまして、身分事項を偽った偽変造旅券ですとか、他人に成り済ましてその名義により不正に発給を受けた旅券を使用して不法入国した者も相当数含まれておるところでございます。
 今回の改正法が施行されまして、指紋や顔の個人識別情報を使用した入国審査を行うこととなりますと、仮に身分事項を変えた旅券を行使して不法に入国を図ったといたしても、その入国が確実に阻止されることとなりますほかに、我が国で厳格な入国審査が行われているとの情報が伝わることによりまして、不正な方法による入国自体をあきらめることも期待されると考えているところでございます。

○松岡徹君 退去強制された者が改めて入ってくると、そういった者をチェックできるとか、不法入国というその不法入国者の対象者が退去強制者でもあったり、あるいは犯罪者といいますか、そういったことにもなってくると思うんですが、指紋を取ってそれを水際で確認できれば一番ええわけですね。
 例えば、聞きますけれども、例えばけがとか病気とか、あるいは先天性の欠損がある方の場合、これ指紋が取れない場合はどうされるんですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 御指摘のような理由で指紋情報を提供していただくことが物理的に不可能である方もいらっしゃると思いますが、そのような場合におきましては、指紋提供の義務があるといたしましても、これを求めることなく上陸審査手続を進めることは法的に可能と解されるところでございますので、物理的に不能との解釈に際しましては人道上のできる限りの配慮を行ってまいりたいというふうに思っております。

○松岡徹君 人道上可能な限りの配慮というのをもうちょっと突っ込んで聞きたいわけですけれども、時間の関係でちょっと次回のところに回したいと思いますが。
 要するに、今聞いたように今回の改正目的はテロの未然防止と不法入国者の対策に資するということなんですね。そういう意味では、それが今回の法改正の目的であるし、指紋を採取するということはそれが利用目的であるということに間違いないですね。

○国務大臣(杉浦正健君) そのとおりでございます。

○松岡徹君 そうすると、先ほど谷川先生の質疑の中にもありましたけれども、利用目的を特定する必要があるのではないかというふうにも思うんですね。
 個人情報保護法の三条一項のところで、「行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。」ということになります。
 そういう意味では、先ほどもありましたけれども、同時にその利用目的の特定というものをしようと考えておられるのかどうか、いかがですか。

○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 今回の法改正によって個人識別情報の提供をいただくその利用目的でございますが、これは二種類あると思っておりますけれども、上陸審査の際に指紋と顔情報の提供を受けるという点につきまして、これは公正な出入国管理の実施のために必要とされるという形での利用目的になるわけでございます。
 一方、自動化ゲートを可能にする規定も一部今回の改正法案には盛り込んでおりますが、これにつきましては、これは日本を出国、入国をする方々、特定の方々の利便、利用上の利便を図るという目的で、同一人性の確認をするためだけに指紋、顔情報の提供をしていただくということでありますので、これはまた違った観点ですね。本人の利便、利用者の利便というものが利用目的ということになろうかと思います。
 これにつきまして、明確な形で法律では利用目的は何だということで書いてあるわけではございませんが、この規定の趣旨からその点は明らかで、特定されていると考えております。

○松岡徹君 要するに、この指紋の情報は、その利用目的は出入国のときの本人確認ということになるんですね。それ以外は使ってはならないということはどこにも書いてないんですよ。だから、そういう意味では、その利用目的の特定を、出入国の際の利用目的として特定すべきではないかというふうに思うんですね。
 個人情報保護法の四条一項でも、「行政機関は、本人から直接書面に記録された当該本人の個人情報を取得するときは、次に掲げる場合を除き、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。」というふうにも規定されているんですね。
 この個人情報保護法の理念からいうと、やはり採取する本人に対して、これを、採取された指紋情報はこういうふうに使いますから採取義務に応じてくださいということを説明せにゃいかぬ。そのことから考えると、何のために使うのかということを明示することが必要だと思うんです。そのことは明示されていないんです。明示するつもりあるんですか。いかがですか。

○政府参考人(三浦正晴君) お答え申し上げます。
 先ほどお答え申し上げましたように、本法案の規定からして特定はされているというふうに考えておりますが、ただ、実際に空港、港を利用されるのは外国人、日本人含めた多くの方々でございますので、当然、特に外国人の方からは指紋の提供をいただくわけでありますので、この法律が成立いたしますと施行までに時間が若干ございますわけですので、その間に外国政府、ですから外国の国民について、きちんと広報をして御理解を求めていくつもりでございます。

○松岡徹君 そういうことは、施行まで一年半あるからそれをその間に各国に説明したいと、理解を求めるためにと。説明するためにも、これ以外には使いませんということを、ちゃんと特定目的をはっきりしなかったら駄目でしょうが。それを聞いているんです。明示するつもりあるんですか、特定するつもりはあるんですかということを聞いている。イエスかノーかで答えてください。

○政府参考人(三浦正晴君) 委員、先ほど行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律をお示しになって御質問あったわけでございますが、同法の四条に「利用目的の明示」という規定が確かにございます。この規定を見てみますと、第四号に、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められるとき。」というのが、まあ例外規定のような形になっておりまして、次に掲げる場合を除き、あらかじめ本人にその利用目的を明示しなければならないという規定がありまして、その例外として、先ほど申し上げましたように、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められるとき。」と、こういうふうになっております。
 ただ、私どもといたしましては、そうであるから本人に説明をしないということを申し上げておるわけではなくて、非常に広範囲の方が利用をされる制度になりますので、これはこうこうで、はっきりと認識をしていただくように努めてまいる所存であります。

○松岡徹君 ちょっと質問に答えてくださいよ。個人情報の例外規定もありますよ、確かに。しかし、今回は入管法の改正で、非常に大事な生体情報なんですから。そうでしょう。しかも、だから私はこの今回の法改正の目的は何なんですかということを確かめたんですよ。そうでしょう。そういう意味では、それをはっきりするべきということをこの今回の法案の中に、改正案の中にちゃんとあるんですか。それを聞いているんです。イエスかノーかですよ。明示するつもりはあるんですか、ないんですか、それだけ聞いているんです。

○政府参考人(三浦正晴君) 今回の改正法案の提案理由の中にもございますし、大臣の方からも御説明あったと思いますけれども、一つはテロ対策ということでございます。テロリストの発見をするために指紋、顔情報を提供していただいて、これをブラックリストと照合するというために設ける制度であります。もう一つは不法滞在者対策でございます。
 ですから、条文に明確にそういうことが確かに書いてあるわけではございませんが、趣旨はそういうことでございますということを申し上げております。

○松岡徹君 私は条文に書くべきだということを言っているんですよ。恣意的な解釈がされるというのは危険になってしまうということは、先ほどの谷川先生の議論にもありましたがな。だからこそ、こういうふうに使うんですということを、ちゃんと目的を特定すべきだと、利用目的を特定していくということは何のそごもないでしょう、テロ対策なんですから。そうでしょう。不法入国者の水際の防止なんですから。なぜそのために使うということを、なぜ明示しないんですか。
 これ、例えば、先ほどもありましたけども、要するに不法入国者対策に資するということになっておるんです。まあ結果的にはそうなるんですよ。これがだんだんこういうふうに資すると、結果的にこうなるということで、拡大解釈されていくおそれがあるということを私たちは指摘しているんですよ。
 そのことを改めてまた、時間余り取りたくないんですが、やっぱり指紋という生体情報ですから、我が国は二〇〇〇年に実は外登法による指紋押捺制度を廃止をいたしましたですね。その外登法における指紋押捺制度の廃止の趣旨とは一体何やったのか、改めて大臣にお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(杉浦正健君) 指紋の押捺制度でございますが、外国人登録制度発足後間もなく、二重登録等の不正を防止するなど登録の正確を期するために、同一人性確認の手段として指紋押捺制度が設けられたものでございましたが、様々な御議論があった、反対もございました。そういう経過を経て、指紋に代わり確実に同一人性を確認できる手段について検討を行った結果、写真、署名及び一定の家族事項の登録を複合的に組み合わせるという代替方法によりまして同一人性を確認することとして廃止されたものと承知しております。

○松岡徹君 経過はそうだと思いますね。平成七年の十二月に最高裁の判例が出ておるんですね。それまでに地方裁判所で様々、この指紋押捺制度については反対だと、やめてほしいという声を背景に様々訴訟が繰り返されてきました。そして、平成七年の十二月に最高裁の判例が出ました。
 その中で、指紋は指先の紋様であり、それ自体では個人の私生活や人格、思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上、万人不同性、終生不変性を持つので、採取された指紋の利用方法次第では、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性があり、そして指紋の押捺制度は国民の私生活上の自由と密接な関連を持つ、まあそういうふうに結んでいる。
 これは憲法十三条に抵触するんではないかということについてもいろいろと議論されています。個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押捺を強要されない自由を有するものというべきである。国家機関が正当な理由もなく指紋の押捺を強制することは、同条の趣旨に反して許されず、また、右の自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される、こういった議論もされているんです。
 そういった議論を背景に、在日外国人の外登法制度の指紋押捺制度は、その人が本人であるかというのを確かめるのは違う方法を用いようということで指紋押捺制度をやめたんです。正に、指紋を押捺、何人にも押捺を強要されない、強制されない自由とかそういったものがあるんです。そういう議論をされてきて、二〇〇〇年に外登法による指紋押捺制度は廃止されていったんですね。
 今回、それからすると、幾らテロの未然防止だということを言っても、外登法のこの指紋押捺制度を廃止していったこの議論、趣旨、これは当然相入れないと思うんですけども、いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 先生が御指摘になられました最高裁判例、詳細御説明願いましたが、そういう裁判例があることは承知しております。そういったその最高裁判例にかんがみまして、指紋情報の提供の義務化については人権上の観点から慎重な検討を要する性質のものだということはよく承知いたしております。
 一方、最高裁の判例におきましては、同じ判例で、右の自由も、国家権力の行使に対して無制限に保護されるものではなく、公共の福祉のために必要がある場合には相当の制限を受けることは憲法十三条に定められるところであるとも判示しております。他の判例もございます。
 今回の入管法改正は、出入国の公正な管理を図ること、ひいては国民の生命と安全を守るためのテロの未然防止策を主たる目的といたしておりますし、不法滞在者対策及び外国人犯罪対策に資するものとして、外国人の上陸審査時に指紋等の個人識別情報の提供を義務付けるものでございます。その立法目的には十分な合理性があり、また必要性も肯定することができるものだと考えております。
 また、その義務付けも、我が国に上陸するためには指紋を提供しなければならないことをあらかじめ承知の上で自らの意思で来日される外国人が、それにもかかわらず提供されなかった場合に我が国への上陸を認めないというものにすぎません。さらに、電磁的方法による提供方法も一般的に許容される限度を超えない相当なものであると考えております。
 なお、外国人登録上の指紋押捺制度は、外国人登録制度発足後間もなく、二重登録等の不正を防止するなど登録の正確を期するため、同一人性確認の手段として設けられたものでございましたが、種々の御議論があったことから、先ほど御説明しましたとおり、指紋に代わって確実に同一人性を確認できる手段について検討を行った結果、写真、署名及び一定の家族事項の登録等を複合的に組み合わせるという代替方法によって同一人性を確認することとして廃止したものでございます。
 これに対し、今回の改正案における個人識別情報の提供は、テロの未然防止等という水際対策を立法目的とするものであること、指にインクを付けて押すというスタンプ方式ではなく、電磁的に指紋を読み取るという方式による提供であることにおきまして、かつての外国人登録法に基づく指紋押捺制度とは全く異なっており、外国人登録法上の指紋押捺制度を廃止した経緯があるといたしましても、さきに述べたような合理性、必要性を有する今回の指紋提供義務の導入が人権への配慮を欠くものとなるとは考えておりません。
○松岡徹君 長々とおっしゃってもらいましたけども、私は、指紋押捺制度を廃止していった趣旨というのは私は正しいと思うんですよ。今大臣もおっしゃったように、外国人の人権に配慮するという趣旨から、プライバシーの侵害、人権への配慮をして押捺制度を廃止していったという経過があります。先ほどあった最高裁の判例の中で、相当の理由がある場合、その条件で制約されるというのも確かにそのとおりです。
   〔委員長退席、理事谷川秀善君着席〕
 だからこそ、例えば、先ほど冒頭言いましたように、一方で、指紋を採取するということは、指紋を採取強制されないという自由とか、そのこと自身が、指紋自身が不変性があって個体の固有のものでありますから、正にプライバシーというものを配慮しなくてはならないということになるんです。だからこそ、これはどういうふうに利用されるのかという利用目的を特定しなかったら、相当に害するというのが単にテロの水際防止だけだということ、だれもがテロというのは反対しませんが、本当に指紋を採取義務をすることですべてのテロを防止できるのかと、もうこんなことになってくるんですね。
 そういう意味では、その効果だけではなくて、指紋を取るという生体情報を提供を義務付けるということ自身相当な理由があるという相当なところに、やはり人権やプライバシーというものを配慮したやり方としては、利用目的を特定していくとか、それ以外には利用しないとか、相手にちゃんと利用の目的を明示するとか、そういうことをしなかったら、これは人権、プライバシーに配慮したということにはならないんではないですか。今回の入管法改正案はその辺でプライバシーや人権の配慮に欠けているというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 先生の御意見は御意見として承りますが、私どもはそうは考えておりません。
 外登法の指紋押捺制度は、私の記憶では、あれ、墨にべったりやってやると。あれに対する拒否感応といいますか、国際的にも相当あったというふうに記憶しております。今度のは電磁的でして、指を乗せるだけと、それを電磁的に記録するということでございますので、そういう拒否反応、国際的な人権感覚からしてそんなに拒否反応があるとは思いません。
 利用目的も、先ほど来よく御説明しておりますように、テロの未然防止という水際対策を行うために適正な入国管理に利用するというふうにはっきり特定しているものと私どもは考えておるところでございます。

○松岡徹君 指紋をインクでこうやるとか、それが屈辱的だとかいうことではないんです。指紋という生体情報を第三者に取られるということです。そのことを言っているんです。すなわち、指紋という生体情報をどういうふうに我々は人権やプライバシーという視点で位置付けているのかということなんです。行為ではないんです。
 私も若いころ、交通違反をやったら切符を切られたときにぎゅうっとやられるの、あれ嫌でした、確かに。後でふかなあかんのね。そんなのが嫌とかいうんではなしに、その生体情報というものをどういうふうに位置付けているか。それが国際的には個人の情報であって、しかもそれは不変性であって特定できるわけですから、そういう意味ではプライバシーや人権というものが指紋の生体情報、生体情報としての指紋という位置付けがそういうふうにやっぱりなっていると思うんですね。その辺からやっぱりしっかりと見なくてはならない。
 だからこそ、最高裁判例の、大臣は、相当の理由がある限りはその自由は制約されるというのは分かりますけれども、その前に、憲法十三条の指紋を強制されない自由であるとか、あるいは採取された指紋がどういうふうに利用されるかによって危険が伴うということも指摘されているわけですから、だからこそ私は、人権やプライバシーを配慮した上で、なおかつ指紋採取を義務付けることにする場合は、やっぱりその指紋はこういう方法でしか使いません、こういう方法で使いますからというふうに事前に本人に明示していくというようなことは最低限やるべきだというふうに思うんですね。これが正に、少なくとも百歩譲った人権に配慮した今回の提供義務の改正だというふうに思うんですよ。インクでなくて電子だという問題じゃないと。
 大臣、もう一度いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 御懸念の向きは、一つにはこの個人情報、ちょうだいした個人情報を厳正に管理すると、利用目的に利用する以外には利用しないと、厳正に管理するということによって御信頼をいただけることになるんじゃないかと思います、一面においては。
 一方においては、先ほど入管局長が申しましたように、法が成立した後、施行までに一年半近い歳月ございますから、関係各国いろいろな機関を通じてよく周知徹底いたしまして、その趣旨を御理解いただくように努めるということが大事ではなかろうかというふうに思っております。

○松岡徹君 やっぱり私はそういう立場で、今回の法改正案についてはやっぱり足らずがたくさんあるというふうに思うんですね。そういう指摘をさしていただいておきたいと思いますが。
 もう一つ、次の質問をしたいと思いますが、今回の改正案の中、特別永住者等については除外をしているんですね。その除外理由というものと、それと私たちは、特別永住者について除外しているならば永住者とか定住外国人がその除外対象にならない理由は何なのか、お聞かせいただけますか。

○国務大臣(杉浦正健君) 詳細は必要ならば入管局長から説明させますが、個人識別情報の提供義務につきましては、危険性の程度が低いこと、配慮の必要性の程度が高いことの二つを基準といたしまして、一定の外国人について免除することとしているわけでございます。
 特別永住者につきましては、その歴史的経緯及び我が国における定住性にかんがみまして、その法的地位の一層の安定化を図るため入管特例法が制定されておるのは御案内のとおりでございまして、配慮の必要性が極めて高いことから、当該義務を免除することとした次第でございます。それに対して永住者につきましては、特別永住者の場合のような歴史的経緯がございませんし入管特例法の適用もないことから、個人識別情報提供義務を免除する対象としなかったものでございます。
 なお、残念なことでございますが、永住者等に成り済ました外国人が不法入国する事案が頻繁に発生しているところでございます。
   〔理事谷川秀善君退席、委員長着席〕
 我が国には永住者の方が三十万人以上在留しており、成り済ます対象者を見付けることが比較的容易であることなどを考えますと、テロリストや犯罪者が永住者の旅券を盗んだり偽造したりして当該旅券の名義人に成り済まして本邦に不法入国することを防止する必要性もあると考えているところでございます。

○松岡徹君 そのよく違いが分からないんですね。特例法がありますから、特別永住者についての除外規定はそれを適用していると思うんですが、永住者とか定住外国人、先ほど大臣がおっしゃったように永住者の成り済まし、まあ確かにあるかもしれませんが、極端に言うたら、外国人だけではなしに日本人がパスポートを偽造して海外へ出る場合もあるわけですね。そういう意味では、それが理由というのですべての説明をしてしまうというのは私はおかしいと思うんですね。
 ですから、この違いは何なのか。これでいったら、永住者とか定住外国人は要するに危険性の対象として見てしまうということになります。かつて指紋押捺制度を廃止するときの廃止してほしいという外国人の思いは、まるで犯罪者のような扱いにされているようだというふうになるんですね。そういうようなことがあるんです。やっぱりその辺を考えると、この定住者がなぜ対象外にならないのか、この辺も根拠が非常に不鮮明な今回の法改正であるということを、改正案であるということを指摘しておきたいというふうに思っております。
 次に、生体情報として指紋を採取するわけですけれども、いろいろと技術が発達していきますが、私は指紋は必ずしも一〇〇%ではないというふうに思っています。指紋自身がテロリストのあるいは本人確認の一〇〇%ということではないということは科学的にも言われています。そのうちの何%かは、やはりそれで本人確認をするということは漏れる場合がある、あるいは間違う場合があるということも言われているんですね。しかし、顔写真よりも確率性は高いということは事実であろうというふうに思いますが、個人の識別情報について、今回は指紋というふうに言われていますけれども、識別するための生体情報というのは今後どんなことを考えておられるんですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 生体情報認証技術は日進月歩であると承知しておりますが、それに応じて今後検討していくことになると思いますけれども、現時点では指紋及び顔写真以外は想定いたしておりません。

○松岡徹君 想定していないということでありますけれども、いろいろと法務省の方からも資料をいただきましたけれども、要するに、やっぱり指紋以外の生体情報を開発研究するとかというふうなこと、極端に言えばDNAまで行くんではないかというふうなね、まあDNAで出入国のときにどうやって本人確認するのかといったら非常に難しい話ですけれども、極端に言ったら、例えば静脈、手のひらの静脈というものの採取の仕方とか、いろいろ検討されているようです。
 私は、そのことが法務省令で定めていくということになっているんですね、今回の法改正で。やっぱりこれはね、今大臣おっしゃったように、やっぱり生体情報でありますから、しかもプライバシーや人権の問題にかかわってくる問題でありますから、そういう意味では、それを法務省令で定めるんではなくてやはり法令でしっかりと定義付けるべきだと、定めるべきだというふうに思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 国民の権利義務に関するような規定を設けることは法律の専属的所管事項でございますが、これは一般的に行われていることですが、ある法律の中で一定事項についてその内容の決定を省令等に委任することは可能でございます。改正入管法で規定する法務省令は、このような法律の委任に基づく省令でございます。
 先生の御趣旨は、今回の法律で指紋と写真を個人識別情報の例示として規定した上で、将来生体情報認証技術が進展した場合に、同一性の確認とか要注意人物との照合という目的を達成するために最も適切な個人識別情報を省令で定めることができるように法律に委任規定を置いておるわけでございますが、それはまずいと、法律本体に書けということでございましょうが、技術の進歩や状況の変化に迅速かつ的確に対応する上で必要ではなかろうかと思っておるところでございます。例示として指紋及び写真を規定した上で委任しているものでありますから、適切であるというふうに考えております。

○松岡徹君 全然適切じゃないと思うんですよ。最初の議論をずっとやってきたら、指紋というものをどういうふうにとらえるか、すなわち生体情報、生体情報というのは、公共性とかやむにやまれぬ政府利益によって是非とも提供してほしいというのはやっぱり特定目的をするということは大事ですけれども、同時に、人権やプライバシーの問題としていうならば、個人の尊厳の侵害性の問題であるとか、あるいは私事性、すなわちこの個人の生体情報はその個人のものであるということなんですね。それを公共の利益のため、公共性のためにやむにやまれぬという部分があるんです。
 そういう意味では、何が優先されるかといったら、個人の情報なんですよ。それは個人のものなんです。だから、それを法務省令で勝手に、これまでは指紋やったけれども、今度は新しい技術ができたから今度は静脈でしましょうとか、まるで人間を物かのように扱うということはやっぱりこれは余り良くないというふうに思うんですよ。だから、せめて、これはこういうふうな意味で必要なんだと、だから義務として協力してほしい、だからこういうふうにしか使いませんということをちゃんと明示すれば、公共性という意味で皆さんは協力してくれる人もおるかもしれません。
 しかし、一方で、この生体情報自身が持つ人権あるいはプライバシー性を考えると、同時にそのことも配慮するということになるわけですから、やっぱりそれを省令でぽこぽこぽこぽこ変えられるようではなくて、やっぱり立法府である議会でしっかりと議論をして法律で定めていくということが我々の責任だというふうに思うんですけれども、大臣いかがですか。

○国務大臣(杉浦正健君) 現時点で外国人に提供を義務付ける個人識別情報といたしましては、指紋及び写真の二つしか想定しておりません。仮に将来その他の個人識別情報の提供の義務付けをしようとする場合にも、諸制度の制定に当たってはパブリックコメントの手続を取りますし、その他所要の手続を行って意見を広く聴取した上で、提出された意見を十分踏まえて省令で定めることとなっておりますので、恣意的に決定するということではないと存じます。

○松岡徹君 私たちは、立法府の所属している、国民に負託された代表者として、こんな無責任な決め方は私はできないというふうに申し上げておきたい。やはり法律でしっかりと決めるべきだというふうに申し上げておきたいと思います。
 時間の関係ありますので、次の質問に、全部いけるかどうか分かりませんが、最後に、実はこの改正で、衆議院でも議論になりましたが、出入国管理システムの刷新に係る調査分析業務とか、あるいは出入国管理業務、こういったものが例えば電子化されると、年間七百万人を超える外国人が日本に入国します。そのうちの短期滞在者というのは約五百万人ですね。毎年、大体そういうだけの量を入管局は保管し、データベースとして保管していかなあかんと。
 私は、先ほど、冒頭申し上げたように、この入管のこの法改正の趣旨は、出入国時における本人確認と、テロかあるいは不法入国者の防止のためだということからすれば、その不法入国者の対象者というのは一体だれなのか。すなわち強制退去をされた人たち三十万人とか、あるいはブラックリストに載っている何万人とか。
 テロの定義というのはまた後ほどに譲るとしまして、そうすると、七百万人のうちのもう圧倒的に多くの人たちは全く関係ないんですね。その時点で終わる、出国した段階でその役割は終えるんです。そうすると、その時点で少なくともその人たちの指紋の情報は、生体情報は消去すべきだというふうに思うんです。ところが、衆議院の法務委員会で河野副大臣は、そうではなくて八十年間ぐらい保有する必要があるとおっしゃっています。私は、そういう今までの議論の趣旨からすれば、その目的は達したんだから出国の時点で当然のように私は生体情報は消去すべきだと。
 ましてや、アメリカが唯一、アメリカに入国する外国人に対してすべて指紋を取っています。その制度をやるときに、日本政府はアメリカに対して、日本人が指紋を取られても出国するときには消去してほしいというふうにアメリカに申し入れているんです。日本はアメリカに対しては、出国するときに自分のところの国の国民の指紋データは消去してほしいと申し入れておきながら、今度日本でこんな制度をつくろうとしたときに八十年間も保有するというのはどういうことですか。

○副大臣(河野太郎君) 衆議院の法務委員会で何度も外務省から答弁ございましたように、日本政府がアメリカ政府に対して指紋の消去を申し入れたということはございません。
 日本でも、現実に、フランス国籍だったと思いますが、アルカイダの関係者である人間が国内に出入国を繰り返していたということが事後になって分かったということがございます。具体的にはフランス国籍のリオネル・デュモンという人物が偽造旅券で我が国に出入国を繰り返し、四年以上前にさかのぼってその出入国の事実を確認する必要が生じたというケースがございます。出国に際して指紋の消去をしてしまうと、そうしたことの確認に問題が生じることにもなりかねません。
 また、強制退去の処分を受けた人間、一度出国をして、その名前あるいはその旅券では再入国を認められないわけでございますから、当然そうした人間が日本に身分を偽って次に入ってくる可能性は大でございます。現実に、先ほど申しましたとおり、退去強制処分を受けた人間の八人に一人はリピーターでございまして、これは本来、入管局が水際で止めなければならなかったわけでございますが、パスポートが別な国のものであったりという理由で入れてしまった、そういうケースがございます。
 そういうことを考えますと、一度入ってきた人間の指紋をきちんと保管をして、別なパスポート、別な身分を偽って入ってきたときに、その人間が過去退去強制処分を受けているかどうかの確認をやはり指紋でやらざるを得ないというのが現実でございます。現に、不法入国をしてきた外国人が、たしか総数の二、三%だと思いますが、そうした人間が日本で殺人その他重大な犯罪を起こしていることを考えると、やはりしっかり水際で止める体制というのをつくり上げるというのは大変大切なことだというふうに認識をしております。
 そうしたことを考えますと、出国した際にすべての指紋を消去してしまえば、次に別なパスポートで入ってこようとしたときにそれを止めるすべはないわけでございます。ですから、一度出国した人間の指紋であっても所要の期間それを保持することは非常に大切なことだと思っております。
 十六歳以上の人間から指紋の提供を受けるわけでございますから、人間の平均寿命ということを考えれば、理論的に七、八十年以上その指紋を保有する必要はないわけであります。どこまでの期間その指紋を保有をするかということはシステムをスタートさせてからしっかり議論をして決めてまいりたいというふうに考えております。

○松岡徹君 その理屈は私はちょっとおかしいなと思うんですね。要するに、強制退去者というものは当然のように情報として保管しているわけでしょう。その分だけを保管すればいいんですよ。それ以外に、それに掛からなかった人たちは出国した時点で消しゃいいんですよ。その人たちの分までなぜ八十年間も保管せなあかぬのかというのがちょっと理屈に合わないんですね。
 これはそういう方法を取り入れた場合の話でありますが、まあ時間もありませんので申し上げたいと思いますが、実はこういうシステムをやる場合、一体どれぐらいのお金が掛かるのかということが大変気になっています。しかし、それを算出するデータが全然出ていませんので、やっぱりこれはしっかりと議論しなくてはならないと思います。
 衆議院でも議論しましたけども、このシステム化するための委託業者にアクセンチュアという会社が幾つかのこれに関連する調査あるいは検討の業務を委託しています。昨年の段階では、このアクセンチュアはわずか十万円で、次世代の出入国審査プロトタイプシステムの実証実験・試行運用の運営というのを十万円で入札しているんですね。そういう意味では、このアクセンチュアという株式会社はどこの会社なのかということを申し上げておきたいというふうに思います。
 これ、実はアメリカでも大変な問題になっている業者でございまして、これはバミューダに本社を置いているところであります。バミューダというのはタックスヘーブン、すなわち法人税の掛からないところなんです。アメリカでも、アメリカの議会でも、アメリカがこういう指紋の入国管理システムを導入して、US—VISITですね、それを請け負ったのがこのアクセンチュアなんです。このアクセンチュアがそれで十年間で一兆円の仕事を請け負ったというふうに言われています。このアクセンチュアが実は日本のこのシステムについての検討、運用についての検討を調査する仕事を十万円で請け負ったり、調査事業を五千八百万とかで請け負ったりしています。
 私は、ここでアメリカの連邦議会の予算委員会でも議論がありまして、このアクセンチュアというのは、要するにバミューダに本拠を置いてアメリカに子会社をつくっていますけれども、アメリカへの納税額は二〇〇二年から二〇〇三年にかけて三億八千二百万ドルから一億四千三百万ドルに減少しているのに対して、アメリカからの売上げは二千四百七十三億ドルから五千六百六十九億ドルに増加しているとか、そういったことが問題なんですよ。最後には、こういった国土安全保障にかかわる問題をこういった外国会社に委託するのはおかしいんではないかということがアメリカの連邦議会の予算委員会等でも議論になっているんですね。
 私がもう一つ心配するのは、そういう意味では、私たちのこの入国のテロ防止とか不法入国者の水際の対策をするということは、正に日本の国土の安全、国民の命を守り、安全を確保するためと、こういった事業をこのような企業に委託するということはどうなのかということがありますが、まだ今本体事業は委託しているわけではありません。十万円で入札したということは、それの何か道筋を付けられたかのような気はするんですが、決してそうではないと思いますが。
 こういったことと同時に、この会社は、アクセンチュアがアメリカのUS—VISIT、同じやつですね、これについても請け負っています。十年間で一兆円というふうに言われています。これが、実はここにそのアクセンチュアに法務省が委託した出入国管理システム刷新可能性調査報告書というのがアクセンチュアの方から出てきている資料があります。このときに、わずか十万円でこのアクセンチュアがこの事業を入札したときに、本当に十万円でできるのかといえば、実は法務省はそのときにこういうふうに答えているんですね。
 契約業者は、海外機関での生体情報認証技術を利用したシステムの設計、開発、プロジェクト管理を行った際の成果及びノウハウを活用する、すなわち海外機関での生体情報認証技術、これを持っている海外の国はどこやといったらアメリカなんですね、アメリカしかないんです、アメリカしかやっていないからです。すなわち、US—VISITですよ。その技術のノウハウを持っているからそれを活用する。すなわち、アメリカのUS—VISITと同じようなやり方でこの報告書が上がっている。こういうことを、しかもその額は、それからいうと、アメリカでは十年間で一兆円、日本がこういったことからすると、一体このシステム化した場合、どれだけのお金が掛かるのかという資料が全く我々には届いていません。
 時間の関係でもう質疑は次に譲りたいと思いますが、それと同時にあわせて、法務省には法務省の情報化統括責任者、これは各省におるそうでありますから、CIOというのがあります。そこが次々とCIO決定という文書を出していっています。最近の新しいのでは今年の三月三十一日、「出入国管理業務の業務・システム最適化計画」というのが法務省情報化統括責任者、CIO決定というふうな文書、すごい文書が出ています。
 我々自身が、このシステム自身、先ほども申し上げたように指紋、生体情報の取得の仕方が本当に指紋だけなのか、あるいは静脈まで考えているんではないのかとか、その管理したものが出入国だけに使われるのか、そうではなくて在留外国人の管理のために使われるんではないかと、あるいは犯罪捜査のために活用されるんではないかと、あるいはアクセンチュアのようにアメリカのUS—VISITのシステムと統合されてアメリカにも情報が流れるんではないか、海外への情報の提供の在り方とかいうことも非常に心配するんです。このCIO決定の文書を見たら、そういうことも将来的には可能性をにおわすことが書かれています。本当にそういうところまで道を開くようなことになるということになるならば、もっとしっかりと議論をしなくてはならないと思うんですね。
 そういう意味では、私は、この今回の法改正についてはもっと慎重な議論と、もう一つ最後に申し上げておきますが、衆議院の我が党の方でそういった資料要求をしたときに、わずか三ページぐらいのペーパーしか来なくて、そして採決された後に、その後に法務省のホームページでこういう資料がばっとアップされていっているということがあります。そういう意味では、事前のこの入管法改正の議論をするための基礎資料といいますか、検討するべき資料が全部整っていないということからして慎重な資料要求を改めてさせていただきたい、委員長の方で取り計らいをお願いを申し上げたいと思います。

○委員長(弘友和夫君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をしたいと思います。

○松岡徹君 もう私の時間を過ぎてしまいましたので、一応これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

*この議事録は、参議院ホームページの会議録から松岡徹の質疑部分を抜粋したものです。(参照:全体の議事録

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