2006年5月11日(木)
参議院法務委員会
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
三人の参考人の皆さん、大変本日はありがとうございます。
今、荒井先生おっしゃったように、大変多岐にわたっているんで、私は幾つかに絞って質問させていただきたいと思うんですが、今の加藤参考人の話の中にありましたように、テロの定義というのが非常に定義しにくいといいますか、これは当然この法案を、改正法案を議論するときも当然議論になります。しかし、抑止していくといいますか、そういった効果があるだろうというふうにはおっしゃっていました。
改めて加藤参考人に簡単にお聞きしたいんですが、今回の法改正、すなわち入国時に指紋等の生体情報によってテロリストをどこまで未然に防ぐことができるのか。私は効果としては、加藤参考人がおっしゃったように、抑止をしていく効果が一つあるだろうというふうにおっしゃっていましたけれども、元々テロ対策というのはこういう入国時で解決すべき問題ではないと思うんですね。総合的な先ほどおっしゃったように施策の中で、入国時はどういうふうな対応をするべきかというふうなものでなければならないというように思うんですね。そういうことからすると、今回の法改正でどのような具体的にテロ対策につながっていくかということをもう一度お聞かせいただきたいと思うんですが。
○参考人(加藤朗君) 最初に申し上げましたように、私のこの現代社会のとらえ方といいますのがある種コンピューターに似ているんだろうというふうに思っております。
そこで、入国管理というのは、コンピューターのシステムでいいますと、いわゆるファイアウオールという、ウイルスやバグが入らないように関所のような役割をするという。でも、ファイアウオールがあるからといってすべてが解決するわけではもちろんございません。いったん侵入されてしまえばそれを、ウイルスやバグをとにかく取り除くというシステムはもちろん必要なわけでありまして、そういう意味で総合的な対策が必要であることはもう言うまでもありません。
その意味では、警察なり公安あるいは自衛隊、関係各官庁が協力してテロ対策に当たることはもう言うまでもないことではありますが、ただ、その一番最初の段階での入国管理というところで、一番ある意味では情報が取りやすいところでの管理の強化というのは、管理といいますか、余り管理とか監視とかという言葉は私は余り使いたくはないんですけれども、情報を収集する必要はあろうかと思います。
ただし、だからといってこれが効果的にどれほど抑止できるかということについては全く分かりません。これまでのテロとその対策の繰り返しを見ておりますと、ある意味でのイタチごっこであります。予防する側は物すごい負担を強いられてきます。ところが、テロ側は全くそれほどの負担を被らないままに、講じないままにあっという間にある種のセキュリティーホールといいますか、をかいくぐっていきますので、恐らくこの辺りで十分だろうというふうに思っていたことも何年か先にはこれは全く不十分であったという時代が恐らく早晩来るだろうというふうに思います。
○松岡徹君 私もその辺の危険性を感じているわけでありまして、テロリストという、テロというものの定義がない段階で入国のときに阻止するという理念で法改正をするということに余りにも不十分な改正だと今私自身は感じるんですが、水際で情報を取るためにということでやれば、今回は指紋で、次は更なる生体情報を取っていこうというふうにエスカレートしてくる。そのことが本当に全体のテロ対策の中で果たす役割の中でどれだけの重要な位置を占めるのかということの検証がされていないままにやられるという危険性を私は感じております。
そこで、今回のところで、一方で犯罪、まあ不法入国も含めてあるんですが、この指紋の場合、当然、プライバシーという問題がありました。それで、新保参考人もおっしゃっておりましたように、プライバシーそのものに対する国民の意識がどう変わっていくべきなのかというとらえ方なんですけれども、確かに混同しているところがあるかもしれませんが、私は、今回のやつで、指紋を取るか取らないかではなくて、入国のときには、その人が、入国する人がその本人であるかどうかということを確かめることが主たる目的なんですね。その本人であるかどうかを証明する方法として指紋というふうに出ています。そういう意味では、先ほど新保参考人の中にありましたように、公共の福祉のためにとする場合、その個人の固有の情報である指紋、生体情報を提供するという義務も、義務というか、プライバシー権をある程度制約するということになります。
しかし、そのときに当然配慮されるべきという考え方が出てきますね。それがすなわちプライバシー、PIA、すなわち影響評価とかにかかわってくるというふうに思うんですが、公共の福祉のためといいながら、そうする場合、当然配慮すべき条件とはどういうことを考えられるのかということを新保参考人、それから難波参考人にちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(新保史生君) このような指紋等の生体認証情報の特徴といたしましては、万人不同性と呼ばれますけれども、みんな違う情報であるということ、それから終生不変性ということで、生涯変わらないということが大きな特徴でありますので、その利用方法次第では非常に著しく、その人の一生にかかわるほど私生活あるいはプライバシーが侵害されるというおそれがあるわけであります。
この点につきましては、やはりどのような目的、公共の福祉の範囲内といいましても、それが正当な理由かどうかということがやはり大きな問題となりますので、その理由、正当な理由というものについては、やはりどのような利用目的かと。その利用目的については、それを利用することによって得られる効果とそれに伴う権利の制約と、この両者のバランスを考えたときにどの程度の効果があるのかと。それによって得られる効果と果たしてそれによって侵害される個人の権利というもの、これがどの程度の関係なのかというこのバランスを考えた上で検討するということ。
並びに、個人情報の取扱いの観点からいたしますと、これを利用するということについて必然的に様々な形で提供を行うことが必要となってくるわけでありますけれども、この提供につきましては、提供の範囲をどこまでの範囲に設定をするかと。国内ではどのような範囲で利用するか、国外に対してはどの範囲で提供するかといったようなこの提供の範囲というものが非常に重要であると。
それから最後に、やはり安全管理の面であります。安全管理につきましては、こういった終生変わらない情報が不正又は利用されるということは、これは漏えいをするということが最も顕著なリスクでありますけれども、この点については、安全管理を行うということは結果的に個人のプライバシーを保護するという、技術的には保護するということになりますので、このような観点から非常に検討事項が多いというふうに考えられます。
○参考人(難波満君) 先ほど申しましたとおり、プライバシーの制約については目的の必要性、これはもちろんです。ただ、それだけではなくて、その目的を達成する手段としてそれが相当かどうか、言い換えますと、できる限りその目的を達成する方法として権利を制約する割合が少ないものがないかどうかということを吟味することが必要だと考えております。
この点について私は二点を述べたいと思うんですが、まず一点目として、まず入国時のチェックなんですけれども、現在、指紋と顔写真というふうに言われております。今言われたその他水際の防止といいますと、実は現在採用されているのはIC旅券、日本に三月に導入されましたけれども、これが各国でも導入されようとしている背景があって、そういう旅券の偽変造対策というものをチェックしようとしております。そういった観点からしても、生体情報としては果たして指紋まで取る必要があるのかとか、顔情報を取って、それを旅券等とチェックする、IC旅券が導入された場合にはその偽変造を十分にチェックしていくということによって目的を一定以上達成できるんじゃないかということがあると思います。
二点目としては、プライバシーについては、やっぱり各国における社会通念ないしはその歴史的経緯ということを十分に考える必要があると思います。この点、日本においては、先ほど申しました外国人登録法の廃止の経緯とかいったものにかんがみると、やはりいまだ指紋を公権力が一般的に採取することについては、それに対する社会的な反発が強いように思っております。
私は、このように考えております。
○松岡徹君 公共の福祉ということでどうしても指紋を提供義務を義務付けるとするならば、当然のようにその利用目的というものをはっきりしなくてはならない。そして、その利用の、先ほど言いましたように、それが効果としてどういうふうなものがあるのか、それに伴うリスクをどういうふうに整備していくのか、リスクをなくしていく、あるいはフォローするための整備をする、そういう意味ではその辺なんだと思うんですが、先ほど新保参考人が言いました、アメリカの方法をそのまま今現在追従するのは危険だとおっしゃっていました。
その辺について、それと海外への提供という提供の範囲ですね。すなわち、それがどういうふうに利用されるのか。すなわち、それが今回の非常に最も問題になるところでありまして、個人の生体情報が本人チェックとして、その条件としてされることがいいのかどうかという問題になってきます。
そういう意味で、アメリカへの方法をそのまま追従するのは危険だという点と、そして海外へこういった私たち国民のあるいは個人の生体情報を本人が全く分からないところで流用される、提供されていくということについてどういうふうに考えられているのか。
○参考人(新保史生君) まず前者の問題でありますけれども、この点につきましては、公共の利益とプライバシーの権利の保障という観点から、米国における昨今の状況は、もう公共の利益を優先すると。その利益というのは、国民の生命、身体、財産の保護という公共の利益を優先するということから、結果的に、かなりの相当部分において個人のプライバシー、また通信の秘密の保障といったようなものも含めて、それが制約を受けてもこれはやむを得ないということが社会的に認められているということに基づいて、かなりの部分でプライバシーの侵害が発生していると。これは公権力によるプライバシーの侵害、憲法上のプライバシーの権利の侵害がなされているというのは、これは事実であります。ですから、このように、国民の生命、身体、財産の保護という名の下に、あらゆる場面でプライバシーの権利を侵害してもいいというような風潮、ある意味これは風潮でありますけれども、これはそのまま我が国においてこれを追従するということは非常に危険であるというふうに考えております。
また、海外、国外への個人情報の提供につきましては、これは例えばEUと比較いたしますと、EUは個人データ保護指令という指令を制定しております。この指令に基づきまして、EU域外の国に対して個人データを提供するに当たっては、その相手方の国の個人情報の保護制度、そのレベルが十分なレベルに達しているかどうかということが条件となっております。
我が国におきましてはそのような基準は全くございませんので、相手方の国においてどのようにその個人情報が利用されるのかということを考慮する、又はそれを提供に当たっての条件とするような法律はございません。ですから、この点については、我が国を経由して、また例えば我が国から提供される個人情報、それからまたひいては我が国をいわゆる経由して出ていく情報も同じでありますので、この点については今後はやはり検討が必要であるというふうに考えております。
○松岡徹君 最後に、難波参考人に聞きたいんですが、おっしゃっていましたように、例えば今回の法改正で、テロリストあるいは不法入国者というふうに法務大臣の認定を含めてやった場合、強制送還という手だて、ところが本人の不服申立てとかいう手続がないというのをおっしゃっていましたが、どういうふうなルールが必要だというふうにお考えですか。
○参考人(難波満君) まず、この法制度の中では法務大臣の認定という、関係機関からの意見の聴取という、ただそれだけが定められております。しかしながら、その中身につきまして、つまりどういう、例えばその認定の根拠とかその事実についてどこまで示すべきなのか、そういったことについてはあくまで運用等に、実務にゆだねるんだという非常にあいまいな、言わば行政へのフリーハンドを与えているというふうな問題点があります。
二点目としては、更に法務大臣の認定に当たって使われる証拠等についても、先ほど申し上げたように、その信用性とか、それが果たして適正なものかについて、例えばイギリスを含めた各国におかれても議論がされてないままに導入されるという意味で、法務大臣の認定が非常に恣意的というか、広範なものになる危険が払拭されてないという意味で非常に大きな問題があるというふうに考えております。
○松岡徹君 それじゃ、終わります。
*この質疑録は、参議院ホームページから松岡徹の質疑部分を抜粋したものです。参考人質疑の全体の議事録はこちらを参照ください。