松岡とおる公式ウェブサイト

とことん人権。ひとを大切にする政治

松岡とおるは、この国の人権の法制度確立をめざしています。
前の記事 | トップページ | 次の記事
2007年4月24日 (火) 更新

[発言録] 刑法の一部改正案に対する質疑

2007年4月17日
参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。関谷大先輩の後、非常にやりにくいんですが、質問させていただきたいと思います。刑法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 関谷先輩が、大臣の質問、時間切れで聞けなかったので、私は冒頭に大臣の考え方を聞きたいと思うんですが、民主党といたしましても昨年、最近の交通事故の状況、それに対する国民の意識等々含めまして、やはりバランスが悪いと、そごが生じているんではないかということもございまして、民主党としても昨年、今回の刑法の一部を改正する法律案の同趣旨の法律案を提出をさせていただきました。したがって、基本的には私たちもこの法律案については、その思いというのは同じでございます。そういう意味で、それらの、今回の法律案が本当にその効果をもたらすように、そういう視点で質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 それで、冒頭、今回の法改正について、大臣の方の提案理由の中に、一つは、量刑とか法定刑が国民の規範意識に合致しない、またあるいは、重大な結果が生じた事案等について、事案の実態に即した適正な科刑を実現することを可能とする必要があると、このような提案説明がございますが、国民の規範意識あるいは適正な科刑を実現するということとはどういうことなのか、改めて大臣の認識をまず冒頭お伺いしたいというふうに思います。

○国務大臣(長勢甚遠君) 昨今、交通事故が大変重大な結果を生んでおる事例もたくさん出ておりまして、特に被害者の方々を始め国民の皆さんから、今の制度あるいは科刑の状況でいいのかという御批判といいますか御要望が極めて多数出ておるわけでございます。

 私どもの方にも、十八年中には全国交通事故遺族の会などから十何万という要望書が、署名が来ておりますし、また十九年二月二十二日には、川口、園児四人がひき殺されるという大変痛ましい事故でございましたが、遺族などからより厳罰化をすべきだという要望書が参っておるわけでございます。また、法制審議会においても関係団体のヒアリングにおいて御意見がたくさん出され、また昨年十一月に内閣府政府広報室で交通安全に関する特別世論調査を行いましたが、飲酒運転などについては罰則、行政処分を強化すべきという意見が七割を超えるという状況でございました。

 今、現行の制度また裁判の状況は先ほど刑事局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、自動車、走る凶器とまで言われているわけで、いったん何とかということになれば大変な重大な結果をもたらすわけでございまして、これに対する国民の規範意識を強化をするためにも今回の改正を是非御理解をいただきたいものだと思っております。

○松岡徹君 大臣の今の認識についても、私たち、私自身も異論はございませんが、もう一歩深めていただきたいという思いで改めて質問をさせていただきたいと思うんですが、この国民の規範意識がここまで高まってくるというのはどういう背景なのかということをやっぱり見なくてはならぬだろうというふうに思うんです。

 すなわち、義務を果たさず重大な結果、事故を起こしてしまった、それに対する責任は余りにも軽過ぎるという国民の規範意識はあると思うんですね。それによって被る被害者の思いというものもしっかりと思いをはせなくてはならないというふうに思いますし、同時に、そういったことを求める国民の規範意識のもとは、こういった事故がなぜ予防できなかったのかということもあろうかと思うんですね。そういう意味では、事故を起こした、すなわち運転免許を与えられて、当然のように注意義務、あるいは今大臣がおっしゃったように車というのは一つ間違えば凶器でありますから、だからこそ注意義務というものが課せられるわけでありまして、その注意義務を果たさない、そしてその結果起こした事故というのは、当然のようにその結果に対する責任を負うことは当たり前のことであります。

 その結果に対して、余りにも、今の刑法の処罰の内容からすれば、被害者の状況、被害者の人たちの思いからすれば、あるいは他の刑法の処罰の内容から見ても、現在の処罰規定では余りにもバランスが悪いということだと思うんですが、そういう意味では私は、被害者の方が思うことの中に、まずそういったことによって事故を起こした責任をどういうふうに科刑をしていくのかということについては今回提案されていますけれども、もう一つ思いをはせるならば、被害者の思いとすれば、その事故を被って生活が破壊されるという場合がありますね。例えば、自分の父親があるいは自分の愛する人が事故によって失われる、人生が狂うんです。そのときそのときの生活が変わります。そこの家庭の子供たちの環境も変わっていきます。正に単なる自分の身内、愛する人を亡くすだけではなくて、これからの生活を破壊されてしまうというこの思いをどう酌み取るのかということなんですね。だからこそ、被害者をどう救済するかという視点が同時になければならないというふうに思いますし、そして国民の規範意識の中には、だれもがこういった事故に遭いたいと思っておるわけではありません。

 そういう意味では、故意犯か過失なのかということの判断もあろうかと思いますが、そういう意味ではなぜこういったことが予防できなかったのか。そういう走る凶器、しかしその凶器というべき自動車、車の社会というのは私たちの社会にとって必要なものであります。そういう意味では我々は、国民の意識とすれば、今回の刑法改正で重大な事故を起こした加害者に対して重罰を科す、それで直接の被害者でもない加害者でもない国民がほっとするというのは、またそれだけでは足らないと私は思うんですね。

 逆に言えば、私たちは、そういった意識が客観的に見れば加害者になっているんではないか。すなわち、交通状況というものを私たちの社会の、私たち自身も社会の一員でありますから、そういう危険なものを社会がこれからも必要とするならば、当然のようにそれを安全になし得るようなシステムあるいは交通環境というものを整えなくてはならないと思うんですね。そういった声にも私たちは声を上げなかったら、重罰化さえすればいいんだというふうな国民意識は、私はこれから最も必要とするモラルを高めていく点でもやっぱり大事な視点だと思うんですね。そういう意味では、我々自身も加害者にならないためにもその三つの視点をやっぱり認識として受け止めるべきだというふうに思うんですが、改めて大臣、いかがですか。

○国務大臣(長勢甚遠君) 当然、厳罰化をすれば事足れりという問題ではないと思います。

 自動車は、何か事故を起こそうと思って走っている人は普通いないわけですが、いつでも起こり得る可能性があるわけですから不断に注意力を持ってないかぬと、このことをやっぱり喚起する意味でこの今回の改正は意義があると思いますが、同時に、走る人たちが安心して走れるような環境整備というもの、また社会の在り方というものもきちんとやっていかないと、厳罰化だけでみんな注意したからだけというわけにもいかない場合もあり得るわけですから、社会を守る上でそういう施策を更に強化していくことが非常に重要だと思いますし、また被害に遭われた方々に対しても今被害者救済のための政策を強化しつつございますけれども、そういうことも含めて、全体としてのこういう重大な事故に対する社会の救済方法というものを考えていかなきゃいけないというふうに思っております。

○松岡徹君 ありがとうございます。

 今回の法改正は、私は質問をずっと事前に考えていく中で、やっぱりその視点を決して忘れてはならないなと。そうでないとこの今回の刑法改正は生きたものにならないだろうというふうな思いで大臣の見解を冒頭に聞かしていただきました。

 被害者の心情をどういうふうに私たちは、国民はあるいは国は受け止めるのか。被害を受けた人たちは、正に二次被害としての生活破壊があるわけでありますし、やっぱり国民の意識の規範意識の根本となるのは、こういった事故が起きないような、二度と起きないようなどういう環境をつくるのかということもしっかりと我々は受け止めなくてはならないだろうと。そういう意味で考え方を聞かしていただきまして、是非ともそういう視点でこれからもお願いを申し上げたいと思いますが。

 それで、今回の法改正で、平成十三年に危険運転致死傷罪が創設をされました。先ほどの関谷先生の質問もございましたが。そして、今回の改正で自動車運転過失致死傷罪というのが新設をされました。この違いといいますか、いうのをまず御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(小津博司君) 危険運転致死傷罪でございますけれども、これは故意に危険な自動車の運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を暴行によって人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものでありまして、そういう意味では、暴行の結果的加重犯であります傷害罪、傷害致死罪に類似した犯罪類型でございます。

 危険運転致死傷罪に掲げられております危険運転行為、これはアルコールの影響によって正常な運転が困難な状態での走行等々、幾つかを類型化して掲げているわけでございますけれども、これは悪質、危険な自動車の運転行為のうち、重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、暴行の結果的加重犯である傷害、傷害致死に準じた重い法定刑によって処罰すべきものと認められるものに限定しているわけでございます。

 他方、自動車運転過失致死傷罪でございますけれども、これは人の生命、身体の安全を保護法益といたしまして、自動車の運転上必要な注意を怠り人を死傷させた者を処罰しようとするものでございまして、過失致死傷罪の加重類型となる過失犯でございます。これまでそのような事犯は業務上過失致死傷罪により処罰されてきたわけでございますが、一般にこれがこの新しい自動車運転による自動車運転過失致死傷罪に当たることになると考えているところでございます。

○松岡徹君 危険運転致死傷罪というのは故意犯だというふうになるんですね。

 先ほどもありますが、民主党も今回の法改正で注目しているのは、昨今聞かれるのは、この危険運転致死傷罪が新設されてから、いわゆるひき逃げといいますかね、いうものが増えているんではないかというふうに思うんです。要するに、故意犯ですから、それを危険運転致死傷罪の構成要件であるアルコール、薬物、スピードとか、そういった構成要件を立証していくといいますか、そういうことがあります。

 薬物とかスピードというのは後の現場調べれば分かると思うんですが、アルコールによる危険運転致死傷罪を適用しようとすれば、それを立証するためにその現場で確保しなくてはならないんですね。ところが、それから逃れるためにその現場から逃げてしまうと。要するに、翌日だれかに付き添われて自首するとか、そういうことがあったんではないのか。これは極めてもう悪質だというふうに思うんですね。

 こういった適用、平成十三年からありましたけれども、危険運転致死傷罪の適用件数と例えばこの間のひき逃げの実態、このひき逃げはすべて飲酒によるものかどうかは分かりませんが、それももし分かればちょっと教えてほしいと思うんですが、数字を教えてください。

○政府参考人(小津博司君) まず、危険運転致死傷罪の件数につきましては、平成十四年以降の推移がございまして、また平成十八年に少し上がったと申しました。その十八年で申しますと、検察庁が警察から送致を受けた人員は二百四十二人であったわけでございますけれども、危険運転致死傷罪で公判請求したのが三百七十六人と、このように数字が違うということ、先ほども御説明申し上げましたわけでございます。

 これは正に、警察の方から業務上過失致死傷罪で送致された事件でございましても、危険運転致死傷罪に該当しないかということでいろいろと警察と一緒に捜査を尽くしているわけでございます。現場から逃げた者につきましては、確かにその時点での血中アルコール濃度等々を厳密に測ることはできないわけでございますが、危険運転致死傷罪の要件は、呼気あるいは血中のアルコール濃度がどれだけという数値で決めてあるわけではございません。そこで、本人が出てきてと申しますか、検挙した後で、そのときの飲酒の状況、飲酒の量などをいろいろと捜査をして、その結果としてそのような要件が立証されて公判請求に至ったというようなこともあるわけでございます。

 なお、ひき逃げの発生件数につきましては、警察でお調べになっている数字が手元にございますが、平成十八年は一万八千件を超えているという数字があることは今手元の数字で承知しております。

○松岡徹君 この危険運転致死傷罪が平成十三年に創設されて、適用されるという件数が余りにも少な過ぎるんではないかという、そういう批判もあるんです。なぜ適用されないのか。その構成要件とそれを立証するための方法なんですね。先ほど関谷先生のときにもありましたが、例えば平成十八年でいうと、送致時、危険運転致死傷罪として送致したのは二百四十二件だが、公判請求したのは三百七十六件ということなんです。この差というのはなぜ生まれるんですか、簡単にちょっと。

○政府参考人(小津博司君) これは、警察の方が犯人を検挙いたしまして、往々にして、まあ身柄が拘束されるといいますか、逮捕されて検察庁に送ってくるということも多いわけでございますので、その限られた時間の中で警察の方は業務上過失致死傷という要件は立証できたということで検察庁に送ってくると。

 さて、そこで検察庁の方は、それは業務上過失致死傷は成立するかもしれないけれども、更にもっと捜査を尽くせば危険運転致死傷罪の要件が立証できる、実態はそうではないかという観点からもっと捜査をしようではないかということで、鋭意捜査を警察と一緒になって引き続き行って、例えば飲酒の状況についてもその後十分に立証することができたということで、起訴をするときには危険運転致死傷罪で起訴をするということも何件かはあるということで、委員、今も御指摘のございました数字の違いというものが出てきているということでございます。

○松岡徹君 要するに、どこでその危険運転致死傷罪を適用するのかというのは、まず現場でやると。先ほど言ったように飲酒の状況によっても違うと。どれぐらい飲んでいたら危険運転致死傷罪に当たるのか当たらないのかというのはその状況によって違うと。必ずしも飲酒だからといって危険運転致死傷罪を適用するかどうかは分からないと。

 要するに、二百四十二件のとき、その後に三百七十六件ですか、公判請求したという十八年の事例がありますけれども、この差というのは、例えばその二百四十二件の危険運転致死、これは明らかに当たるといったときの送致時の判断というのはどんなときなんですか。ちょっと教えてください。

○政府参考人(小津博司君) どういうことが考えられるかということで御説明申し上げますと、警察が犯人を検挙して、重大な事故でございますので逮捕したと、このように考えます。その逮捕して検察庁に送ってくるまでの限られた時間の間に危険運転致死傷罪の要件が警察として立証できたと。例えば、飲酒でございましたら、非常にたくさんのお酒を飲んでいてとてもまともに自動車を運転できるような状態じゃなかったということが立証されたとか、あるいは、非常な高速で大変に乱暴な運転をしたということが既にそのときに警察として分かっている、こういう場合に危険運転致死傷罪という罪名で検察庁に送致をしてくるわけでございます。それで、検察庁は、その罪名で本当に公判請求ができるかどうか、認められるかどうかということをその後引き続き捜査をするということでございます。

 ですから、理論的には、検察庁でいろいろ捜査をしたけれども、やっぱり危険運転致死傷罪は無理だなということだってもちろん制度としてはあり得るわけでございますけれども、これは現実的には、仮にあるとしても極めて少ないだろうと思っております。

 それから、一方で、警察が限られた時間内ではそこまでの立証が難しかったと。全く例えばでございますけれども、本人がその場からいなくなってしまっていたのでその短い期間内ではどの程度お酒を飲んだかということがはっきり分からなかったので、まずは業務上過失致死傷罪で検察庁に送ってくると。しかし、これはもっともっと捜査をすればそこははっきり分かるじゃないかということで、引き続き警察あるいは検察庁も一緒になって捜査をした結果、そこの要件が立証できましたということになって、今度は危険運転致死傷罪で公判請求すると、こういうようなことが考えられるわけでございます。

○松岡徹君 例えば先ほど言った二百四十二人に対して三百七十六件の公判請求をしたという昨年の事例をいうと、その差の百三十四件は、例えばその中にひき逃げ事件、ひき逃げというか、アルコールを飲んでひき逃げという、私が指摘している危険運転致死傷罪を創設した後に逃げ得を許すようなひき逃げという実態がこの数字となって表れているんではないですかということなんですが、どうですか。

○政府参考人(小津博司君) この十八年のこの差の件数が御指摘のようなものかについては、申し訳ございません、資料はございませんが、正にこの差というのは、検察庁に送られた後の段階で立証できたわけでございますので、そのような逃げ得ということは許されなかった事案ということになるわけでございます。

 ですから、もっとも問題があるとすれば、検察庁に送られてからも捜査を尽くしたけれども、やっぱりそこのところが立証できなかったという事例があるとすれば、そこのところが正に問題であろうとは思っております。

○松岡徹君 それもちょっとよく分かりにくいんですが、要するに危険運転致死傷罪が適用されるかどうかというのは、事故状況、すなわち事故の結果なんですね。すなわち人を死傷している事故なのかどうか。特に重大な事故、事件と言われている判断なんですね。重大な事件、すなわち事故というのは、正に人が死傷するという事故だと思うんですね。その現場を見た段階で、これは危険運転致死傷罪に当たる可能性、適用する可能性があるということは、現場で当然判断すべきだと思うんですね。その上で、ずっと調べるんですね。

 そうすると、例えばその百三十四件ほど送致時と請求の数が違うというのは、現場の捜査が一体どうなっているのかというのがちょっと分かりにくい。すなわち、危険運転致死傷罪として立件していくための環境というか条件というものが一体どうなのかと。先ほど言ったように、必ずしも飲酒をしているからといって危険運転致死傷罪には当たりませんですと、それはちょっと私は、重大な事件の場合、例えば人が死んでいる事故を起こした場合、その人が酒気帯びかあるいは酒酔いかということではなくて、当然構成要件に入るはずなんですね。この説明をどういうふうにするのかということについてです。

○政府参考人(小津博司君) 先ほど来、その前提となる御説明を申し上げませんで失礼いたしましたが、危険運転致死傷罪の構成要件は、一定の類型化された悪質な運転行為を故意に行ったということでございます。

 その類型でございますが、一つは、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行行為、これが一つ。二つ目は、進行の制御が困難な高速度での走行行為、これが二つ目。三つ目は、技量未熟での走行行為。四つ目は、人、車の通行の妨害を目的としての運転行為。五つ目が、赤信号を殊更に無視をする運転行為と。このように類型化されているわけでございます。しかも、このときに限って成立するわけでございます。

 したがいまして、事故の結果が非常に重大な痛ましいものであるということだけでこの犯罪が成立いたしませんので、やはりその要件については十分な捜査をして初めて立証ができると、こういうことになっているわけでございます。

○松岡徹君 構成要件の中にある薬物とか、例えば特に薬物の影響によって正常な運転ができない、これは危険運転致死傷罪の適用の構成要件の一つになりますね。あるいはスピード違反とか、俗に言うスピード、制御できないほどのスピードを出すとか、あるいは信号無視というような危険な運転をするとか。

 こういったことは、アルコール以外の部分は、特に覚せい剤をもし使っていたとか、あるいはその薬物がどこまでなのかというのは分かりませんが、例えば検尿をやったりとかそういうので大体確認はできると思うんですが、あるいは信号無視の場合は、要するに目撃者とか証言とかあるいはスリップ痕とか、そういったことがあるんですが、アルコールの場合は、これは時間がたてば消えるんですね、これ。だから、逃げ得というのが生まれるんではないかという心配があるんです。

 だから、アルコールを、例えば飲酒の状況も、必ずしもお酒を飲んでいるから適用するとは限らないというのがどうも分かりにくい。重大なそういった事故を起こした場合、アルコール、たとえ酒気帯びか酒酔いかは別にして、これは当然のように適用の対象になるべきではないかと思うんですけれどもね。

 そういう意味で、どうも要するに処罰規定といいますか構成要件を持ちながらそれを処罰していく規定というものが非常にあいまいだといいますか分かりにくい、国民から見てもね。こういった状況が、逆に言えば国民の規範意識といいますか、そういったものをいたずらにあおるというようなことになってしまう危険性があるという意味で、是非ともその辺を明確にするように、そしてまあ言えば現場の恣意的な判断をつくらせないためにもしっかりとしていく必要があるだろうというふうに思います。

 それで、警察庁の方にも来ていただいていますので、今回の刑法の一部改正と合わせて道交法も大きく処罰規定変わってきたと思いますが、道交法の今回の改正の内容を簡単にお願い申し上げたいと思います。

○政府参考人(野村守君) お答え申し上げます。

 今回の道交法の改正につきましては、四つの柱からその内容としております。

 具体的に申しますと、第一の柱が悪質運転危険者対策でございまして、これにつきましては、先ほど来御議論になっております飲酒運転に対する制裁の強化のほかに飲酒運転の周辺者に対する制裁の強化、あるいはいわゆるひき逃げでございますが、救護義務違反に対する罰則の引上げ等を内容とするものでございます。

 それから第二の柱が、高齢運転者あるいは聴覚障害者に対する施策でございます。まず、七十五歳以上の高齢運転者に対しまして、免許の更新時におきまして簡易な認知機能の検査をさせていただくというものが一つでございます。そのほかに、七十五歳以上の高齢運転者の自動車の運転時の高齢運転者標識、さらに聴覚障害者の自動車運転時におけます聴覚障害者標識のそれぞれの表示の義務付けでございます。

 それから第三の柱が、自転車利用者の対策でございます。具体的には、普通自転車が歩道を通行できる要件を明確化いたしますが、そのほかに、幼児ですとか児童の自転車乗用時におけますヘルメット着用の努力義務というものを導入いたします。

 それから最後に四番目でございますが、被害軽減対策といたしまして、後部座席におけるシートベルト、この着用を義務付けたいというふうに考えております。

 以上の四点を中心に今回の法律改正を提出いたしまして、現在御審議していただいているところでございます。

○松岡徹君 その中で、特に今回の刑法とかかわるところで酒気帯びといいますかアルコールのところなんですね。そこでちょっと若干聞きたいと思うんですが、先ほどもありました酒気帯びと酒酔いの違いね。それぞれ今回も酒気帯びあるいは酒酔いの刑罰も厳罰化しておるんですね。この酒気帯びと酒酔いの違いって何ですか。

○政府参考人(野村守君) お答え申し上げます。

 処罰の対象となります酒気帯び運転でございますが、これは身体に政令で定める程度、すなわち具体的に申し上げますと血液一ミリリットルにつきまして〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつきまして〇・一五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で車両等を運転するというものをいっております。それに対しまして、酒酔い運転とはアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転するということになっております。

○松岡徹君 私の友人は奈良漬けを食っても顔が赤くなるんですね。酒気帯びと酒酔いの違い、これは要するに事故を起こさない、飲酒検問とかで捕まった場合、この人は酒気帯びとか酒酔いというもので処罰の差があるかもしれませんが、しかし危険運転致死傷罪の構成要件にアルコールがあるんですよ。これ、酒気帯びと酒酔いとどう違うのか。要するに、事故まで至らなくって、未然にですよ、検問で引っ掛かってやる場合は道交法違反で処罰を受けますけれども、しかしそれが、危険運転致死傷罪の構成要件にあるアルコールからすれば、この酒気帯びと酒酔いとどう違うんだと、その結果犯したものでということになるんですね。ちょっと分かりにくいんですね。

 それは、同じようにそういう意味で、必ずしも飲酒の状況によってみんなすべてが危険運転致死傷罪の適用、立証になるとは限りませんよというようなこのあいまいさを残しているのは、あいまいに聞こえるのは、実は酒気帯びも酒酔いも何かよく分からないということ。先ほどありましたように、酒酔いの場合、正常な運転ができないような状態と言っているけれども、私は非常にお酒が強い方ですが、例えば五合お酒を飲んでも真っすぐ歩ける自信はありますけれども、しかし奈良漬けを食べて、おちょこ一杯でも本当に眠ってしまうような、眠気を持つような、要するに体質の違いだったんですね。それで酒気帯びと酒酔いの違いでここまで厳罰化するというのはよく分からない。何とかもっと違う基準を考えていくべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(野村守君) お答え申し上げます。

 まず、道交法の禁止規定といたしましては、基本的に酒を飲んで運転してはいけないということになっております。ただ、先生御指摘のように、奈良漬けとか一定のアルコールでほとんど影響のないものにつきましては、処罰としては酒気帯びに当たらないということで処罰をしておりません。

 それで、先生お尋ねの酒気帯びと酔っ払い、いわゆる酔っ払い運転、酒酔い運転でございますが、この酒酔い運転は、単に酒気を帯びているだけではなくて、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがあるということでございますので、道路交通上非常に危険な状態であるということでございまして、酒気帯びよりは重く罰するということにしておるところでございます。

○松岡徹君 余りよう分かりませんが。

 その中で、今回、アルコールを提供する者、提供者の処罰も重くしていますね。その処罰を重くした理由というのは何なのか。そして、これで処罰された者の数ですね、最近の数字はどうなっていますか。

○政府参考人(野村守君) お答え申し上げます。

 酒類でございますが、酒類を運転者に提供するということになりますと飲酒運転の成立が非常に容易になります。私どもの考えでは、酒類を提供するということは飲酒運転の成立に欠くことのできない要素であるというふうに考えております。

 したがいまして、飲酒運転をすることとなるおそれのある者に対しまして酒類を提供する行為は飲酒運転を助長する程度が非常に高くございまして、飲酒運転を幇助する行為の中でも悪質なものと評価できるというふうに考えまして、飲酒運転の根絶を図るためにはこのような行為の発生を確実に抑止していく必要があるという認識に立って今回の法律改正をしております。そこで、飲酒運転をするおそれのある者に対し酒類を提供すること、これを防止するために、飲酒運転の幇助犯よりもより重い罰則ということで今回の措置をしたところでございます。

○松岡徹君 アルコール提供者の中には悪質なものもあると思うんですが、事前にもらっていますんで、例えば教唆犯、酒酔い、酒気帯びの合計でいいますと、昨年で三百二十七件あるというふうに事前に資料をいただいていますが、例えば店の人が、お客さんで来て、車で来たと。店の人が、車で来ているんだったら飲ませぬ、しかし代行運転頼むからと言って飲んで帰ったところ、代行運転頼まないで自分で乗っていった場合、これは幇助、教唆に当たるんですか。

○政府参考人(野村守君) お答え申し上げます。

 まず最初に件数でございますが、今回新しく法律を作りますので、今幇助ということでお答えしなきゃいけないと思いますけれども、十八年の数字、酒酔いあるいは酒気帯びの教唆・幇助犯は先生御指摘のとおり三百二十七でございますが、そのうち酒類提供、酒類を提供した幇助につきましては四十五でございます。

 それから、飲酒運転をするおそれとなるものということでございますが、これは個々の事例によって考えなきゃいけないもので、一般論としてなかなか言い難いところがありますが、代行を呼ぶということできちっとそういう話をしておりまして、その上で酒を提供するという場合につきましては基本的には当たらないんだろうというふうに考えております。

○松岡徹君 酒を提供する側といいますか、そういうお店とかそういうところからすると、非常にややこしいといいますか分かりにくくなっていますので、そういうこともはっきりしていただきたいと思うんですが。

 次に、今回の自動車運転過失致死傷罪が新設されました。これは故意犯ではなくて過失犯ということで、今までの業務上過失で自動車による事故についての処罰としては業務上過失というものから今度は自動車運転過失というふうに新しく創設して、そこで対応しようということなんですね。

 そこで、この自動車運転過失致死傷罪の中にある構成要件の一つになると思うんですが、構成要件ですが、運転上必要な注意でありますが、この運転上注意というのはどういうことを指しているんですか。

○政府参考人(小津博司君) この御審議をお願いしております刑法改正で自動車運転過失致死傷罪を設けていただければと思っておるわけでございますが、その構成要件に御指摘のとおり自動車の運転上必要な注意という文言が出てくるわけでございます。これは、自動車の運転者が自動車の各種装置を操作して、そのコントロールの下において自動車を動かす上で必要とされる注意義務を意味するものでございます。

 逆の方から申しまして、自動車に関係する事故でこれに当たらないものはどういうものがあるかということで申しますと、自動車の修理工場で修理をする者がうっかりと変な修理をしてしまった結果として、その車をほかの人が走らせていて事故が起こったという場面を想定いたしますと、これは正に交通事故でございますし、自動車の運転にまあまあ関係してといいますか、ある意味では起因した事故でございますけれども、これは自動車の運転上必要な注意を怠ったということにはなりませんので今回の構成要件には該当しないと、このようになるわけでございます。

○松岡徹君 逆で言われると分かりにくいんですがね。

 要するに、一つ一つの事例によって判断していかにゃあかんのですね。ところが、それがたくさんの事例がありますし、状況によって違いますから、だからこそ今度新しく自動車にかかわる事故とかいうものは、事案は、今まで旧来の刑法の業務上過失致死傷罪というもので図っていたのを自動車に係る部分はこの新しく創設した部分で対応しようということですから、だからこそ運転上必要な注意とは何なのかということをできる限りはっきりしなかったら分かりにくいんですね。それが、逆に言えば、例えば今回の法改正の背景には、重大な事故事案が起きてきて現在の刑罰では軽過ぎるというこのバランスがあるとか、そういう国民世論や状況を反映してやるわけですから、それをはっきりしなかったら、今まで、例えば軽微な事故が、これまでの、例えば前方不注意で壁に当ててしまったとか前に追突してしまった、例えば交差点のところでもうブレーキ掛けていっているけれども物を落として拾おうとして前にちょこっと当ててしまったとか、これも追突事故なんですね。これも含めて今までは業務上過失というものでいっていたんですね。

 ところが、今度は自動車運転過失致死傷罪のところでいくわけですから、しっかりとその辺も、全体まで底上げする、重罰化するということではないと思うんですね。その重大なという部分のところとそういう意味ではしっかりと分けていかなくてはならないというふうに思っています。そういう意味で、この自動車運転過失致死傷罪が規定する運転上必要な注意というものをしっかりと明確にしていただきたいというふうに思うんですが、どうぞ。

○政府参考人(小津博司君) 新しく自動車運転過失致死傷罪を設けるわけでございますけれども、これは、従来業務上過失致死傷罪で処罰されていた行為の一つの類型を言わば切り出して別の犯罪類型として新しい構成要件にするということでございます。

 どのような場合に自動車運転に関して過失が認められるかということは大変に難しいことでございますので、具体的な事例でいろいろと判例の積み重ねがございます。非常に大きな過失につきましてはそういう意味での問題がないんですけれども、その過失があるかないかという限界事例については非常に難しく、その累次の裁判例、判例の積み重ねがあるわけでございます。

 この自動車運転過失致死傷罪につきましては、運転上必要な注意という文言だけを刑法ですので書きましたけれども、それの解釈は、基本的にこれまでの業務上過失致死傷罪の解釈、判例が基本的にそのまま引き継がれるというように考えております。

○松岡徹君 もう時間がありませんので、最後ぐらいにしたいと思いますが、大臣に今までのやつで議論を含めて最後にお答えいただきたいと思うんですが。要するに、私たち自身は、車を運転する者は当然のように義務を負うわけですね。正に危険なものでありますから、一つ間違えば大変な事故につながるということを自覚して、注意を怠らずにしなくてはならないという義務があります。

 しかし、それでも起こした結果に対して責任を負うというのは当然のことでありまして、とりわけその義務を全うしないで違反して事故を起こすというのは、これは極めて悪質だというふうに思っています。そういう意味で、それに対するしっかりとした刑罰を与えていくというのは基本でありますけれども。

 しかし、今日様々な車社会がますます発展して、先ほど大臣がおっしゃっていました過失といったときに、埼玉の川口市の事件もありましたですね。あれは、あのときの状況を見れば、彼は何か別のものを操作していてやったんですね。しかも、あそこの道路は最高時速が六十キロという制限だと、しかもそこの道には歩道と車道の区別がない、そしてそこが保育所園児の通園路といいますか、通路になっている。そういう中で起こした事故なんですね。そこでお子さんを亡くした遺族からすればやるせない思いなんですね。加害者を責める、それで自分の思いが収まるかといったらそうではないんですね。

 こういった事故を生み出したのは、必ずしも加害者の注意義務だけではなくて、なぜそこには車道、歩道の区別がなかったのか、少なくともなぜガードレールがなかったのか、保育所の子供たちが日常通園する道路であるならば、しかもそんな道路がなぜ最高時速六十キロに設定しているんだということがあります。そういう意味では、そのことに対してしっかりと答えを出さなかったら私たちは、国会もですね、加害者の側に立ってしまうというふうに思うんですね。それは、先ほど申し上げた国民意識の酌み取るべき大事な点だと思っています。

 あるいは、最近では大阪の方で起きたあずみ野観光のバス運転手による事故がありました。あれも、そういう意味では道交法では過労運転禁止というのがありますが、すなわち本人が薬物とかアルコールによってとかそういうことではなくて、雇用関係とか、あそこでは当然運転手は二人置かなくてはならないところを一人で彼はずっと運転をしていた。それが会社の雇用形態ですね。すなわち、過労は運転手だけの問題ではなくて、過労を生み出すような環境があるということも含めて、雇用面や運転者の道路交通環境をも整備していくということが大事な視点になってくるんではないかと思っています。

 そういう意味で、最後に、大臣の改めて今回の刑法改正にかかわる思いをこれからの課題も含めてどういうふうに考えられているのかということをお聞かせいただいて、終わりたいと思います。

○国務大臣(長勢甚遠君) 刑事局長からるる御説明申し上げたところでございますけれども、なかなかやっぱり法律というのは難しいもんだなと思うときもあるわけでございます。

 危険運転致死傷罪は言わば故意犯という形で構成するわけですので、今度の自動車運転罪は過失という範囲でございますが、結果の重大性を考えたりすると、被害者の方々にとっては割り切れないものもあろうかと思わないわけではありません。しかし、いずれにしても、この立証ということが裁判では大事なんだろうと思いますので、捜査当局においてもそれに万全を期していかなければならないと思っております。

 今回の刑法改正の意義等については先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、今おっしゃられたとおり、運転者には当然十分な注意をしてもらわなきゃいけませんし、といって我々も、一般の人もそういう被害に遭わないようにやっぱり注意もしていかなきゃいけませんし、またそういうことが十分できるような環境をつくっていくということが行政の本質的責任だろうと思います。それはやはり交通標識であれば警察の仕事でしょうし、道路整備であれば国土交通省ということになるんでしょうか、市町村も含めてですね、おっしゃるように過労であれば厚生労働省の仕事ということになります。みんなそこだけで生きているわけじゃないんですから、いろんな面から交通事故をなくすように努力をしていかなきゃならないと思いますし、また一緒にやっていきたいと思います。

○松岡徹君 終わります。

参照:自動車運転致死傷罪の創設、飲酒運転の厳罰化について質疑(活動報告)

ご連絡先
虹の連合・松岡とおる事務所
〒556-0001
大阪市港区波除4-1-37
HRCビル9階
Tel:06-6581-8734
Fax:06-6581-8735