5月25日、「更生保護法案」に対する本会議質疑を行いました。
冒頭、法案の質疑に先立ち、死刑制度や取り調べの可視化、証拠開示の問題について政府の見解を尋ねました。いずれも冤罪という人権侵害と大きく関わっています。死刑が確定した後、再審によって無罪となった冤罪事件が過去において発生していますし、今年二月にも、鹿児島地裁が、公職選挙法違反で起訴された12人の人々に無罪を言い渡し、判決が確定した事件もあります。冤罪の危険性は今もなお存在し、その背景には行きすぎた取り調べや証拠の独占などがあり、抜本的な改革が求められています。
前任の杉浦法務大臣が自らの信条に基づいて在任中に死刑執行の同意をしなかったのに対し、長勢法務大臣は昨年の就任以来実に7人もの死刑執行の署名を行っています。大臣によって死刑執行の対応が代わることについて長勢大臣に問いました。そして、死刑判決と冤罪の問題に関わって、冤罪を引き起こさないための取り調べの可視化の問題および証拠開示の重要性についても提示し、法務大臣および国家公安委員長に認識を聞きました。
死刑の執行について、長勢法務大臣は、「法治国家である我が国においては、裁判所が法にのっとり言い渡した刑罰の執行については、法の定めに従い慎重かつ厳正に対処されてきたものと承知をしている」とし、質問への直接の答弁を避けました。取り調べの可視化については、被疑者に供述をためらわせたり、捜査により得た情報を被疑者に示すことが困難になるなどのマイナス面があるとして、慎重な検討が必要、証拠開示についても、一定の規定の整備がされており、全面開示については、プライバシー等の侵害、証拠隠滅の恐れなどから問題があり適当ではないとの答弁でした。
更生保護法案については、本来の更生保護の主旨目的が歪められていないかという点を基本に質問をおこないました。更生保護とは、犯罪を犯した人や少年を実社会のなかで立ち直るように援助し、再犯を防ぐことで、社会を守り、公共の福祉を増進するものです。今回の法律案は、関係する二つの法律の統合と必要な法整備をおこない、更生保護の機能を充実強化させるものとして提案されています。しかし、もとの二つの法案の理念は、犯罪を行った者の改善更生を第一義の目的とし、それにより再犯の防止と公共の福祉を増進することとしているのに対し、今回の法案では再犯防止が第一の目的となり(第1条)、改善更生の目的が後退しているように思われます。私は、犯罪者に対して監視を強め、遵守事項を厳しくし、違反者に対する罰則化が強調されるような方向は、更生保護の対象者を社会から排除し、更生を促進することにはならず、本来の更生保護の趣旨を歪めてしまうのではないかという考えで、政府案を質しました。
また、社会の中で更生させていくという点においては、犯罪者の立ち直りの支援が重要で、とくに保護観察終了時に無職であった人の再犯率が有職者のそれの約5倍に達するという数字からも、就労がいかに重要な要素であるかがわかります。就労支援や職業訓練の支援、福祉との連携など、社会的援助を国が責任をもって取り組むことが重要だと考え、質問をおこないました。
さらに、その背景には、働いても働いても収入が上がらず生活保護水準以下の生活しかできない400万世帯を超えるといわれるワーキングプアの現実など、未来に希望や展望が持てない社会にも大きな要因があり、犯罪者を社会から切り離すのではなく、改善更生させ社会復帰を実現することが、犯罪に強い社会をつくることであると訴えました。
*議事録
*本会議全体の議事録は、参議院ホームページの会議録情報で検索して、参照ください。
*委員会質疑(5月31日)報告