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2007年5月26日 (土) 更新

[発言録] 更生保護法案に対する本会議質疑

2007年5月25日
参議院本会議

 民主党の松岡徹でございます。
 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました更生保護法案について御質問をいたします。
 法案に関する質疑に先立ちまして、死刑に対する法務大臣の見解についてお尋ねいたします。
 長勢法務大臣は、昨年十二月、就任以来初めて死刑執行命令書に署名し、同月二十五日に四人の死刑囚に対して死刑が執行されました。さらに、先月二十七日にも三人の死刑囚に対して死刑が執行されました。前任の杉浦法務大臣は自らの信条に従って在任中は死刑執行の同意をしませんでしたが、長勢法務大臣は、昨年、大臣就任以来、実に七人もの死刑執行の署名を行っています。このように大臣によって死刑執行の対応が変わることについてどのようにお考えなのか、大臣の御所見をお伺いいたします。
 現在、死刑判決が確定した者が百名、うち再審を請求している者が三十七名いると言われています。過去、一九八三年に免田事件、一九八四年に財田川事件、松山事件、一九八九年に島田事件等、死刑が確定した後、再審によって無罪となった冤罪事件が発生しています。また、昨年一月、長勢法務大臣の地元である富山県において、強姦罪で二年間服役した男性の冤罪事件が発覚、この二月には鹿児島地裁は、公職選挙法違反、いわゆる志布志事件で起訴された十二名の方々に無罪が言い渡され、その判決が確定いたしました。さらに、三月にも佐賀県で女性三人を殺害したとして起訴された男性に無罪判決が確定、五月には大阪地裁所長襲撃事件について大阪高裁が少年院送致を取り消す決定を出しております。正に冤罪の危険は決して過去のものではないということがこれらの事例からも明らかであります。
 これら冤罪が生まれる共通の問題として、自白の強要など行き過ぎた取調べ、証拠の独占などが冤罪を生む温床と言われ、抜本的な改革が求められています。裁判員制度の導入が迫っている今日、冤罪という人権侵害が引き起こされないためにも、取調べの完全可視化、証拠開示が重要と考えますが、法務大臣並びに国家公安委員長の認識についてお尋ねいたします。
 さて、今回提出されている更生保護法案は、一九四九年に施行された犯罪者予防更生法及び一九五四年に施行された執行猶予者保護観察法を整理統合したものとなっております。この二法の理念は、犯罪を行った者の改善更生を目的とし、もって再犯の防止と公共の福祉を増進することを目的としています。
 犯罪を犯した者が更生し社会復帰を果たすことは、結果的に再犯を予防し、犯罪からの社会防衛につながるものであります。そのために、更生意欲を高め、改善更生をなし得る必要な援助のありようが問われています。監視の強化と遵守事項を厳しくし、違反者に罰を与えることが強調されるような方向は、対象者を社会から排除し、再犯を助長することになり、更生を促進することにはなりません。
 しかし、本法案の第一条の目的では、再犯防止が第一の目的となっており、改善更生の目的が後退しているように思われます。再犯防止は結果であり、改善更生が重要な目的であると考えますが、いかがでしょうか。
 次に、法案第二条によれば、国は、「民間の団体又は個人により自発的に行われるものを促進し、これらの者と連携協力するとともに、更生保護に対する国民の理解を深め、かつ、その協力を得るように努めなければならない。」とされています。これでは主役は民間で、国の役割はその後押しと広報活動をするだけになっていると受け取れます。対象者の更生を援助する責務はまず国にあることを明確に示すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 また、地方公共団体の役割として、「必要な協力をすることができる。」との消極的な規定になっています。改善更生へ向け、出所者も地域社会の一員であるという観点から、就労支援や定住支援、福祉の提供等、地方公共団体が積極的に関与、支援を促進する規定を盛り込むべきだと考えますが、この点いかがでしょうか。
 さらに、保護観察終了時において無職であった者の再犯率が有職者の再犯率の約五倍に達するというデータからも、まさしく就職なくして更生なしと言え、十分な就労支援が更生の重要な要素となっていることは間違いありません。刑務所内における就業支援体制及び職業訓練体制の見直し、充実、実効性の高い処遇プログラムの改善、厚生労働省との連携強化、大企業、経済団体への雇用・就労支援の働き掛け、協力雇用主の拡大等、様々な課題が山積しています。
 有識者会議でも強く指摘されている就労支援と定住支援の強化や福祉との連携強化等の社会的援助を国が責任を持って取り組むべきと考えますが、長勢法務大臣と柳澤厚生労働大臣にお伺いをいたします。
 我が国の更生保護制度は、余りにも保護司を始めとする民間ボランティアに多分に頼っており、更生保護における国の役割の強化という観点から、圧倒的に不足している保護観察官の大幅な増員が不可欠です。現在、六万人の保護観察対象者に対して、実質約六百五十名の保護観察官で支えていると言われています。有識者会議の報告書でも保護観察官の倍増や専門性の向上を求める提言がなされていますが、年限を決めて着実に実行に移すべきではないでしょうか。長勢法務大臣の方針をお伺いいたします。
 次に、第三条の運用基準についてです。
 保護観察や仮釈放等、更生保護における措置決定に際しては、対象者の同意を必要とすることが重要です。
 東京都府中市にある国連アジア極東犯罪防止研修所において起草され、一九九〇年十二月十四日の国連総会で採択された社会内処遇措置のための国際連合最低基準規則、いわゆる東京ルールにおいては、犯罪者の一定の義務を課す非拘禁措置については、正式手続、裁判の前あるいはその代替として適用されるものであったとしても犯罪者の同意が必要であると規定しています。この規定は、対象者の更生意欲を高め、更生、社会復帰へとつなげるためにも重要な点と考えます。
 法案第三条では、対象者の権利や主体性の尊重に関する規定が極めて少なく、本人の同意原則の規定が明記されていません。第一条で強調されている再犯防止目的を考慮すると、かえって強制的処遇を前提としているように思われます。ついては、東京で起草された国際準則に規定されている対象者の主体性の尊重と同意原則を盛り込むべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、仮釈放審理は、その内容が被収容者本人及び第三者にとって公正性、透明性、検証可能性が十分保障されたものとされるべきです。特に仮釈放の許可基準については、実質的判断が困難な悔悟の情、更生の意欲、再犯のおそれ、社会の感情という主観的要件ではなく、被収容者の社会復帰の可能性を客観的かつ公正に審理することが可能な要件とすべきです。
 しかしながら、法案では仮釈放の基準を法務省令で定めるとし、法定化されていません。現行制度の仮釈放審理の申請が申出に変わり、法律上の行為ではなくなり、また地方委員会の仮釈放審理の開始や開始不相当の判断の法的コントロールが及ばなくなっています。そして、審理を経た仮釈放不相当に関する規定が削除されており、法案における仮釈放手続は地方更生保護委員会の職権と裁量が相当拡大されていますが、何を基準に、そして何を対象に審理を行うかが全く示されておらず、恣意的運用の危険性があります。
 仮釈放制度は、被収容者の円滑な社会復帰を果たすための援助と位置付けられるもので、被収容者本人の仮釈放申請権、さらに申請が却下された場合の不服申立て権等が保障されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、仮釈放の基準について法文上明記し、積極的かつ適切な運用を促進すべきと考えますが、併せてお伺いをいたします。
 さらに、現在、仮釈放審理をする地方更生保護委員会は全国で八か所、委員は五十六名で構成されています。年間の仮釈放申請受理件数は二〇〇四年で二万四千百三十一件となっており、例えば関東更生保護委員会の場合、同年二〇〇四年で七千百一件の件数、委員一人当たり五百九十二件の事件数となっています。審査は合議制で毎週月曜日に行われ、火、水、木曜日は申請者への面接等で出張しており、そうすると、一週間のうちで金曜日に約四十分間に一件の割で更生の意欲だとか再犯のおそれだとか、あるいは反省の程度等の決定書を書くことになります。委員の努力は分かりますが、十分な審査となっているかどうか疑問であります。
 更生保護委員会の審理に先立って、保護観察官による事前調査が行われています。膨大な受理件数を三名の合議体で判断する、これで十分な審理が行われるのか。このようなシステムが限界に来ていると考えますが、いかがでしょうか。
 地方更生保護委員会の人的構成も見直すべきと考えます。
 現行の委員構成の大半が保護観察官署出身者に偏っており、仮釈放審理が言わば内輪で行われているという批判、一種の天下りであるとの批判にこたえるものではありません。積極的な民間からの登用、弁護士や被収容者の援助活動を行うNGOの代表者や医学、心理学、教育学、社会学、その他広く各界から適任者を選任し得るようにするための規定を法案に置くべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、保護観察についてですが、保護観察の際の特別遵守事項をどのように定めるかは極めて重要な問題です。社会内処遇措置のための国際連合最低基準規則を踏まえ、遵守事項となる健全な生活態度は、社会復帰ないし生活再建のためだからこそ対象者の改善更生に特に必要と認められること、現実に遵守可能で保護観察対象者の自由を過度に制限しないものでなければならないと考えますが、この点いかがでしょうか。
 また、遵守事項違反の少年に対する少年院送致決定の申請に関する規定についてですが、保護観察処分が決まった少年に対して、保護司の呼出しに応じなかった、朝早く起きてこないといった、それ自体犯罪や非行と言えないようなささいな事実をもって少年院送致の新たな審判事由とすることは余りにも不相応であり、元の事件を考慮して審判するというのであれば、憲法で禁じられた二重処罰に当たるのではないでしょうか。
 いずれにしても、少年院送致をちらつかせながら遵守事項を守らせるというのでは、権威主義的な保護観察を志向するものであり、ケースワークの放棄にもつながりかねず、少年と保護司との信頼関係の構築から始まるべき更生保護制度を変質させてしまうのではないでしょうか。長勢法務大臣の御所見を求めます。
 さらに、仮釈放の取消しについては、事後的に不服審査を保障するだけでなく、取り消す前に保護観察対象者に対して告知、聴聞の機会を保障し、遵守事項違反の有無、その理由、情状などについて意見を述べ、資料などを提供する機会を保障するべきと考えますが、いかがでしょうか。
 犯罪は社会不安を増大させます。犯罪が生まれるのには様々な背景や要因があります。年間三万人を超えると言われている自殺者の発生、働く人の三人に一人、実に千六百万人もの人たちが正規社員でないパート、有期雇用、派遣、請負等の非正規雇用者となっている現実、働いても働いても収入が上がらず、生活保護水準以下の生活しかできない四百万世帯を超えると言われるワーキングプアの発生等、格差社会によって国民が未来に希望や展望が持てない社会も大きな要因ではないでしょうか。
 犯罪を犯した者に対し、重罰、厳罰化や監視を強化することによって社会から切り離すことではなくて、改善更生させ社会復帰を実現することが犯罪に強い社会をつくることであるということを強く申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

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