2007年4月26日
参議院法務委員会
○松岡徹君 おはようございます。
民主党が一番バッターでやるのは初めてじゃないかと思うんですが、いろいろと自民党の皆さんに、何か配慮があったそうでございますが、一番バッターということで、戸籍法の一部改正の法律案に対しまして御質問をさしていただきたいと思います。
私たち自身は、この戸籍法改正について、この改正の動機が、不正請求だとかあるいは不当な目的に使われている事案が多くなって、そして今回の改正に至る背景にもなっているということは私も知っております。それで、今回の改正は、この間、昭和五十一年、前回一部改正ありましたけれども、そのときも実は、不正請求や不正使用という事案が増えてきたと、それに対応するというのが理由でもございました。そして、今回もまた、不正請求や不当な目的による事案が続発しているということに対する対応策として今回の改正案が提案されたというふうに思っています。
したがって、まず、なぜこの不正請求や不正使用、不当な目的に使われるような事案が起きるのかということであります。それで、まずは不正請求ですね、この背景になった実態はどうなっているのか、昭和五十一年改正時から見れば効果があったのかというふうに思うんですが、いずれにしても、不正の実態というものがまずはどんな実態であるのかということを簡単にお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 戸籍法の改正の経過は今先生お話しのとおりだと思います。
戸籍謄本等の不正請求というのは、他人が戸籍に記載された者本人であると偽って請求をするとか、請求権者でないのに請求の理由を偽って請求権者であるかのように装って請求をしたり、あるいは不当な使用目的を隠して正当な使用目的であるかのように装って請求するというような場合などが考えられるわけであります。また、そういう不正使用ということになりますと、例えば、不正請求によって取得した戸籍謄本等により身元調査を行うとか、あるいは金銭的な利益を得る目的で、不正請求により取得した戸籍謄本等を興信所や探偵社などに売り渡すというような行為などがこれに当たるものと考えております。
このような不正請求、不正使用に関する実態については、すべて網羅、把握できるわけではございませんが、現行法上は戸籍謄本等の職務上の交付請求に当たるということで理由の記載を要しない、そういう行政書士等の資格者の方々が、職務上必要でないのに職務上請求用紙を用いて不正請求を行うという事件が相当相次いで起きておるというふうな実態にあるというふうに理解をしております。
○松岡徹君 今大臣がおっしゃられました不正請求あるいは成り済ましという事件がありました。
私は実は、昨年の他の委員会ですが、当時の杉浦大臣に対して、今、長勢大臣がおっしゃっておられました一つの事件についての対応、私、その見解なり取組をただしたところでありますが、それについて長勢大臣にも改めて見解といいますか考え方を、当然引継ぎはされておられるという前提で改めてお聞きしたいと思うんですね。
今から二年半ほど前でありますから、二〇〇四年の十二月に事件が発覚しました。御存じだと思いますが、兵庫の方の行政書士が、その職務上権限を利用してその目的以外の不当な目的によって戸籍謄抄本を入手すると、それを興信所、探偵社に一通二千五百円から三千円で売り渡していたという事件が起きました。あるいは、その当時の同じく兵庫の行政書士ですが、職務上請求用紙というのがございます、その百枚束になったものを、これを六万円で興信所に売り渡していた。その興信所は、その行政書士に成り済まして他人の戸籍謄抄本を入手していた、こういう事件が起きました。
私は、そのときに、その事件、私自身は、なぜこのような身元調査のようなことをするのか。他人の戸籍謄抄本を本人の承諾なしに、しかも立場を利用して商いする。一通三千円で売るということは商売にする。買った人間は、全くそういう不正な行為と分かりながら行政書士に依頼して買うわけですから、正当な、真っ当な目的ではないということが想像できるんですね。
私は、この事件の背景には、戸籍による身元調査ということが考えられるということを申し上げてきました。私自身は被差別部落の生まれでございますので、私たち自身は、差別の大きな原因として、その出自を明らかにし、社会的に差別を受けていく。結婚や就職やその他の場合によって差別を受けるということが、そういう形で不利益を被るという事件は今も後を絶たないんです。そういった差別の道具の一つとしてそういうふうに利用されていくということがあります。
本来、戸籍というものは何なのかということを、そもそも論というのがあるわけですが、壬申戸籍からずっと始まりまして、私たち自身は、その前身であります水平社の時代から、壬申戸籍そのものが極めて差別的な戸籍のありようであったということで改正等をずっと求める運動をしてまいりました。その間にも様々あるんですが、私も知っている限りでは、戦後になって民主的な戸籍法にスタートしたにもかかわらず、それぞれの全国の市町村が保管している戸籍のところに、部落の人たちのところには新平民というふうに書いていたり、旧えたというふうに記して戸籍を保管していた。あるいは、部落の人たちに赤丸を付けてやっていたというのがずっと残っています。民間のレベルでは、それぞれの末寺、お寺に、それぞれのお寺の中の檀家さんとかいう、そういう名簿があります。そこにもそういうような記載がされているところが近年までございました。
そういう意味では、戸籍というものは一体何のために要るのかと。すなわち、公証制度であるんですが、それが差別をする道具に使われてしまっているというところはやっぱり大きな欠陥であるというふうに思っておりまして、私たち自身は、その民主的な改正、人権を守るという立場で改正を求めてきました。その流れを受けて昭和五十一年に一つは改正をされているんですね。
そのときの、当時の民事局長の発言もそうでありますが、昭和五十一年に改正されたときに、戸籍謄抄本記載事項証明書の交付を請求する場合には、請求事由を明らかにしなければならず、それが不当な目的であることが明らかなときには請求を拒むことができることになったと。これは五十一年の改正のときです。
不当な目的の基準としては、婚外子であることや離婚歴など他人に知られたくないと思われる事項をみだりに探索し又はこれを公表するなどプライバシーの侵害につながるもの、あるいは戸籍の記載事項を手掛かりとして同和地区出身者であるか否かを調査するなど差別行為につながるものなど、戸籍の公開制度の趣旨を逸脱して謄本などを不当に利用する目的を言うと。これ当時の、一九七六年、昭和五十一年十一月五日の民事局長通達なんですね。不当な目的の基準というふうに言っています。
私は、今回の戸籍法の一部改正する動機となった不当な目的あるいは不正な請求、使用という事案が続発したために、その背景として今回改正するということですから、当然、こういったことが二度と起こらないような改正案になっているのかという視点で是非とも質問をさしていただきたいというふうに思うわけであります。
そこで、申し上げたように、私はここで、二年半前、二〇〇四年の十二月発覚した行政書士による戸籍の不正入手事件、これは、一人の行政書士が四年間に二千通の大量の戸籍謄抄本を不正にそういうふうに入手して、そして興信所、探偵社に売っていた事件である。あるいは、職務上請求用紙をそのまま束にして、一冊六万円で興信所に売っていた。あるいは、司法書士、弁護士にまでそういった行為があったということがあります。それは兵庫だけではなくて、京都あるいは名古屋あるいは東京、福岡と、全国でそういった事件、事案がこの間増えているんですね。
昭和五十一年に改正したときのあの目的が十分機能を果たしていなかったということになるんではないかというふうに思うんですけれども、大臣のその辺の認識はいかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 五十一年の改正によって、交付請求があった場合に、不当な目的によることが明らかなときは市町村長はこれを拒むことができるという規定を設けたわけでございますが、この改正から約三十年、今たっておるわけであります。その間に、自己のプライバシーにわたる情報を他人に知らせたくないという国民の意識は更に高まったと。また、個人情報の保護が社会的に要請されているという事情にありますし、一方で、今先生おっしゃるように、他人の戸籍謄本等を不正に取得するという事件が続けて発生をし、関係方面からこういうものを見直すべきだという意見が非常に強く出されるに至りました。
この一つは、やっぱり不当な目的によることが明らかという規定自体が、やや現行法の要件が抽象的なものですから、地域によって扱いが統一されてないというような御指摘もありました。そういうことから、今回、これをきちんとやるようにするためにはどうしたらいいかという観点から今回の改正を提案を申し上げているわけで、今先生御指摘のあったようなことが起きないように、是非この法案を早く整備をしたいと思っております。
○松岡徹君 大臣のその思いはしっかりと受け止めたいと思います。
残念ながら、こういった事案が、結局、イタチごっこにならないようにしなくてはならない、実のある改正にしていかなくてはならない、そして実のある運用になっていかなくてはならないというふうに思っております。
もう一つ、そのときに、私は杉浦大臣にも指摘をさしていただきましたが、今回のそういった事件のときに、不正入手した当時の兵庫県関係の行政書士の皆さんは四人ほどおりましたけれども、そのうち、それぞれが行政罰を受けておられます。そして、それなりの社会的制裁を受けておるんですね。そして、その後、行政書士協会は自らの問題として内規をしっかりと厳しく改めたということも聞いております。
しかし、問題は、職務上の立場を利用して他人の戸籍謄抄本を取って一通三千円で売る、そして職務上請求用紙を他人に転売すると、そして利益を得るという行為は明らかに間違いでありますけれども、それによる行政罰を受けるのは当然であります。しかし、問題は、それを三千円で買ったやつ、そしてその行政書士を唆すとまでは言いませんが、そこに荷担した、要するに、何がこれは問題なのかといえば、行政書士がそういう行為をしたから、自ら守らなくてはならない責務を逸脱した、あるいは不正にそれを利用したということも問題ですけれども、それだけではないと思うんですね。その事件の全容とすれば、すなわち、それを行政書士に依頼した、そして現金を渡して買った興信所、探偵社はどうなるんですか。彼らは何の社会的制裁も受けていませんよ。これは違反ですか、違反じゃないんですか。これは、興信所、探偵社としての探偵業法がこの六月から施行されますけれども、だけど、こういった行為は正しいんですか正しくないんですか。これ、どう思われます。
○国務大臣(長勢甚遠君) 当然、違法な行為だと思います。ただ、現行の戸籍法では、御指摘のように、行政罰である五万円以下の科料の制裁というのが当該請求者一人にしか掛からないということになっておるわけでありますので、今先生御指摘のような事案に対しては厳しくやらなきゃいかぬと思います。
今回の改正では、制裁は、科料から三十万円以下の罰金ということにいたしました。こういうふうに刑罰化をいたしましたので、当然この刑法総則が適用されることになりますので、事案にはよりますけれども、この戸籍謄本等の不正取得を依頼をしたという者に対しても、これ、いろんな要件が整えば、あればということでございますけれども、そういう場合には共犯者として処罰するということも今回の改正により可能になるものと考えております。
○松岡徹君 今回の改正で、刑罰化するという一歩踏み込んだ罰則規定になっていますので、私もあのとき言ったんですが、今回のこの事件について、何が問題なのか。単なる行政書士がその職権を逸脱したということだけではなくて、全体像を見れば、興信所、探偵社の行為はどうなのかということはやっぱりしっかりとたださなくてはならない。そのことは、私からすれば、そのことが、こういった行為によって不当な部落差別やそういった人権侵害が起きないようにしなくてはならない。そこにつながらなあかぬのですね。
この事件の一番の被害者はだれなのか。これ、大臣、だれだと思われます、この全体の事件のですね。これは、加害者というか違反をしたのは行政書士であるし、興信所、探偵社ですけれども、この事件の、問題である事件の問題を被る人はだれだと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 個別の問題ではございますが、一般的に申し上げて、不正に取った人、それから金で取得した人、その取得した人が何らかの形で利用したとすれば、その利用によって、利用の対象になった方で被害を受けられる方が生ずるということはあってはならないことだと思います。
○松岡徹君 そうだと思うんですよ。その一つ一つがどういう被害なのかというのは分かりませんが、いずれにしても、そういうことが考えられるんですね。
私はこのときにもう一つ、これを利用していた、この行政書士に依頼していた興信所、探偵社の人たちと話しすることができました、直接。その中で、興信所の中に、これとは別に、部落地名総鑑というものが発覚した、所在していたと。私は杉浦大臣にその現物を示しまして、今なおあると。三十六年前に発覚したあの事件、そして法務省がその後終結宣言出したんではないのかと言ったら、杉浦大臣は、あれは終結宣言ではありませんと、引き続き、そういったことが起きれば全力を挙げて取り組みたいということをおっしゃっていただきました。
その後、昨年は地名総鑑が、全国の部落の所在地を記入した地名総鑑がフロッピー化している、電子化されているというものまで発覚しました。今なおその出自、身元調査をするという日本社会の問題点というものはやっぱり総合的に正していかなくてはならないと思うんですが、しかしそういった行為のやっぱり一つにこの事件はなっていくんではないか。それによって被害を受ける人たちをどういうふうに救うていくのか、守るのかということはやっぱり考えていってほしい観点だというふうに思いますので、それは是非とも大臣に要望をしておきたいというふうに思っております。そういう意味で、私は、そこにまでそういった被害がこれ以上被らないような今回の改正になるべきだというふうに思っております。
そこで、公証制度としての戸籍法というものがあります。今回の改正で、原則公開を非公開にするというふうにおっしゃいました。この原則公開を非公開にするという理由というものを改めてちょっとお聞かせいただきたい。
○国務大臣(長勢甚遠君) 戸籍の公開制度は、社会生活においてそれぞれの国民の親族的身分関係の証明を必要とする場合には、広く国民の利用に供されることが望ましいというふうに考えられたことから、明治三十一年の旧戸籍法によって創設された制度でありまして、基本的に現行の戸籍法にもこの公開制度という考え方は受け継がれてきておるわけであります。
ただ、戸籍の記載には、例えば離婚歴など他人に知られたくないと思われる事項も含まれておることから、先ほど来お話がありますように、国民のプライバシー保護のための必要な措置として、昭和五十一年の戸籍法の一部改正によって、戸籍簿及び除籍簿の閲覧制度が廃止されるとともに、市町村長は、戸籍謄本等の交付請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができるということになったわけであります。
しかし、先ほども御説明いたしましたように、この不当な目的によることが明らかという現行法の要件が抽象的でありますし、地域によって取扱いが統一されていないということもあり、いろんな事件、これを不当に使うという事件も起きました。そこで、今回、個人情報をより適切に保護する観点から、戸籍謄本等の交付請求をすることができる場合を明確にする等の見直しを行う、それとともに、その交付請求の際に、交付請求者の本人確認を行うこと、不正請求行為に対する制裁を強化すること等により、不正な請求を防止する措置を講ずることとしたものでございます。
ただ、今回の改正案においても、現行法の何人でも戸籍謄本の交付請求ができるという原則の下における戸籍の公開制度を制限する方向で見直すものではありますけれども、その公証機能の役割から、戸籍に記載された情報の第三者による利用を認めるべき場合もあることは当然であります。この点、今回の改正案の下でも、権利行使のために必要な場合など正当な理由がある場合には引き続き第三者請求も認められる扱いでありますので、戸籍の公証機能というものが害されることはないというふうに認識をしておる次第でございます。
○松岡徹君 私は素直に、この戸籍制度といいますか、世界に余り類例のない制度なんで、これが戦前の明治のときから、そして大正、そして昭和に入って幾つか改正されていくんですね。昔のような親族というか、族、氏というものを中心としたもので、そしてその当時は公開ではなくて非公開というのが原則でしたけれども、それが戦後になって公開と。すなわち、公証制度としての性格を戦後になって強めていったと思うんですね。
ところが、その公証制度の公証制度というそのもの自身の意味は、一体何をだれに証明するのか、そしてその意味はどういう意味を持っているのかということを、やっぱりその辺の観点が欠けると、これは原則公開から非公開、私は、素人の立場からすれば、公証制度というのは、私は日本人で、どこどこに住んで、生まれて、だれだれ、名前は松岡徹ですということを社会の中で認知する、そのことが自分にとっては極めて幸せなことですし、自分のこれからの生活にとっても大事なことです。すなわち、社会秩序としてのルールというものを保っていくための公証制度という側面があるんですね。
これは、一方で、この公証制度があるというのは、それはその個人の生活や利益につながっていくというものでなくてはならないというふうに思うんです。ですから、そういうことからすると、原則非公開にするというのは私はおかしいと思うんですね。私は日本人、どこに住んでいて、だれだれ、名前は何々ですということ自身は、これは何も隠すことでも何でもないんですね。すなわち、そのことによって社会の秩序が維持されていく機能として存在を承知する、あるいはそのことが個人の利益となって返ってくる、これは正に原則公開という意味の根本だと思うんですが、そういうことからすると、非公開、すなわち知られたくないという気持ちという、極めて対症療法にしか映らないんですね。公証制度というのは本来そうあるべきです。私は、私はどこどこの生まれで何々出身だということを知れたとしても問題はないんです。ただ、それを知ることによって社会が排除するということがあってはならない。おまえは障害を持つからという、あるいは私は部落出身だからといって排除するということがあってはならないんです。私はどこの生まれで何であってもいいわけです。それが公証制度であるはずなんですね。
そういう意味では、私は、原則非公開にするというのはどうもむしろ見えなくしていくということにつながるのではないかというふうに思うんですけれども、大臣はどう思われます。
○国務大臣(長勢甚遠君) 戸籍制度を設けておる、我が国が置いておる意義というものはおっしゃるとおりだろうと思います。そういう意味で、公開がされて、そのことが自然に受け入れられている社会が一番いい社会であるということはおっしゃるとおりだろうと思います。
ただ、現実に起きておることは、先生のおっしゃっておる問題だけでなくて、取引上の悪用とかいろんなことも現実には起きておるわけで、こういう弊害はやっぱり取り除く必要があるという趣旨で今回改正をしておるわけでございまして、先生のおっしゃっておること以外の問題も実際には起きておるということも認識をしながら、公証制度の原則は維持をしつつ、より良い戸籍制度を維持をしていかなきゃならないというふうに考えております。
○松岡徹君 全く同感であります。だからこそ、その問題に対処するために、その管理とか運営とか運用というものはしっかりとそういう視点で、個人の利益をも守るというような視点でそういう運用というものもしっかり整備していくということが大事だと思うんですね。
そうすると、私は、このときの戸籍に載っている情報、この戸籍というのは一人一人の国民の個人情報ですね。この情報はだれの情報なんでしょう。
○国務大臣(長勢甚遠君) 戸籍に記載されている情報はだれのものかという御質問でございますが、戸籍には戸籍に記載されている者の親族的身分関係に係る情報が登録されておるわけでありまして、その情報自体は戸籍に記載されておる者の個人情報の性質を有するものであります。しかし、戸籍はそのような親族的身分関係に関する情報を登録、公証するものでありまして、社会生活においてそのような親族的身分関係の証明を必要とする場合には広く国民の利用に供するということが基本でありますから、このように戸籍に登録されている情報というのは、個人情報ではありますけれども、その情報が社会生活上必要な場合には適切に国民の利用に供することができるように、これを行政が収集をし管理をしておる、そういう性格のものであって、極めて我が国の国民生活上貴重なもの、またその整備というのは十分な意義のあるものというふうに考えております。
○松岡徹君 そこで、そうすると、これを管理するのは、正に国、行政が管理しているんですね。当然のように管理責任がありますし、そしてそれを交付する場合のルールというものをつくるわけですから。
それで、管理者としての立場で幾つかお聞きしたいんですが、例えば今回の改正で交付請求要件というものが厳しくなりました。要するに、交付する場合、管理者としての行政が請求者から請求が来た場合どのように交付するのかと。すなわち、その請求が正しいのか正しくないのかというのを、その要件を厳しくしたということでありますが、そのときに、例えば本人、今回のやつは本人とか配偶者の場合はフリーパスになっていますね。これは、例えば郵送の場合もありますが、あるいは代理人で、本人の代理人となってやる場合もありますが、例えば代理人の場合は委任状とか、あるいは郵送の場合はどうなるのかというのがありますが、この場合、本人であるということを確かめる手だてというのはどういうようにしているんですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 民事局長から答弁させてよろしいですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) この本人の確認をどうするかということでございますけれども、出頭される場合は、確かにおっしゃられますように免許証等で御本人の同一性というものを判断するわけでございますけれども、郵送の場合には必ずしもそういう手だてがございません。これをどうするかは法律レベルでなくて省令レベルでまたいずれ決めさせていただきたい、あるいは通達のレベルにまで落ちる事項もあるかとも思いますけれども。
例えば、住民票の住所あてに返送するというようなことを相手方が求めておられる場合に、これも一つの本人確認の手段になり得るわけでございますので、必ずしも免許証の写しを同封させるというような、出頭する場合と同じような手だてに限定して要求するかということについてはもう少し幅広く考えてまいりたいと。これは、現実的にはそうならざるを得ないんではないかと。いろいろな御不便との兼ね合いで決めさせていただきたいと思っております。
○松岡徹君 要するに、今回の改正でもまだちょっと心配なところがあります。例えば本人確認する場合ですね。本人が直接窓口に来れば確認できますけれども、郵送とか代理人の場合どうするのかという心配がありますが。
ただ、そのときでも、本人が来た場合でもフリーパスというのはいかがなものかと思うんですね。例えば、後でも申し上げますが、その請求理由が、今はもう大分少なくなったとは思いますが、それぞれの親族を、交換し合う、まあ言うたら昔の釣書交換とかいうのがあります。こういったことでするのがいいのかどうか。そういう意味では、先ほど言ったようにこの情報自身は個人の情報ですから、たとえ家族であっても、別に自分のお姉さんが結婚するからといって自分がとかいうのも、そこまでやっていいのかどうかというのがあります。そういう意味では、是非ともこれも検討する課題として入れておいていただきたいなというふうに思うんです。
特に、本人以外でいえば、例えば公用請求があります。公用請求の場合も請求要件が厳しくなりましたから。ただ、心配なのは、先ほども言いましたが、二年半前に起きた行政書士の問題がありますが、その三年ほど前に大阪で現職の警察官が、刑事が、生野警察署という公用を使って戸籍謄抄本、他人の戸籍謄抄本を取ったと。それを結局、興信所、探偵社に流したと。
このきっかけは、実は、その女性が、我々知るところとなりまして、身元を調べられているみたいだということで聞いたんですね。そうすると、その彼女が住んでいる当該区役所に問い合わせてみると、彼女の戸籍謄抄本が取られていた。その取った相手は、その当時の生野警察という、大阪市内にある生野警察署の公用であったと。で、請求理由は捜査のためと書いてあった。当該の大阪市は、すぐに生野警察に問い合わせして、この捜査とはどういうことですかというふうに聞けば、調べると言った三日後に刑事が逮捕されたと。そのことは新聞にも載りました。
それをずっと聞いていくと、彼がなぜ彼女の戸籍謄抄本を取ったのか、全く知らないのになぜ取ったのか。それは、自分の知り合いである人間から頼まれたと。それは興信所、探偵社につながっている人たちでした。なぜその興信所は取ったのかといえば、彼女の身元調査をしてくれという依頼があったと。
実は、彼女はその年の秋に結婚する予定でした。そのために春に釣書交換したんですね。そして、釣書交換した彼女のお兄さんの連れ合いさんの出身地が被差別部落の所在地であったというので、相手がその釣書交換によって身元調べをした。結局、この結婚は破談になったんです。彼女は自殺未遂までしました。もし死んでいれば。この刑事は、結局、有印公文書偽造同行使で逮捕されて懲戒免職になりました。しかし、興信所、探偵社は何のおとがめもありません。これ、一番の被害者は彼女なんですね。結局、破談になってしまったということがありました。その手記も彼女は本に書いていますけれども。
こういったことが起きる、すなわち、公用の場合ですね、職員が公用で戸籍謄抄本を取得する場合、厳しくなりましたけれども、偽るということはチェックできるんですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、今回の十条の二の二項で公用請求の要件が記載されておりますけれども、請求の任に当たる権限を有する職員が、その官職と事務の種類、それからどういう法律に基づいてこれを行うか、戸籍の記載の利用の目的を明らかにするということで、従来、抽象的な規定になっておりましたけれども、この利用目的等を明らかにするということになりますと相当の制約になるというように考えているところでございます。
なお、これにつきましては、今おっしゃいましたとおり刑罰法規の適用もございますし、当然のことながら、今おっしゃいました有印公文書偽造等のほかに公務員の職権濫用等の規定も適用になるわけでございますので、そういう事後的なチェックも併せてあるわけでございます。
○松岡徹君 やっぱり今回の改正でもなかなかそういうところまでチェックできるかどうかというのは分からない。要するに、こうやって有印公文書を偽造するのは確信犯ですよ。でしょう。ですから、分からないようにしようとするんですから、それをやっぱり未然に防ぐというのがこれ大事な視点だと思うんですね。だから、公用の場合もこういった抜け道がないように是非とも検討をいただきたいというふうに思います。
これは同じく士業のところにも行くわけですが、この間の戸籍謄抄本の士業による取得の状況というのを見ました。その中で、今回も士業の皆さんに、いろいろとございますが、特に十条の二のところで、請求する場合に請求要件が規定されています。今までにないことでありますから厳しくなります。しかし、士業についてはそれ以外の場合、請求することができるんですね。例えば利用の目的を明らかにするだけで士業の場合は取れるということがあります。
特に、それと例えば十条二のところの、この新旧の方で見ましたら、三ページのところの上段に㈫とあります。第一項の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士又は行政書士、八士業ですね、については、それの職務上の権限を与えているんです。しかし、たとえ職務上の権限であったとしても、前項にある三つの請求要件は必要な場合がありますが、そのときの、㈬のところでありますが、第一項及び前項の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士又は弁理士はと、こうなっていますね。ここで抜けているのは海事代理士又は行政書士なんですけれども、この違いは何か、簡単に説明してもらえませんか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 一言で申し上げますと、紛争性のある事件を依頼者から受任しているかどうかという違いでございます。
○松岡徹君 そうすると、私は幾つかデータをもらいました。この八士業が職務上の権限で戸籍謄抄本を取得することができるという中で、例えば、海事代理士というのは実際戸籍謄抄本を職務上に取るという例が全くないという場合もあるんですね。わざわざそういった必要のない状態になっているのに、今なお八士業、同等にそういう職務上権限を与えていいんかと、もういいんじゃないの、もう職務上そんな必要なくなっているという、八士業の中にも、方もおるわけですから、それはやっぱり是非とも検討して精査していくべきではないかというふうに思うんですけれども、どうですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) この海事代理士の方は、おっしゃいますとおり、ほかの士業に比べてこの戸籍謄抄本の御利用というのは総体としては少ないわけでございます。ただ、仕事の性質上、こういう自分の業務を行うについて、例えば相続関係を調べるような場合が全くないかといえば、それはあるわけなんで、やはりどこで線を引くかは非常に難しい問題でございますけれども、なかなかこの前で線を引くというのは難しいという法律の建前はあることを御理解いただきたいと思います。
○松岡徹君 それも納得のいく説明じゃないんでね。是非、そういうもやっとしたことを言わんと、ちゃんとはっきりさせてほしいと思うんですね。そういう意味では、是非ともそれをはっきりさせるように要望しておきたいというふうに思います。
時間がございませんので、次に行きたいと思うんですが、その前に、もう一つの要望しておきたいと思いますが、発行するのは、交付するのは行政側でありますから、当然入口のところで正しい請求なのか、そして正しい請求人であるのかということを確認して交付します。しかし、問題は、その交付の実態、例えば、ここは例えば戸籍謄抄本でいい、これは戸籍謄本でいい、これは抄本でいい、あるいは証明書で済むのではないかというものがあるんですね。例えばパスポート。パスポートを取得する場合は戸籍謄抄本又は謄本又は抄本、どっちなんやと。はっきりした方がいいんではないかと。
すなわち、公証としての証明をする制度の中に、この場合は謄本で十分ですよ、あるいは抄本でいいです、それ以外は要りませんというような、例えば記載証明書で済む場合とがあります。そういったことの実態を是非とも把握していただきたい。特に、これは国や行政の証明だけではなくて、民間レベルでそれが野方図になっているんじゃないかというふうな気がします。是非とも実態を明らかにして、必要でもないものまで取る必要はないんではないか。
すなわち、公証と言う以上は、何を証明するのかということですから、この場合は謄本で十分です、あるいは抄本で十分ですというようなものを是非とも検討していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 戸籍謄本等の交付に当たって、必要な分だけというふうに扱うことをする方がいいのではないかということは法制審議会においてもいろいろ議論があったというふうに承知をいたしております。ただ、具体的なことは必要があれば民事局長から答弁させますが、いろいろ御議論があって、パブリックコメント等も通じて議論をされたようでございますが、結果としてそこまでの改正には今回なっていないというのが今も提案申し上げている内容でございます。
今後どういう形で議論すればいいか、ちょっと私は申し上げかねますけれども、問題は御提言として受け止めさせていただきたいと思います。
○松岡徹君 是非とも大臣、指示していただいて、やっぱり必要でないものまで証明する必要ないんですから、公証ですから。まずは実態をつかむとかいうことから始まると思いますが、是非ともその辺が整備すべきこれからの課題ではないかと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
それで、もう時間がございませんので処罰の問題に行きたいと思うんですが、今回の目玉でありますが、こういった行為を、違法な行為といいますかね、違反をすると処罰規定が強化されました。
それで、私は言いたいのは、先ほど言ったように、今回の被害者は、こういった不正請求とか不正使用、不当な目的によって行われる事案によって起きる被害というものはだれなのかというのを先ほど大臣に聞きました。その被害は必ずしもすべての人たちが被るとは限りませんが、しかし被害を被るのは個人でありますし、その人がどんな被害を被るのかというのは、私は自らの経験から見ても、そういうのは分かっています。
そういう意味では、是非ともそこにいかないようにするということ、その被害の実態をつかむと、単なる行政罰ではなくて、そういったことを商いにする、あるいはそれによって不当な就職差別やあるいは結婚差別やその他の不当な被害を被るようなことがあれば、これは厳密に処罰するということが大事だというふうに思っております。
ただ、問題は、こういったことが把握できない、大臣もおっしゃりました、そして寺田民事局長も先ほどありましたように、要するにこういった不当な行為あるいは不当な目的によって不正請求された事案、これによって被害がどうなるのかということはなかなかつかみにくいんですね。発行する側も分かりません、なかなかね。
ですから、やっぱりこれを分かるというのは、例えばそれぞれの八士業の協会の人たちも言っていました、分からないと、どんな被害が起きるのか。先ほど生野の警察のことも言いました。もし彼女が自殺しておれば、これは一体どうなるのだ。これは自殺幇助か、いやいや殺人なのか、こう思いたくなるぐらいなんですよ。
そういう意味では、やっぱり被害がどういうものなのかということまでは言いませんが、これを不当な目的によって、あるいは不正請求によってそれが発覚する。どうやって発覚するのか、そして、ましてやそれがどういった被害になるのか。これを分かるのは私は本人に告知することだ、通知することだというふうに思うんですね。全く本人が知らない、職務上権限を持っている人が本人に承諾なしに取るんですから、本人分かりません。しかし、八士業は当然それぞれの立場、しかも職務上権限が与えられていることは社会の使命としてあるわけですから、必ずしもその人の人権侵害しようと思ってやっているわけじゃないんです。しかし、中には、先ほど言ったように、行政書士とか弁護士とか一部の人たちがそういうふうに使うんです。この被害はつかめないんです。
そうすると、本人に承諾もなしに発行した場合は、その本人に、こうこうこういう理由であなたの戸籍謄抄本を発行しましたよという本人に通知すれば、本人は心当たりあれば、あっ、それは分かっていますと、こうなるんです。いや、心当たりがないと言えば、なぜですかというふうに聞きに行ったらええ、窓口に聞きに行ったらいいんです。それで初めて不正請求か不正使用かというのが分かると思うんです。
この本人通知制度というものがなぜできないのか、私はこれが最大の大事な今回の、この戸籍法が一部改正、一部改正としてきたこの背景となった不正使用やこういった事案が増えていることを防止していくということの大事な点だと思うんですけれども、これ、本人通知制度はできませんか、大臣。
○国務大臣(長勢甚遠君) おっしゃっておられる話もよく分かるわけでございまして、このこともこの制度を議論した法制審議会等で大変議論になったと。つまり、積極派と消極派と相拮抗する形で議論があったというふうに承知をしております。
そこで、パブリックコメントも出しておるわけですが、法制審議会の戸籍法部会の審議あるいはパブリックコメント、いずれも意見が分かれておるという状況でありまして、その結果、この本人通知制度は設けることはしないということになって、この点は申し上げておるわけでございます。
また、現実にこの市町村窓口における事務処理上の問題ということも実は一つの大きな困難にしておる理由だろうと思うわけでございますが、その点はひとつ今回の改正に関しては御理解をいただきたいと思いますが、被害がなるべく分かるようになった方が、それはあった場合いいに決まっているわけですし、開示という問題もありますが、これからの検討課題だなというふうに思っております。
○松岡徹君 最後になりますけれども、私は個別にこれを法案に書き込まぬでも運用で本人の通知制度というのはできると思うんですね。戸籍謄抄本を発行するとき発行手数料、お金払うでしょう。そのときに、はがき代プラスもっと、五十円か六十円もらったらよろしい。戸籍謄本、今一通幾らですか。三百円か四百円ですけれども、そのときにプラス六十円もらったらいいんです。それで本人に、はがき代出したらいいんです。そうすれば本人に通知制度なんか簡単にできるんですよ。
そういう意味では、これが大事な、今回の法改正の一番の問題である不正請求をなくしていく、不当な目的に利用させないということの大事な私は点だと思っておりますので、今大臣が、意見の分かれているところですが、積極的に今考えていくと、これからの重要な検討課題だというふうにおっしゃっていただきましたので、是非とも、これは法律改正しなくても、制度で運用でできると思いますので、積極的な検討をお願い申し上げて、終わりたいと思います。