2007年5月31日
参議院法務委員会
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
私は、先日、本会議で代表質疑させていただきまして、その内容に沿いまして御質問をさせていただきたいと思います。今、山東先生の御質疑の中にあった部分も触れるかと思いますが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
私自身は、この更生保護法が新たにこれまでの犯罪者予防更生法、執行猶予者保護観察法、併せて統合するということについては極めて重要な意義があるんではないかというふうに思っております。代表質問の中でも私は申し上げましたが、犯罪者の犯罪を犯すその原因、背景というものが極めて大事な、この更生保護法の主要な大事な点だというふうに思うわけであります。そういう意味では、その辺を是非とも充実させていきたいという視点でこれから御質問させていただきたいと思いますが。
その前に、先日の代表質問でも冒頭に御質問をさせていただきましたが、そのときに、要するに冤罪とか取調べの可視化の問題でありますが、大臣がさきの私の質問に対して御答弁をいただきました。それで、可視化をなぜ取り組まないのか、可視化を取り組むべきだということを申し上げました。それは、冤罪事件が多発をしているという現状をどう受け止めるのかということから考えますと、その原因となっているのが行き過ぎた取調べというものが大きな原因の、要因の一つになっているということは事実でありまして、そういう意味では取調べの段階の可視化というものを積極的に導入していくべきではないかと。折しも裁判員制度がもう間もなく到来をいたします。もう既に、一部では取調べの可視化の試行といいますか、そういったことにも入っております。そういう意味で私は質問をさせていただきました。
そのときに大臣は、その可視化を導入することにためらう原因として、被疑者に供述をためらわせる要因となる、可視化を取り入れれば、そういうふうに申されましたけれども、その点についてもう一度、その認識について改めて大臣の認識をお伺いしたいと思いますが。
○国務大臣(長勢甚遠君) 昨今、取調べの可視化についての議論、先生もでございますが、割と多いわけでございますけれども、行き過ぎた取調べがあるということからこの議論が出発、よく行われているふうな気がいたします。それであれば、行き過ぎた取調べをしないようにするということが一番大事な問題だろうと思いますが、それがすぐ可視化に直結する議論であっていいのかどうかということは、また別の観点からも議論してもらわなきゃいけないだろうと思っております。
そういう観点から、可視化をすればいいというものでもないという部分があることをいろいろな観点から申し上げておるわけでございまして、取調べにおきましては、単に犯罪事実に関することだけでなくて、事案の真相を解明するため犯行の動機や事件の背景事情、被疑者の生い立ちなど様々な事実を聞き出すことになりますけれども、その中には、当然被疑者や第三者のプライバシーにわたる事柄についてやり取りがなされることもあります。
取調べ官は、このように様々なやり取りを行う中で、被疑者から組織や共犯者その他第三者から恨みを買い、報復を受けるおそれがある事柄や、羞恥心等から他人に話すことがはばかられるような事柄についても聞き出すなど、事案の真相を聞き出す努力をしているのが実情であります。そして、このような取調べの過程で得られた供述のうち、被疑者が供述調書に記載することに同意した部分のみが供述調書に記載されて証拠化されているのであり、取調べの過程でなされたすべてのやり取りが供述調書に記載されるわけではございません。
しかし、仮にこれを録音、録画を義務付けるということになりますと、プライバシーにわたる事項など公にできない事柄に触れること自体が困難となる上、被疑者としては、自己の発言の一言一句が記録され、将来それが再生されることによって公になることを意識せざるを得ません。その結果、被疑者が自身や家族等が報復を受けることに対するおそれや、家族、友人等に対する羞恥心あるいは打算等から供述をためらったり、様々な計算を働かせて発言したり、あるいはそもそも供述しなくなったりするおそれがあることは明らかであるというふうに考えられます。
こういうことも含めまして、この行き過ぎた取調べをなくするということは当然のことでありますけれども、一方、この可視化の問題はこの行き過ぎた取調べをやめさせるという目的と同時に、犯罪がきちんと適切に解明をするという目的でなければなりません。そういう意味で、刑事捜査手続の中でどういう位置付けになるかということも含めて各方面で御議論をされておるというふうに承知をいたしている次第でございます。
○松岡徹君 大臣の方も相当悩んでいるというふうに感じたんですね。
行き過ぎた取調べ、すべてとは言いません、先ほど大臣が例を申し上げたように、うその供述をするとか、あるいは容疑者との取調べのところで様々な、容疑者が逃げようとするような動きがあるという事案もあるかもしれません。しかし、この間の私は冤罪のところで申し上げているんですが、例えば行き過ぎた取調べというものが極めて冤罪を生む原因の一つになっているということは事実でありますね。
例えば、先日も本会議でも申し上げましたが、富山で起きた強姦未遂事件の容疑者として逮捕されて、そして二年九か月にわたって服役させられた。その後、刑期を終えて出た後に、実はその男性は無実であったと。そうしたら、なぜその男性が容疑者として立件されていったのかということなんですね。
そのときに、実は、その人も証言をしておりますが、何を言っても認められないと。私はやっていないと言うと、何でそんなことを言うんだと、これからは、はいかいいえしか言うなと、今後言ったことをひっくり返すことは一切しませんということを署名捺印させられて、はいかうん以外は言うなというふうな取調べを受けたと。その結果、その男性は、はいかうんしか言えない。その結果、彼は容疑者になって冤罪が生まれていくんですね。
これは、こういった取調べは行き過ぎと思いませんか、大臣。
○国務大臣(長勢甚遠君) いろんな状況があるでしょうから、真相の解明の過程でいろんなことがあるんでしょうから、具体的にこれが行き過ぎであるかどうかということを私が今申し上げる立場にはないような気がいたしますが、いずれにしても富山の事件は真犯人でなかったことは明らかであって、その捜査の過程においていろいろ問題も指摘されておることでありますから、そういうことのないようにきちんとした取調べをすべきものであるというふうに思っております。
○松岡徹君 いやいや、真犯人でないということが分かったんですよ。なぜこんな真犯人でないという冤罪を生み出したのかという原因を今話しているんですね。
その原因の一つに、彼自身も述べていますけれども、なぜこういうふうなうその自白をしたんだといえば、私はやっていないというふうに否認すれば、県警の取調べ官から、何でそんなことを言うんだ、ばかやろうとどなられたと。翌日、当番弁護士にも否認したんですけれども、すると、取調べ官から白紙の紙を渡されて、今後、言ったことをひっくり返すことは一切いたしませんなどと書かされて、署名捺印させられたと。そして、その後は、はいかうん以外は言うなと言われたんですよ。
彼は、後で言いますけれども、周りの人たちも、非常に気の優しい人だったと。こういうふうに威圧的に言われて、狭い取調べ室の中でやられて、そして彼は犯人にさせられていったんです。後で真犯人ではなかったと、犯人ではなかったということの結果を生み出したのは、これは正にそういう取調べは実は行き過ぎではないのか。すなわち、白紙に、今後言ったことをひっくり返すことは一切いたしませんというようなことを書かして、署名捺印させるということは、これは行き過ぎじゃないですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 私どもとしては、当該事件について今先生御指摘のような状況であったのかどうかは把握しておりませんので、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げればちょっとやり過ぎかなという感じはしないわけではございません。
同時に、これは私の常識として申し上げるんですけれども、逮捕された被疑者の方がやってませんと最初は言うのは一般的に多いことなんじゃないかなと思いますから、そこら辺で捜査の苦労もあるんだろうなと思います。
○松岡徹君 その一般論で別に言うつもりは毛頭ございませんが、その後、はいかうんしか言うなということまで言っているんですね。
鹿児島で起きた公職選挙法、いわゆる志布志事件でもそうですね。踏み字をさせるということが問題になりました。あれは取調べのときですよ。ああいうやり方も行き過ぎじゃないですか。
そして、取調べ官に対して、はいかうんしか答えるなというようなこと、こんなことが起こって実は無実の人たちが犯人にさせられていくという、こういうことが冤罪だと。その冤罪の原因の一つは、そういう取調べの行き過ぎた取調べがあるからではないのかと。ということはもう今までも問題になっているからこそ、大臣も、これからの可視化の在り方については検討課題になると私は十分思いますし、積極的にそのことを取り組んでいくべきだというふうに思いますけれども、もう一度大臣、その辺を踏まえてお答えいただきたい。
○国務大臣(長勢甚遠君) 行き過ぎた取調べは起きないようにすべきであるということは、そのとおりだと思っております。また、そのことによって罪のない方が罪に陥れられるということは当然あってはならないことであります。
しかし、今、日本の刑事手続の中では自白が極めて重要な位置を占めておる、そして、それを可視化することによってその役割がどうなっていくのかと。逆にそのことによって犯罪者が発見されないというようなことになることも、これはまた考えなきゃならないことでございますから、刑事手続全体の中で真実、犯罪を摘発するという役割と、そういう行き過ぎたことが行われないようにするということをどういうふうにバランスを取るかということは大変難しい課題だと思いますし、今法曹三者の間で協議会も設けて御議論いただいておるというふうに思っております。
○松岡徹君 警察庁にも来ていただいていますけれども、こういった例がたくさんありますけれども、特にこの富山のやつとか志布志事件のやつで、こういった取組によって自白させられたと、強要されというふうにこの方たちは言っています。そして、そういうことが実際やられたということが明らかになっています。そして、この富山の方なんかは、それによって自分のふるさとへ帰ることすらできないという状況になっています。要らぬ犯罪者という汚名を着せられて、冤罪の下に自分のふるさとを捨てて、ひっそりと隠れるように過ごしていたという状況なんですね。この期間はその彼らにとっては取り戻すことができないんですよ。
こういった取調べによって犯人にさせられてこういった被害を被ったときに、そういった行為をしたことが明らかに間違いであるというふうに、こんなことは二度とあってはならないというふうに思いませんか。
○政府参考人(縄田修君) 委員御指摘の富山の事案、あるいは志布志の事案につきましては、これは大変重く受け止めておりまして、私どももその事実関係等につきましても調査もいたしましたし、判決文等につきましても十分精査もいたしながらこれまで対応いたしております。
それぞれ、富山の事案につきましては、これは正に委員がおっしゃられたような、男性、そういう性格ということもあります。そういったことも考えながら取調べをしていくということになろうかと思いますけれども、供述が得られたものの、御本人が話された中身につきまして客観的事実がどう付いていっているのかといいますか、そういった裏付けが十分なされてないというふうなことがある。そういったことを総合して事実認定をしてしまって大変な誤りを犯してしまったということで、これは捜査としては極めて拙劣であったというふうに認識をいたしております。
志布志の事案につきましては、これは委員の御指摘のとおり、長時間あるいは長期間にわたる取調べ、あるいはその取り調べられた方々に対してかなり威圧的なと受け取られるような言動が多々あったんじゃないかということで指摘されておりまして、これも非常に重く受け止めております。
こういった事案につきましては、私どもも、幹部の会議といいますか、管区警察局長会議あるいは刑事部長会議あるいはそれぞれの捜査担当課長会議、私もかなり時間を割いて指示をしながら、また個別に各県の指導担当の管理官を呼んで、管区単位で個別に半日間じっくり教養もするというようなこともやりながら、あるいは警察大学校等での教養の仕組みも、適正捜査という項を別途新たに抜き出して時間を設けるとか、様々な努力もしながら、今後、適正な捜査、取調べにおきまして誤りのないようにということで、徹底を今いたしておるところでございます。更に努力を重ねていきたいと、こういうふうに思っております。
○松岡徹君 決して正しい方法ではないというふうに思うんですけれども。ただ、この取調べ官、どっちも、志布志も富山もそうですけれども、そういうやり方をやった取調べ官は処罰されてないんですね。処罰されてないんです。処罰せえへんかったらこんなことはやってもいいということになってしまうんじゃないですか。対策にならないでしょう。二度と起きないという保証はないではないですか。なぜ処罰しないんですか。
○政府参考人(縄田修君) 取調べをめぐりましては、例えば暴行とか脅迫とか刑事罰を科す事案につきましてはこれまでも厳正に対処いたしておるところでございまして、場合によっては逮捕する、あるいは検察庁に書類を送致するということで、刑事処分等も受けているケースもございます。今回の事案につきましては、何とか事実を解明しようといいますか、真相解明のためにということで捜査官として努力をしている過程でかなり、若干行き過ぎがあったということで私どもは理解をいたしております。
富山県、先ほどちょっと御指摘がありました踏み字の事案につきましては、これは大変調べられた方々に対して精神的な苦痛を与えたということで、これにつきましては国家賠償でも原告の主張が認められたということで、そういう状況もございましたし、私どもとしては、いかがなものかということで、これにつきましては減給処分をいたしたところでございます。
富山あるいは志布志の事案につきましては、富山事案につきましては、当時の警察署長、主任官等、捜査に関与した者につきまして、警察本部長の方から厳重に注意をいたしたところでございます。志布志事案につきましては、当時の警察本部長につきまして、警察庁長官から文書による厳重注意処分をいたしました。さらに、当時の捜査主任官あるいは警察本部から応援に行っておった捜査指揮に当たった者につきましても本部長から厳重注意をいたしたというところでございます。
○松岡徹君 その違法な行き過ぎた取調べによって、片や被害者の方はその人生を大きな傷付けられてるんですよ。片一方は注意だけですよ。私たち言っているのは、こういうことを二度と起こさないようにどうするかということを言っているんですよ。厳重な処罰をするということは内部の規律にもつながってくるわけでしょう。そして、そういったことが起きないようなシステムとして可視化というものを導入するべきだというふうに思っているんですよ。
富山なんかは、先日、彼の無実を証明するための再審という手続がもう今取られています。そのときに検察官の方が、新聞に載っておったんですけど、来られて、富山地検、検察から無実を証明するための調書を取ると説明を受けて、検察官は県警の捜査員や富山地検の支部の副検事の実名を挙げて、男性に、こういったことの取調べをしたこの取調べ官も含め、恨むか恨まないかというふうに質問したと。男性は無実の強姦事件で取調べを受けた際の威圧的な態度を思い出したと。そのときに、彼は一人で、検察官とか複数の人が来て恨むか恨まないかと聞かれた。その昔のうその自白を強要されたことを思い出して、恨みませんというふうに彼は答えたんです。そうすると、検察官は、その言葉を盛り込んだ調書を朗読して、男性にその調書に署名捺印をさした。余計なことですよ、これ。
これ、自分たちの責任逃れのために彼に言わしているというふうにしか映らないんですよ。こんなことは普通やるんですか。大臣、どう思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 個別の事件のことでありますので、ちょっと私はお答えは差し控えさしていただきます。
○松岡徹君 個別やなしに、こういうことが実際に検察官でやられたということですよ。こんなことはあるんですか。こんなことはあると思いますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) ちょっと私は、あったかなかったかも含めて分かりませんので、それから、そういうことは、個別の問題についてはお答えは差し控えさしていただきたいと思いますか。
○松岡徹君 この問題であんまり時間を取るわけにいきませんので、是非ともそういう機会でやりたいと思いますが。要するに、こういう態度が、こういう対応が結局威圧的で行き過ぎて、その人の証言とか発言を誘導するということにつながっていると思うんですよ。こんなことは二度とあってはならないというふうに思います。
私は、一方で、先日、フィリピンで起きた保険金殺人の事件で、検察の側が、そのときの取調べのDVDが証拠採用されて、それが映されたというふうになっています。すなわち取調べのDVD、映像と音声です。それがフィリピンで起きた保険金殺人の事件にかかわって証拠採用されたということなんです。すなわち、取調べの可視化、そのことは、明らかにどちらに対しても、そのときに言っているんですよ。警察庁のある幹部は、検察官による取調べの録画の証拠採用が定着すれば、警察の取調べが適切だったとの証明にもつながると言っています。これは逆も言えるということですよ、これ。すなわち、公正に公平にやられるべきだと。こういうこと、実例としてあるんですから、今後の取調べの可視化についてはこれ拒否できないといいますか、断るあるいは否定する理由はないんじゃないですか。
改めて、可視化に向けての大臣の決意といいますか考え方、お聞かせ願いたいと思います。これについての見解も含めて。
○国務大臣(長勢甚遠君) この可視化について、検察当局においては、被告人の自白の任意性を迅速かつ効果的に立証するのに実施する必要が認められる事件について、取調べの機能を損なわない範囲内で取調べの録音、録画を試行しておるというものと承知をしております。
しかし、全体としての可視化という話になりましたら、先ほど来御答弁申し上げていることを含めて、さらに法曹三者の中で、刑事手続全体の中で御検討されておられますし、我々としても、各国の状況等、いろんな観点からの検討を内部的にも進めておりますので、今後、更に検討してまいりたいと思います。
○松岡徹君 この辺でこの件については終わりたいと思いますが、こういう社会の情勢といいますか時代の変化、そして何がそれに対応する大事なシステムかということを考えれば、私は完全可視化というものは避けて通れない重要な課題だと思っています。大臣がそういう消極的な態度ではなくて、むしろ積極的に検討をする、あるいは導入に向けた取組をしていきたいというふうな態度をこれからは是非とも発揮していただきたいということを要望して、次に移りたいというふうに思っております。
いよいよ本題でございますが、先ほどもありました提案理由のところであります。改めて提案理由の内容についてお聞かせいただきたいというふうに思っています。
有識者会議からの提言を受けまして、大臣のそれの受け止め方であります。先ほどの山東先生の質疑の中にもありました。そこで、改めましてこの提案理由の中にある、近時、社会及び犯罪の情勢が変化する中で、更生保護はその目的を十分に果たせていないとの指摘があると、そういった指摘を受けて、大臣はさきの衆議院の委員会でも、様々なところでも答えております。
そこで、犯罪情勢の変化というのはどういうふうにとらえられているのか、そしてその更生保護の、保護というのはその目的を十分に果たせていないというふうにも答えられております。その点についてどういうふうな認識か、改めてお聞かせいただきたい。
○国務大臣(長勢甚遠君) この保護観察中の方々の再犯事件、特に重大再犯事件が起きたということがこれはもういろんな議論の契機になっておるわけでございますが、先ほど山東先生からも御指摘がありましたように、更生保護中の者が再犯を犯すということが非常に高い率で起きておって、そのことに対して国民の皆さんが大変不安を感じておられると。その原因として、有識者会議に指摘されておるような、先ほども御説明いたしましたけれども、保護観察官は、この対象者の円滑な社会復帰を支援することを重視する一方、再犯を防止して社会を保護するという意識が不十分であること、あるいは更生意欲の乏しい者への対応が不十分であること、あるいは実効性の高い積極的な処遇が不十分であることなどの問題点が指摘されており、こういうことから機能不全に陥っておるという厳しい指摘がされておると。これらの指摘はそれなりに当然考慮すべき事項であるというふうに思っております。
○松岡徹君 ちょっと分かりにくいんですが、犯罪情勢が変化しているというふうにあります。先ほど大臣も、国民世論の意識というものを受け止めなくてはならない。すなわち、この犯罪情勢の変化というのをどういうふうに大臣はとらえられておりますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 昨今、少年犯罪が大変世間の話題を呼んでおりますし、それが凶悪重大化しておる、また非常に低年齢の方々にも起きておる、さらに今、犯罪に対する社会的な対応といいますか仕組み、社会的な対応がますます希薄化しておりますので、治安に対する国民の不安は非常に高まっておると。そういう中で、再犯という問題が、再犯事件も頻発しておりますので、そういうことに対する国民の不安も高まっておるというふうに思っております。
○松岡徹君 犯罪の全体の総数としては別に急増しているわけではないと思うんですね。横ばいという状況だと思うんですね。
国民世論の感情、犯罪情勢の変化といったときに、私はどう見るかというのは、やっぱり、例えば以前あったあの青森で起きた保護観察中の者が犯した犯罪、それと安城市で起きた仮釈放で幼児を殺したあの事件、非常にセンセーショナルなショッキングな事件で、社会に与える影響といいますか、非常にショッキングな事件でありました。
少年犯罪もそうであります。少年の犯罪の凶悪化というのが本当に増えているのかどうかということを考えますと、私は特にメディアの働きというのが大きいと思うんですね。犯罪件数そのものはそんなに増えていない、むしろ横ばいか減少傾向、まあ上下はあるかもしれませんが、そんなに増えていない。そういう意味では、そういうショッキングな、衝撃を与えるような重大な事件がいち早くメディアでずっと報道されていくということは、国民にとっては無防備にその現象のみを受け止めてしまいます。そういう意味では、いたずらに不安をあおってしまうという側面もあるんではないかというふうに考えるんですね。
だから、犯罪情勢の変化というものをとらえるときに、私は決してそのことはいいとは思いませんが、そういった特別なといいますか、そういった世間にショッキングな事件となったそのことだけをとらえて更生保護の改正といいますか、そのことだけを力点に置いたようなやり方は、やっぱりちょっと、これはいたずらに世論の不安をあおる結果につながっていくんではないかというふうに思うんですね。だから、冷静に見るべきである。
大臣は、以前からも申し上げております、更生保護というのは刑事司法の一環としてあるものだと。そういう意味では、施設内処遇と社会内処遇というこの関係という立場でしっかりと受け止めなくてはならないというふうに思うんですね。そういうふうに是非とも受け止めていただきたいと思いますので、そういう意味で、これまでの更生保護制度は機能を十分果たせてこなかった、果たせていなかったんではないかという批判、あるいはそういうふうにも感じる、受け止めると、だから今回、整備しようという趣旨は私も分かりますが、どこがこれまでの更生保護制度の機能が十分果たせてこれなかったのか、こなかったのか、どこに原因がある、何が原因かというふうに思われますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 有識者会議でも指摘されておりますが、一つは、更生保護に当たる観察官の方々の意識の問題もあろうかと思います。また、保護司さんに頼り過ぎておるという体制の不十分さということもあったかと思います。そういう意味では、その組織、内容、法制、いろいろな面で見直す点がありますし、また保護司さんの方も観察中の方々に十分な指導が取れるような法制的あるいは体制的な状況にあったかということも、反省すべき点がたくさんあるんではないかと思っております。
○松岡徹君 そういうところも一面あると私は思います。
しかし、それだけではないと思うんですね。例えば、先ほど言った重大な、世間にショッキングをもたらすような事件を犯した仮釈放者、保護観察対象者は、そういう観察官とか、そういうものの体制の弱さ、だから起きたんではないか。それ以外に、その人を、仮釈放決定を下した側ですね、すなわち施設内処遇のありようにも問題があったんではないかというふうに思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 御趣旨は、仮釈放を決定した側にも責任があるのではないかという御趣旨でございましょうか。
当然、仮釈放は適切な手続の下に地方委員会で判断をしておるわけでございますが、当然いろんな釈放後の状況、在り方も踏まえて、そういうことの状況も踏まえて適正に判断をしなきゃならぬということになっておるわけでございまして、反省すべき点があったかと言われればあったケースもあったのかもしれませんですね。ちょっとあったとは言いかねますけれども、当然適切にやっていくように更に努力をしなきゃならないと思います。
○松岡徹君 素直な答弁ありがとうございます。
是非、やっぱり完璧はないんで、いろいろあると思いますから、その辺は踏まえて今後の在り方について生かしていくというのが大臣の姿勢だったと思います。
それで、私は、先ほども言ったように、こういった重大事件だけを殊更事例として挙げて、今回の更生保護のありようというものは、再犯防止ということだけに力点を置くというのはいかがなものかと。更生保護の目的は、犯罪を犯した者が自立更生し改善更生していくことが、もって再犯防止につながっていく。すなわち、大臣が答弁でいただきました、一体のものとして受け止めていくべきだというふうに答えられました。
それで、この法案の第一条の目的のところで、以前の法律と違うのは、この法律は、犯罪を犯した者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、それらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助ける。すなわち改善更生、この更生保護法の目的は、再犯防止というものが極めて重きに置かれているような気がいたしまして質問させていただきました。すると大臣は、そうではないと、それは一体のものとして受け止めるべきだというふうにおっしゃっていただきました。
先ほどの山東委員とのやり取りの中でもそのとおりだと思っておりますが、改めて、この目的規定の解釈運用について、更に改善更生の認識、重要性というものが認識されなければならないというふうに思いますけれども、改めて大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 先ほども御答弁申し上げたとおりでございまして、再犯防止と改善更生というのは一体的なものとして行わなければならないものだと考えております。そして、いったん再犯になれば改善更生はもう実現不能になってしまうということの意識を持ってこれをやっていかなければならないということでございますから、改善更生が大事なことであるということは当然のことであります。
○松岡徹君 ありがとうございます。
やはり、改善更生にどういうふうにしていくのか、犯罪を犯した者がなぜ犯したのかということを考えれば、先ほどの答弁もありましたけれども、すなわち後の遵守事項の問題にもかかわってきますが、生活の改善といいますか生活のありようというものが一つの原因にもなっているとか、様々背景があります。だからこそ、そういった健全な生活態度を送らしていくということを支援する、援助していくということが大事なことだと思うんですね。それは、その犯罪を犯した者を、二度と再犯を起こさないような改善更生につなげていくことになりますから、そういう意味では改善更生の手だてという、重要性というのはそういうところにあるんだと思います。
大臣は、今年夏に大阪で世界陸上というのを行われるのを御存じですか。世界のアスリートたちが大阪に集まって行われます。当然、アスリートは記録、そういったものを競い合うわけですね。高さや速さやというものを競い合います。記録を競い合うんです。しかし、その記録ばかりに目をとらわれていては駄目なんですね。私は、記録という、犯罪防止ということだけに力点を置くんではなくて、むしろその記録を生むアスリートの能力をどういうふうに高める環境をつくっていくかというものが大事だと、これが私は改善更生の特に大事な点だというふうに思っております。結果として記録、すなわち再犯防止というものが達成されていくというふうに思いますので、この更生保護の目的はそういう理念で是非とも進めていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
そこで、国の責務についてでありますが、いろいろありますが、この法案の、私は、先ほど言いましたように、環境づくりといいますかね、すなわち更生保護のありよう、自立へ向けた、改善更生へ向けた取組でありますが、法案の五十八条の補導援護というのがございます。あるいは四章八十二条の収容中の者に対する生活態度の調整、これは極めて大事な視点だというふうに思っています。しかし、犯罪者予防更生法の三十六条のところではこういったことが極めて同じように強調をされています。
それで、自立した生活を営むことができるよう、その自立の、自助の責任を踏まえて援助していくということが大事になってきます。そして、社会復帰を円滑にするために必要な釈放後の住居とか就業先、その他いろいろなものが調整が必要だと。すなわち、これは大事な点ですが。
そこで、これまで、国が行うべき責務の範疇になると思うんですが、私も申し上げたように、再犯防止あるいは自立、改善更生していく道は住居と特に就労なんですね。就労を達成した者はやはり再犯率が極めて低い。こういう時代ですから、是非とも就労対策であります。
そこで、昨年、総合的就労支援事業が厚労省と一緒に取り組まれました。その辺の実績等について、どんなことをやってどういう実績を上げてきたのか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。
○政府参考人(藤田昇三君) 具体的な総合的就労支援事業の内容でございますけれども、就労支援対象者を試行的に雇用した事業主に対する試行雇用奨励金の支給、それから対象者に対する事業所での職場体験講習、それから就労セミナー、事業所見学の開催、それから就職するときに身元保証人がいない者に対する身元保証を行うことというようなことが内容でございます。
試行雇用制度の関係でございますけれども、これは厚労省の予算の関係ですが、八十七人分、三か月四万円という計算で千四十四万円の予算が付けられております。それから、職場体験講習の関係、これも厚労省の予算でございますけれども、八百八十八万円の予算がありまして、三百七十人に対するものでございます。それから、セミナーの関係、これも厚労予算でございますけれども、三百八十九万九千円の予算が付いております。それから、身元保証制度、これは法務省の予算になります。これは合計で三千四百七十六万円で千七百三十八人分の予算をいただいております。これは途中から関係のNPOができたものですから、身元保証制度の関係では、今千七百三十八と申しましたけれども、約一千人余りの実績ということになっております。
いずれにしましても、こうした就労対策というものが功を奏しているというふうに私ども考えております。
平成十八年じゅうに保護観察を終了した者が四万七千六百四人でありますけれども、その中に占める無職者の割合でございますけれども、九千六百十三人というふうになっておりますが、これは前年に比べまして九百十九人、約九%の減ということになっておりまして、相応の成果が上がっておるように考えております。
○政府参考人(荒井和夫君) 先生御指摘のように、再犯防止などのためには就業意欲のある方々に対してしっかりした就労機会を提供することが重要だと考えてございます。今法務省の方からもお話がございましたように、平成十八年度から総合的な就労支援対策を開始いたして、厚生労働省と法務省で連携した対応をしております。
具体的には、ハローワークそれから刑務所、少年院、更生保護機関などが連携しまして、この間で就労支援チームをつくって働き掛けを行う。また、安定所においては、ハローワークにおいては、担当者制によってきめ細かく職業紹介、相談をいたしてございます。また、職場経験のなかなか少ない方々に対しては、職場体験講習を事業主の協力をいただいて行ったり、すぐに常用就職に結び付かない方々のためには、トライアル雇用を三か月ほどやっていただいて、それから常用就職に結び付けるなどの取組を行ってございます。そういうことの結果、着実に実績を上げてございます。
平成十八年度の就職状況、これは安定所、ハローワークでの取扱いを見ていきますと、新規求職申込者が二千二百六十八名でございますが、そのうち七百三十人を就職に結び付けてございます。また、この事業、始まった当初はなかなかチームが動かなかったんですけれども、徐々に円滑に動いておりまして、月を重ねるごとに実績を上げてくるという状況になってございます。
○松岡徹君 また一遍、細かな資料を是非ともいただきたいと思うんですが、今言ったトライアル雇用制度というのは一か月以上の試行運転なんですね。要するに、試験的に雇用ということでしょう。その実績が七百三十人が就労に達成できたということですか。
要するに、まあもうよろしいです、細かな数字はもういいですが、いずれにしても、この就労支援にかかわる総合的就労支援事業というのは、厚労省と法務省が連携をして去年から始まったんですね、大臣ね。去年から始まった。やはり就労対策というのは、こういう改善更生にとっては極めて大事な課題でありますから、今言っただけでもハローワーク、公共職業安定所を始めとして、関係部局との連携というものは極めて大事になってくると思うんですが、これは昨年で終わりではないですね。今後どういうふうにしようとしているのか、大臣、お考えお聞かせください。
○政府参考人(藤田昇三君) 現在、御指摘の、ただいま申し上げましたような総合的就労支援事業を鋭意行っておるところでございますけれども、今後、厚労省との連携を一層緊密化いたしまして、事業の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。
近年、高齢者など職に就くことができない刑務所出所者等も増加いたしておりますので、その関係でも、厚労省あるいは福祉機関との連携によりまして、必要な支援が受けられるようにいたしたいというふうに思っております。
また、協力雇用主さんのことを先ほど申し上げたんでございますけれども、こういう方の拡大と、それから現実に雇用される人の数、これも増やしてまいるようにいたしたいと思います。
関係の省庁との連携を強化いたしたいと思います。
○松岡徹君 この法案の中で新たに入った地方公共団体の協力の関与というのがございますね、大臣ね。これまでの犯罪者予防更生法にはなかった項目なんですね。要するに、ここで新たに書き加えられたということは、地方公共団体にどのような協力とか関与を期待しているのかについて、ちょっとお聞かせ願えますか。
○政府参考人(藤田昇三君) 地方公共団体との関係というのは、更生保護にとりましては非常に重要なものでございます。それで、現在でもいろんな支援、協力をいただいておるところでございますけれども、今後とも、先ほど申しました高齢者を福祉につなぐ、具体的には生活保護を受けられるようにしていただくというようなことでございますけれども、あるいはアルコールの中毒の人を病院に行かせるとか、あるいは精神的に問題がある方についてもそういう支援をいただくというようなこと、あるいは犯罪予防活動の関係でも民間のいろんな団体に対する支援を、現在もいただいておりますけれども、今後ますます強化してまいりたい、そういう観点から地方公共団体との連携というものを緊密にしたいという趣旨でございます。
○松岡徹君 私も非常に大事な点だと思っておりますので、それについては期待を申し上げたいというふうに思っています。
そこで、もう一つ、保護司の皆さんとの連携であります。
今回の有識者会議のところでも指摘がありますように、民間に多分に頼っているところがあると。その中で大きいのは保護司さんですが、保護司さんの現状を見ますと、極めて高齢化しておりますし、その負担が強いというふうに思っています。
そこで、この保護司さんの今の平均年齢が六十二歳ちょっとだと思っています。定数も、約五万二千人に対して四万八千人台というふうに、定数も割れています。だんだん保護司になろうというような人たちが減ってきているんではないかというふうに思っています。こういった現状、保護司さんの今の現状ですね。これからも重要な役割を担っていただくというそういうふうになると思うんですが、この保護司さんの現状について、どのようにしようと考えておられるのか、お聞かせ願えますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 保護司さんには本当に重要な役割を担っていただいてきておるわけでございますが、御指摘のように、定員よりも実人員が下回るというようなこともありますし、また高齢化もしておると、かつ、その補充もなかなかうまくいってない、いくことが非常に困難になりつつあるということも事実でございまして、私どもとしては、何とか保護司さんに適任者になってもらえるような体制を取っていきたいと思っております。やはりこうなるのは、保護司さんといえども一人で活動されているわけではなくて、その地域社会の中でいろんな協力を得ながら活動をされるということになると。しかし、地域社会が非常にいろんなことから希薄化をしてきておることもあって、非常にまたその役割を果たすことも非常に難しくなる、そのことも影響しておるんだろうなというふうに思っております。
そういうこともありますので、これまで退任をされた場合には後の人を紹介してもらうという形でやってきたんですけれども、そういうことだけではなくて、一昨年から、法務省と保護司連盟が連携をして保護司候補者内申委員会モデル地区事業というものを行ってまいりました。これは、例えば町内会、自治会関係者、民生・児童委員、少年補導員、教育関係者等々、地域事情に詳しい方々に委員になっていただき、適任者を内申委員会に推薦していただくということで、広く保護司候補者を確保していこうという試みでございます。平成十七年六月から十八年十一月までの一年六か月間で、全国の六十八保護司会をモデル地区として設置したところ、それ以前と比較をして保護司の委嘱者が百十八人増加という成果もありましたので、こういう試みも含めて保護司の適任者の確保に全力を挙げていきたいと思っております。
○松岡徹君 それで、次に地方更生保護委員のありようについてお聞かせいただきたいと思いますけれども、有識者会議の提言で、要するに、地方更生保護委員の構成で、仮釈放審理が内輪で行われていると。あるいは、公正性、的確性、透明性を高める必要がある。そのためにも、委員に民間出身者を登用すべきだというふうな提言があります。
大臣は、昨年、四人の民間登用を強調されておられますけれども、それだけではなくて、要するに幅といいますかね、積極的に、より積極的にしなくてはならないし、すなわち専門性という観点もありますしね。
そういうことから考えますと、例えば刑事施設視察委員会というのがございますね。あの委員の構成は、むしろ積極的に、例えば法律、弁護士の日弁連とか、あるいは医師会の方からそういう専門家の推薦を受けて委員にすることができる、あるいは積極的にそういう委員に就任していただいているということがあります。
こういったことも事例としてありますので、この地方更生保護委員会の委員の任命に当たってはそういう人事をしていくことが大事だと思いますけれども、大臣、考え方をお聞かせいただきたい。
○国務大臣(長勢甚遠君) 地方更生保護委員会委員に更生保護官署出身者以外のいわゆる民間の方々を登用するということは報告書にあるとおりでありまして、我々としても努力していきたいと思っております。
しかし、現実にはなかなか難しくて、この委員会の仕事は仮釈放等の審理を適切に行うというのが責務になるわけでございますが、おっしゃるような専門的な知識、経験も必要でありますけど、同時に、受刑者等々との面接等々、非常に時間的な拘束も多いわけでございます。そういうことから、なかなか適任者が得れないというのが御理解いただかなきゃなりませんけれども、御指摘のとおり、この民間からの登用ということに私としても積極的に努めてまいりたいと思っております。
○松岡徹君 ちょっと歯切れが悪いんですけれども、具体的にはっきりとこの全体の数からすれば何人ぐらいを民間から登用すべきだというような目標を挙げなかったら、この構成、今の現在のこの更生保護委員会、地方更生保護委員会の委員の構成は大体同じ所管から来た人たちなんですよ。要するに、同じジャンルというか、同じところになりますので、やっぱりしっかりと目標値を挙げるべきだと思いますけれども、どうですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) おっしゃることはよく理解はできますけれども、この委員については、今申しましたように、非常に専任的にこの仕事をしなきゃならない職務である、また、専門的な知識、経験が必要な部分であるということもあって、目標を立てたから、それは目標を立てて実現するというやり方でうまくいくかというと非常に難しいということは御理解いただきたいと思うんです。できる限りこの適任者を得るように全力を挙げていきたいとは思いますが、目標を立てて進めるというやり方は必ずしもなじまないんじゃないかなというふうに思っております。
○松岡徹君 目標を立てて取り組むというのはなじまないというのは、その考え方の方がなじまないと思うんですけどね。やっぱり計画的にやっていかにゃあかんと思うんで、非常に答えにくいという、今の段階で答えにくいという意味は分かりました。しかし、こちら側が提案している積極的な意味も理解をしていただきたいというふうに思っています。
〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕
それで、次、仮釈放審理の点について幾つか御質問をしたいと思いますが、まず最初に、この更生保護法のところで若干ちょっとお聞かせ願いたいんですが。
法案の三十四条のところに、仮釈放審理に行くときに、仮釈放及び仮釈放の申出というのがあります。三十四条の刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、前条の期間が経過し、かつ、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をしなければならないとなっている、申出なんですね。
ところが、犯罪者予防更生法の二十九条、仮釈放の審理の開始のところで同じくありましたけれども、それぞれの長から仮釈放、仮出場又は仮退院の申請があった場合にというふうになっている。要するに、この申請というふうになっていた犯罪者予防更生法の申請の部分が、今回、申出というふうになっているんですね。これはどういうふうに理解したらよろしいですか。
○政府参考人(藤田昇三君) 御指摘のように、犯罪者予防更生法におきましては、刑事施設の長が地方更生保護委員会に仮釈放の申請をする、委員会の方はこれを不相当であれば棄却するというふうな決定をするというふうに規定しております。地方更生委員会は、こういう規定から見ますと、単にその申請のときのみを判断しているんじゃないかというふうにも見えるところでございます。
しかしながら、本来、仮釈放等を許すという処分、これは地方更生保護委員会の責任において主体的にやらなきゃいけないものであるというふうに思います。現行法でも職権でやれるということもあるんでございますけれども、やはり、職権でやれるということが正に主体的にやるということを示しておるわけでございますので、そういうことから考えまして、この更生保護施設の長からの申請、求めというようなものは、これは審理を開始するきっかけを与えるものとして位置付けるのが適当であると。
〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕
この趣旨が明確になるようにするために、今回は申出というふうに改めまして、申請といたしますと、棄却というふうな決定をして、何かこう相手が主体でこちらがどうかというふうなことになりますので、そういうことではないように申出ということにいたす、今後は棄却ということはなくなるということになろうかと思います。
○松岡徹君 申出と申請で違うというのは、ちょっと今のところよく分からないんですけれども、今までの批判の中で、例えば収容者が、この三十四条にあるように、その一定の期間を経過して、そして法務省令で定めるところの基準によって仮釈放対象者として適任ではないかというふうなことをそれぞれの長が申請するんですね。この申請するときに、それぞれの長が恣意的に、あるいは処罰的に使うという弊害がこれまでもなかったのかどうかというような気がするんですね。すなわち、施設の長の権限というんですか、要するに、申請上げるか上げないかは施設長の腹一つだと、そういうふうに施設長の恣意的な運用といいますかね、というものがなかったか、あったのか、こういう危険もあるんです。今そのことはどうなのかということは、今申し上げるつもりはありません。
そういうことから考えると、今回申出になったというのはどういうことなのかと。そういった弊害をなくすという意味もあるのかどうかという意味でちょっと理解できるのかどうかなんですが、いかがですか。
○政府参考人(藤田昇三君) 今御指摘のような弊害があるかどうかにつきまして、私どもとしては承知しておりませんけれども、ただ、今回のように申請を申出に変えるという改正をもちまして、地方更生保護委員会の審理というものが一層主体的になって緻密になっていくということは間違いないと思いますので、抽象的に申し上げますれば、御指摘のようなマイナスのような問題というのはますます起こりにくくなるというふうに思います。
○松岡徹君 こっちの懸念事項を細かくは言うつもりは今回はありませんが、いずれにしても、先ほどから大臣が答弁しているように、この更生保護法、改善更生という課題、あるいは仮釈放という制度というものは刑事司法の一環としてあるものでありますから、そういうことからすると、一定の期間が経過したもの、そして法務省令で決めた基準に合致しているものは当然その対象者としてもあり得るんですね。
その対象者として当然審理されるべきものが施設の長の腹一つで恣意的に審理されないとかいうことがあってはならないと思うんですね。そういう意味で、そういう弊害をやっぱりなくしていくべきだと、あるとすればなくすべきだと。今、保護局長はそんなことは把握していないと言いますけれども、把握していないだけで、そういうことが以前からも懸念されてきたということは聞いています。
そういう意味では、今そのことをどうのこうの言うことではありません。新たに今回の法律が冒頭の趣旨のように作られるわけですから、そういった弊害はなくしていくということは当たり前だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 申請であれ申出であれ、刑事施設の長が今おっしゃるような内容にわたるようなことがあってはならないということは当然のことでございます。
今回、先生からはそういうことがあって変えるのかという御指摘であれば、そういうことのためにこの改正をしているわけではございませんで、申請を申出に変えたのは、先ほど局長から御答弁申し上げたとおりでございまして、これによって施設の長の権限が変わるとか、弱くなるとか強くなるとかいうものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
○松岡徹君 それで、仮釈放の基準なんですが、今までも有識者会議の中でもありますが、要するに仮釈放の基準は非常に分かりにくいというのがあります。それで、仮釈放の基準というものをどういうふうに考えておられるのか、改めてお聞きしたいと思うんですが、刑法二十八条にあるところの改悛の状というのがありますね。これは何をもって改悛したというふうに判断をしているわけですか。
○政府参考人(藤田昇三君) 刑法二十八条は、改悛の状があるときは仮に釈放することができるという規定でございます。それ以上の規定はございませんので、これをいかに運用するかということになるわけでございますけれども。
法務省令でございますが、仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の三十二条によりますと、仮釈放は、次に掲げる事由を総合的に判断して、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許すものとすると書いてあります。一号が悔悟の情が認められること、二号が更生の意欲が認められること、三号が再犯のおそれがないと認められること、四号が社会の感情が仮釈放を是認すると認められることと、このように規定をいたしておりますので、具体的な事例がこの四つの指標に照らして総合的に判断をして改悛の状があるかと、認められるかということを判断をしておるというのが実情でございます。
○松岡徹君 局長、そんなの私聞いているんじゃないですよ。刑法二十八条の、だからそうでしょう。この法案で言っている三十三条、刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のために収容している者について、刑法第二十八条又は少年法第五十八条第一項に規定する期間が経過したとき、この二十八条というのはその改悛の状というのがあるわけでしょう。その改悛の状というのは、何をもって判断しているんですかと聞いているんです。
○政府参考人(藤田昇三君) これは、地方更生保護委員会がいろんな調査をいたしまして、その調査に基づいて審理をするということで判断をするわけでございます。その調査としてはどんなことを調査するかということでございますけれども、これはまず刑事施設の長からいろいろな資料が参ります。受刑中の行状であるとか、そういうことがいろんな資料が参りますし、それから、保護観察官に事前の調べを、下準備をさせます。そこで、環境調整の結果でございますとか、その後のいろんな家族関係、仕事の関係、そういうふうなことを調査したその調査結果も参考にいたします。それから、委員そのものが調査を、本人と面接をして調査をいたしますその結果等を基に判断をいたしております。
○松岡徹君 今おっしゃったように、改悛の状は一体何を根拠に判断をしているのかと聞いたときに、要するに保護観察官がその環境を調査したり、更生保護委員の皆さんが面接したりと。保護観察官の方が環境を調査するいうたって、要するに刑事施設に収容されているんですよ。その中で何を調査して、それが改悛の状に当てはまるというのは全く分からないんです。それと、地方更生保護委員会の皆さんも面接したって、その面接の、たかだか何回か数回面接しただけでその人が改悛をしているというふうに何で分かるのかということを聞いているんですよ。
結局、これ極めて保護観察官なり委員の主観的な判断に頼ってしまうということになるんですね。主観的な判断に頼るその保護観察官や更生保護委員というのは、しっかりとした知識と良識と、そういうものを見抜く力を持っているんだからその人に任すんだと、これはますます分かりにくいんですね。だから、その辺を聞いているんです。
だから、今回もそうですが、有識者会議の中でも指摘されているように、何が基準になっているのかというのが、仮釈放基準が非常にあいまいだと。これは、先ほど保護局長が言いましたように、法務省令、例えば刑法二十八条の改悛の状も含めて、法務省令で定めている悔悟の情とか更生の意欲、再犯のおそれ、社会感情の是認とか、こういった主に四つの法務省令にある基準に基づいて総合的に判断して仮釈放決定を下していくんですね。そうでしょう、これが基準になっていると。今度もそういう基準で行くつもりですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 有識者会議の報告書では、現行の仮釈放の許可基準が不明確であるので改正を検討すべきであるということにされております。現在、この許可基準の改正についても検討を進めておるところでございます。
この仮釈放基準の改正ということになりますと、仮釈放の在り方そのものに大きな影響を及ぼすものでありますし、刑法の仮釈放の規定の解釈にも、先生も今御指摘になりましたけれども、関連することになりますので、学識者を含む各方面からの意見を聴取するなど様々な観点から慎重に検討を進めてまいりたいと考えております。
○松岡徹君 仮釈放不相当という決定が出る場合もあるんですね。そのときの主な仮釈放不相当の理由とすれば、その法務省令、すなわち基準の中にある再犯のおそれと社会感情の是認、その二つの理由で仮釈放不相当というのが大体多いというふうに聞いているんですね。
やはり先ほど、今大臣おっしゃったように、これからはそういう様々な専門的な知識も入れて、どういう基準にしていくか、仮釈放の、していくかというのは大事だと思うんです。だからこそ委員の、あるいは保護観察官の構成も、やはりそういった社会学や教育学や医学とか心理学とか精神医学とか、そういった専門家も入れたものにしていかなくてはならないし、そういった観点からの基準もしっかりと、はっきりと分かるような基準にしていくべきだと思うんです。
先ほど大臣おっしゃったように、この基準の新たな法務省令の検討というのを着手されているというのは言われておりますので、そういう客観的な判断基準に是非とも作り直していくべきだというふうに思うんですが、いかがですか。大臣、もう一度。
○国務大臣(長勢甚遠君) 今御指摘の点も含めて、許可基準自体についても検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
○松岡徹君 時間がございませんので、次に行きたいと思うんですが。
要するに、基準が非常に不透明だと。今までもそうでしたし、そういった判断で仮釈放を認めてきた。その結果、去年の犯罪者予防更生法のときに議論した、うちの前川議員が質疑をさせてもらいまして、そのときに安城事件をやっているんですね。この安城事件で、その事件を犯した犯人は、実は仮釈放されて収容施設に宿泊して、そこからいなくなって、二日、三日後ぐらいにあの事件を犯しているんですね。実は彼自身が、この悔悟の情とか再犯のおそれとかいうものの、すなわちこの基準で仮釈放出たんです。ところが、捕まってみれば、実は彼は精神的にそういう病といいますか、そういうのを抱えていたんではないかということもあります。
そういう意味では、あの犯罪が起きたのは、こういう仮釈放の基準というものが非常にあいまいで、その対処があいまいだからこそ出てきたんだというふうに私は思うんですね。だからこそ、先ほど言ったように、総合的な、客観的な判断基準、そして専門的な知識を持った人たちを積極的に登用した体制をつくるべきだというふうに思います。
もう一つの視点は、例えば職権で仮釈放の審査をしたときに、大体不相当にする、あるいは上がってきても棄却、棄却といいますか不相当にする、仮釈放不相当というものがあります。その人たちは、仮釈放を認められないわけですから、刑期が満了するまで刑事施設に収容されると。その人たちが例えば出た場合、出た場合はどうなるのか。保護観察は付かないんですね。ところが、刑事施設におる間は、仮釈放にはできないという判断されているにもかかわらず出てしまうと。これはどう考えます、大臣。
このときに、うちの同僚議員の前川先生が質問したときに、そういった視点で質問したら、当時の杉浦元法務大臣が、その当時の三ッ林政務官を中心としたチームで再犯防止のためのプロジェクトチームというのをつくって検討しているとおっしゃったんですね。それで、私は事前にそのプロジェクトチームの検討結果はどのようになったんだということを聞きました。そして検討課題は何なんだと聞いたら、例えばこのチームの検討課題は、再犯防止のための施策を幅広く検討するが、主として以下の項目、すなわち収容施設を出た者の受皿づくり、継続的な再犯研究及び処遇効果の検証の導入、満期釈放者及び仮釈放期間が終了した者に対する対処、こういったことを検討するということでやったんですね。その成果として、今現在、自立更生促進センター構想を推進中と。そして、十八年度からは性犯罪者処遇プログラムの効果検証を実施予定等々あるんですね。
これの行き着く先といいますか、大臣は今の、前大臣の杉浦大臣から替わった長勢大臣は、これについて今も併せてどうお考えですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 現行の体系では、刑罰を執行する刑務所と、そのプロセスの中で仮釈を認めて社会復帰を早くやるという体系になっておって、刑期が満期してしまったらもう突然関係なくなっちゃうという体系が基本になっているわけで、それでいいのかなという御懸念は、まあ私も素人的には何か変だなという気が実はしております。
今御指摘の前大臣の時代に、三ッ林プロジェクトでございますが、収容施設を出た者の受皿づくりという観点では、現在、従来満期釈放となっていた者などを受け入れて保護観察官による直接かつ濃密な指導監督や手厚い就労支援を実施するための自立更生促進センター構想というものを今推進をしておりますし、また、継続的な再犯研究及び処遇効果の検証の導入の観点からは、矯正局、保護局において、平成十八年度から導入された性犯罪者処遇プログラムについてその効果につき必要な検証を行い、今後の施策に役立てるということにいたしております。
満期釈放者及び仮釈放期間が終了した者に対する対処というテーマについては、現在法制審において、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進する観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方について審議が行われておりまして、その中で刑執行終了者に対する再犯防止、社会復帰支援策についても検討が行われておるというふうに承知をしております。
○松岡徹君 もう時間がありませんので最後の質問にさせていただきたいと思いますけれども、特別遵守事項の設定のところですが、その特別遵守事項について、現実に仮釈放者、保護観察対象者に対して達成可能な遵守事項にしていくということが大事だと思うんですね。達成もできないような無理な遵守事項を与えたって、はなからそれはもうできないというのは分かるわけですね。だから、すぐにその仮釈放を取り消すというような措置ということになれば、これは決して本来の更生保護の目的を達成することにならぬだろうというふうに思うんですね。
そういう意味で、達成可能なもの、あるいはそれによって意欲を持たせる、本人の意欲を持たせるということが大事でありますから、そういうものとか、あるいは直ちにそういったことが不良措置に結び付けるということではなくて、例えば遵守事項を守れなかったとき、様々な理由がある場合があります。そのときは、遵守事項の内容を変更するとか様々工夫をしていかなくてはならないというように思っております。
さきの衆議院のこの法務委員会で、参考人で来られた三重県の保護司会の会長の森本さんというのがおられます。遵守事項そのものは極めて大事な、重要な問題でありますけれども、保護司の立場からすれば、守らなかったら施設へ収容しようとは保護司は考えていない、みんな決してそういうふうにはしたくないので、ひたすらその遵守事項を守るためには、ちゃんとしたものを守ることによってあなたの自立更生がなされるというふうに指導するんですね。だから、そういうようなものとなるような教材として力強いものを与えてほしいというように、その森本さん、保護司会の三重の会長はおっしゃっていました。
すなわち、現場で直接、改善更生に向けた本人と対峙している保護司の皆さんは、これを守られなかったからすぐに収容するんだって言わなくて、いや、守らせるように、守ることが本人の改善更生につながるんだというような教材になるようなものにしてほしいというふうにおっしゃっています。
そういう意味では、本人の一人一人の違いはあろうかと思いますが、それが遵守可能なもの、あるいは意欲が高められるもの、そして、もしそれが一部守られていなかったとしても、次、プログラムを変える、すなわちこういうやり方で守れ、こういうことを次は守りなさいというような変更可能なものにするとか、そういったものを遵守事項の考え方として取り入れるべきだというふうに思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 保護観察の目的、またこの特別遵守事項を設ける目的は、不良措置をとって対象者を矯正施設に送るということを目的にするものではないわけであります。当然のことでございます。
そういうことでありますから、おっしゃるように、現実に遵守することが不可能な事項を遵守事項ということになりますと遵守事項としての意味はないわけでありますし、かえって改善更生に向けた意欲を減退させ、改善更生にとって有害でありますから、こういうものが特別遵守事項になるということはないというふうに考えなければならないと思いますし、また、ささいな違反があったことをとらえて安易に不良措置をとるということは先ほど申しました制度の目的からしてもないわけでありまして、特別遵守事項を付加、変更するなどして指導を重ねたにもかかわらず、問題行動が一向に改善しなかったり重大な逸脱行動が認められるなどした場合に、これ以上社会内処遇によっては改善更生を図れないという場合に不良措置を講ずるということになるというふうに考えておりまして、私どもとしては、そういうことにならないように改善更生のための十分な支援をしていかなきゃならぬと、こういうふうに思っております。
○松岡徹君 じゃ、終わります。