10月25日、民主党法務部門会議において、志布志事件と富山事件(*末尾参照)の元被告人である中山信一さんと柳原浩さんを招き、刑事訴訟法改正案(取調べの可視化)についての勉強会が開かれ、私は、党「次の内閣」法務副大臣として会の進行を務めました。この二つの事件は、ともにごく最近起きた冤(えん)罪事件であり、メディアでも大きく取り上げられてきましたが、お二人から、密室での取り調べによる人権侵害、被害者の孤立など、生々しい証言を直接聞く機会になりました。
中山さんは、鹿児島の志布志事件で犯罪者とされたのは警察による全くのでっちあげであり、「警察・検察による犯罪」であると語気を強められました。取調室では「早く認めたら出られるよ」と言われたり、「一回は認めてくれ」と土下座されたりしたといいます。警察は国民を守るための警察ではなく、警察(組織)を守るための警察であると感じたこと、警察内はタテ社会で、良心的な人がいたとしても、その声があがってこない構造であること、事件の担当者や責任者が次々入れ替わる弊害などを話され、誤ったこと、悪かったことについては被害者に直接謝罪し、最後まで責任をとるべきだと訴えられました。
中山さんは取調べを受けている間、8キロも痩せるなど、体調を大きく崩しました。歯の治療もなかなか受けられず、処遇の改善が必要だと話されました。
また、再審確定後、様々なところから講演や報告で呼ばれるが、警察こそ当事者の声を聞く場をもつべきだと指摘するとともに、警察の情報誘導により、捜査の段階から犯人として「演出」されていく過程について、中立で慎重な報道をすべきと、マスコミに対する要望ものべられました。
富山冤罪事件の被害者の柳原さんからは、ある日いきなり数人の男に囲まれ、任意同行とも宣告されずに強制的に連行され、事件当日何をしていたのかについて怒鳴られながら聞かれる取調べが朝の9時から夜の11時まで続いたこと、次の日も取調べが続き、取調室がサウナ以上に暑く、気を失って倒れてしまったことなどが語られました。取り調べでは、「(身内である)お姉さんも、(犯人は)お前に間違いない、どうにでもしてくれと言っている」と迫られたり、(母親の写真を持っていることがなぜか知られていて)「母親の写真を見てもやってないといえるのか」と自白を強要されるうちに、「家族にも信用されていないし何を言ってももうだめだ」と思い、冤罪を認めてしまったという経緯が語られました。出所後、家族に確認すると、「一言もそんなことは言っていない」と言われたそうです。また、犯行を認めると1分もたたないうちに逮捕状を目の前に見せられたといいます。柳原さんは、取り調べの可視化が行われていたなら、このようなことにはならなかったのではと話されました。
また、弁護士を呼んでくれと言っても「呼ぶ必要がない」と断られたり、当番弁護士に一度接見して「やっていない」と言ったら、「わかりました。調査します」と出ていったきり、その後何の連絡もなかったこと、弁護士に対して自供を覆し容疑を否認した際、警察から「なんでそんなこと言うんだ」と怒鳴られ、机を叩く握り拳に恐怖を感じたことなどを報告されました。
刑期を終えて出所してからは更正施設に一時入り、職を転々としたが、世間の冷たい目線に耐えきれず、手首を切り自殺を図ったこともありました。
誤認逮捕と判明した後、富山県警に呼ばれ、名前も肩書きも告げない人間から「うちにも非があったが、おまえにも非がある」というようなことを言われ、「とても謝罪とは言えない」と、無念さを表されました。
民主党では、野党が過半数を制することとなった参議院に積極的に法案を提出していく方針で、マニフェストでも約束した「取調べの可視化」法案を提出する準備を進めています。この法案は、民主党が衆議院に2003年から提出してきたもので、繰り返し廃案とされてきました。2006年3月に再度提出された後は、継続審議扱い、いわば、吊されたままになっており、委員会での実質審議が行われないままの状態になっています。
現在、党の法務部門の中で衆議院提出の法案をもとに、可視化はもちろん、証拠開示の視点も加えられないかと鋭意検討を行い、参議院提出にむけて議論を進めているところです。
報告のあった志布志、富山の事件に限らず、狭山事件のような冤罪を二度と生み出さないためにも、全力で取り組んでいきたいと決意を新たにしています。
*鹿児島県議選・公選法違反事件
2003年4月の県議選で初当選した会社社長中山信二さんらが志布志市内の住民に現金を配ったなどとして、公選法違反(買収、被買収)罪で計13人が起訴された。否認する被疑者にたいして、取調べで家族からのメッセージを書いた紙を踏ませる「踏み字」や連日の長時間におよぶ取調べなど人権侵害の捜査、自白強要が行われた。54回の公判を経て鹿児島地裁は今年2月、「買収の会合はなかった」などと認定、被告全員に無罪判決を言い渡し、検察官控訴もなく無罪判決が確定した。
*富山強姦冤罪事件
富山県氷見市で2002年1月と3月に起きた強姦、強盗未遂事件の容疑者として、氷見署は同年4月に同市内の運転手だった柳原浩さんを逮捕。柳原さんは起訴され、懲役3年の実刑判決を受け、約2年1ヶ月服役した。仮出所後の2006年11月、別の強姦未遂容疑などで逮捕された者が氷見市の2事件を自供。富山県警は今年1月に誤認逮捕を発表。2月9日、富山地検高岡支部は富山地裁高岡支部に対して男性の無罪を求める異例の再審請求を行い、再審開始が決定。再審公判が行われこの10月に無罪判決が出された。