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2008年3月25日 (火) 更新

[発言録] 法務委員会での入国管理行政、人権擁護行政についての質疑

2008年3月25日
参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡でございます。
 前川先生の二番手で質問させていただきたいと思います。前川先生のように理路整然と質問になるかどうか分かりませんが、鳩山大臣の所信表明に対する幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 日ごろ鳩山大臣は率直に自らの意見を述べていただいておりまして、ところどころその発言が物議を醸すといいますか、がありますが、私は逆に言えば、鳩山大臣の人間性といいますか、個性が非常に見えて私自身は非常に好感に感じているところであります。
 ただ、言葉が足らなかったりとか、説明が不足しているとかいうので誤解を招いたり、あるいは間違った表現になっていくというようなこともあるんではないかと思っておりまして、そういうところで、例えば大臣所信のところで幾つか御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、大臣の所信演説のところで、入国といいますか、入国審査にかかわるところでございます。
 それで、その前に国際テロの関係でございました。国際テロにつきましては、過去にアルカイダ関係者が我が国への不法入国を繰り返していたことがというようなことを大臣おっしゃっていました。
 そこで、アルカイダとアルカイダ関係者というのがあります。このアルカイダ関係者というのは、どのような定義といいますか、お考えでしょうか、まずお聞かせいただきたい。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 正直申し上げて、アルカイダという組織の全容が明らかになっているわけではないでしょうから、すべてはアルカイダ関係者という言い方しかできないのかもしれませんが、私が所信で述べておりますのは、フランス国籍のリオネル・デュモンという人でございまして、この者は一九九九年六月以降六回にわたり我が国への出入国を繰り返していた。たしか私が公安から報告受けたときに、群馬県、新潟県に数多く行っておると。少なくとも最低六回は入国しておって、一年四か月、トータルでは滞在をしているということですね。
 これは、デュモンというのは、国連安保理制裁委員会でアルカイダ関係者として指定されているというんですが、結局これが捕まって初めて分かるわけですから。捕まって初めて、持っていたパスポートのようなものが、何種類か持っておって、ああ、これだったらこのパスポートで、デュモンという名前じゃないんだと思いますが、日本に入ってきておったよというんで、調べたら六回いたということが分かったと。非常に怖い事件だと思いますし。
 私は日本は安全な国だと思いたいけれども、やはりテロリストにねらわれるおそれは正直言ってゼロではないし、そういうテロリストというのかイスラム過激派が、そんな彼らのアジトになり得るような場所が何か所かあるということも公安では把握しているようでございます。

○松岡徹君 私も事前に聞きましたら、タリバンとかアルカイダという関係者についての定義はどうしているんだと。まさに捕まって初めて分かるというのはありますが、例えば国連安保理決議の一二六七とかあるいは一三三三及び一三九〇で、タリバンあるいはアルカイダ関係者というふうに規定している国連の安保理決議があります。
 それによりますと、このリストで載っている、タリバン、アルカイダの関係者としての制裁リストとして載っているのが大体合計五百三、個人、団体、そのうちアルカイダ関係者、個人は二百二十八人というふうに聞いているんです。これはまあ日々変わってくるというふうに、人数はね、思いますが。
 そこで、前の大臣の発言でなんですが、大臣は、私の友人の友人はアルカイダというふうにおっしゃいました。友人の友人はここで言うアルカイダというふうに規定、定義されるわけでしょうか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) あの私の発言は舌足らずな部分があったんですが、実は、物事の本質を世の中が完全に取り違えて報道するものですから、私は、参議院の法務委員会の委員長以下の先生方には、松岡先生にも、正しく御理解をいただきたいと思うのでございます。
 アルカイダであるかどうかというのは、アルカイダ関係、つまり、ジェマー・イスラミアとアルカイダが非常に一体裏に行動しておった時代、時期ではないかと。なぜなら、ジェマーなのかもしれませんし、又は別の組織かもしれない。
 ただ、アントンという大変有名なチョウの標本商がいた。私はもちろん今日まで会ったことがありませんが、そのアンボン島にアントンという人がいて、日本や、あるいは欧米も相手にしたでしょうか、とりわけ、パプアニューギニア、ニューギニア島の昆虫を売りさばいておった。ところが、アンボン島ではイスラム教徒とクリスチャンが非常に激しい抗争を行って、共に数千人の死者が出たという説さえある。自分の身内をクリスチャンに殺されてしまう中から、アントンという男はどんどんどんどんイスラム過激派、原理主義の方に走っていったということは、いろんな虫の世界のニュースで私はもう数年前から、というか、今から見ればもう十年以上前からそういう話は聞いておったと。
 で、その男が要するに行方不明になる。いよいよ、昆虫の標本の売買よりも、対米攻撃というんでしょうか、そういう形で行方不明になってしまう。しかし、あの九・一一の翌年だと思いますが、バリ島の中心部をいつかやるから近づかないでくれということを何人かの人たちに話している。まさに私の友人なんですね、友人たちに話をしている。だから、ある意味でいえば友人の友人という言い方は何の間違いもない。ただ、アントンというのと私を置くと、その間にいる人たちは五十人ぐらいが両方を知っていますから、友人の友人の最初の友人というのは五十人ぐらいいるのかもしれません。
 問題は、私、これを理解してほしいんですよ、あと、やめますから。問題は、私はバリ島でそのことを知って、日本に帰ってきて、防衛省なんかもう幹部に何度も言いましたよ、こういうことがあったんだから調べろと。ある議連で行ったから外務省も知っている、警察も知っている。マスコミにも、親しいマスコミの人たちに、あなたたち、外信使ってでもいろいろ調べてくれと随分頼んだ。だれも何の反応もしなかった。私、そこが平和ぼけという恐ろしさではないかと。それを、鳩山は友人の友人にアルカイダ関係者がいたと言ったということばっかり騒ぎますが、その私の情報は全く無視して、私が調べろと言ったのに全く調べようとしなかった防衛省あるいは警察、外務省、一体何やっているんだと。私は今でも怒りを禁じ得ません。

○松岡徹君 私は、アルカイダ関係者と言ったとき、アルカイダというのは国連の安保理決議等々である程度把握はできるんですが、関係者というのは非常に幅広い定義なんですね、分かりにくい。今大臣がおっしゃったように、かつてはチョウの収集家だったのが変わっていく、どんなきっかけでというのは分かりませんから。友人の友人がアルカイダという関係者ということになれば、その友人はアルカイダ関係者になるのではないかという、すなわち鳩山大臣の友人はアルカイダ関係者というふうに疑われてしまうということもあり得るわけですね。ですから、非常に定義があいまいでありますけれども、逆に言えばそれほど変わりやすいといいますか、把握しにくいという状況でございます。是非とも、この関係者を定義をするときには慎重な定義を是非ともお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。
 それと、もう一つは、大臣が所信の中で述べました入国管理行政のところでありました。昨年の十一月の二十日から我が国は個人識別情報の提供による入国審査が実施されてまいりました。そのときに、大臣もこの入国審査により我が国へのテロリストの入国阻止はもちろん、すなわち水際阻止ですね、入国を阻止をするということであります。
 これも私はよく分からないんですが、だれがテロリストなのかというのは分からないのに、指紋と顔写真の入国審査で水際で阻止することができるのかどうか。すなわち、事前にこの人はテロリストだということが分かっておれば、そんなもの、指紋とか顔写真というよりも、変装したりとか偽造というのは当然あり得ることかもしれませんが、このテロリストをどういうふうに阻止できるのか、事前の情報というものを持っているのかどうか。
 すなわち、まず最初に聞きたいのはテロリストの定義といいますか、だれをテロリストとして我が国は判断しておられるのか、大臣、お聞かせいただきたい。

○国務大臣(鳩山邦夫君) さっきちょっと興奮して言い忘れてしまったのは、そのアントンが、今まさに今の先生のお話だと、アントンが日本に入ってきて、うろついておって、人によっては二回か三回入ってきたというんですね。私、そのことを伝えてもだれも何にも動かなかったということなんですよ。
 つまり、今先生がおっしゃったことで、結局アントンで入国しているかというと、ないわけですよ。だから、まさにこれが偽変造旅券ですね。また、偽変造旅券ならまだしも、正当な旅券で真正のテロリストであっても初めて入ってきて、アメリカもヨーロッパもチェックしたかというのは、これは分からないわけですね、一回目は。一回目に何かいろいろあれば二回目からはということなんで、そういった意味では本当にきちんとやらないといけないし、この間、シーファー大使としばらくお話をしたときに、少なくとも、もうじきアメリカは十本指になるんだと思います。もうしたのかな。アメリカは十本指か、日本はまだ二本指と顔写真で個人識別情報を取っているわけですけれども、ありとあらゆる、ブラックリストみたいなものですね、情報をくださいと、そうしないと、よっぽどこちらの方でもその情報をストックしておかないと、正当な旅券で本名で入ってきてもチェックできないということが起きますよということでございます。
 ですが、日本がそういう厳しい個人識別情報を使うようになったということで、これを内外に宣伝することによって抑制効果はあるだろうと、こういうふうに考えておりますが、結局テロリストは偽変造旅券を使う場合が多いわけですよね。友人の友人というのも、何回も入ってきたのは全部偽変造旅券のはずですよ。だから、そういう意味で、偽変造旅券を見付ける、何というんですか、能力のある機械を使い始めたということが意外と大きな効果を発揮するのではないかと、こう思います。

○松岡徹君 いろんなパターンがあると思いますが、テロリストというのはだれのことを言うのか。最初、今鳩山大臣もおっしゃっていました、全く情報がないのに正規のパスポート、正規のビザで来れば、それがテロリストかどうかも分からない。そうすると、この最大の問題は、そういう基礎情報がないんですね、基礎データというものが。すなわち、テロリストはだれなのかということの区別といいますか、そういうのができていないんですね。そういうような情報は日本は持っているのか、持っていないのか。これはテロリストの定義にかかわるわけですが、日本の場合の例えばテロリストというのはどういう根拠で決められているわけですか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 先生は本質をついた質問をされているわけですよ。それは、我々がテロリストというふうに考えている一定の概念はありますけれども、しかし、国際的な対立とか紛争があれば、お互いをテロリストと呼び合うということだってそれはあり得ることだろうと思うわけです。
 一般的に言えば、公衆や政府等を脅迫する目的を持って行われる殺傷行為、ハイジャック等の行為及びそのための準備行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者及び国連決議等により指定されたテロリストを指すというふうにお答えをするしかないわけですね。
 ですが、何をテロリストと言うかというと、今みたいなことしか言えませんが、実際にいろんな種類の方々が場合によってはテロリスト的な危険人物として存在をしているということは十二分に考えられるわけです。

○松岡徹君 大変答えにくい質問を申し上げまして申し訳ないんですが、やっぱりテロリストの入国阻止と言う以上は、テロリストとは何なのか、どういう者たちをテロリストとして定義付けるのか、これはしっかりとしたものを持つべきだというふうに私は思います。入国審査のときに我が国が去年実施した指紋と顔写真というものは、反面、テロリストの者たちからすれば、日本に入る場合はこういう審査をやっているから日本は入りにくいといって日本に入ってこないテロリストを増やすという効果があったんではないかというふうに言われていますけれども、そんな効果の測定なんかできないですよね。
 ただ、はっきりしているのは、この審査で気持ちよく日本観光、日本でのビジネスで来られる多くの海外の人たちが非常に不愉快な思いをして、しかも、その情報が七十年近くも保管されるということについて非常に不愉快な思いをして帰っているという、この逆効果もあるということは、大臣、しっかりと胸にしまっておく必要があると思うんですね。ですから、私は、テロリストの定義というものをやっぱりきちっと把握をしていくということが大事だと思っておりますので、その辺は今後の課題として是非とも追求をしていただきたいというふうに思っています。
 次に、時間の関係で移らせていただきますが、人権擁護行政についてお伺いをいたしたいというふうに思っています。
 これも基本的な議論になろうかと思いますが、法務省が進めている人権擁護行政、そして今も問題になっていますが、人権擁護法、仮称でありますが、の制定の問題について大臣の所見をお伺いしたいというふうに思っています。
 所信でも、あるいは大臣就任のときにも、鳩山大臣は、こういった法律が我が国にないというのは非常に情けないというお気持ちを聞かせていただきました。私も全く同感だと思っています。どのような法律がふさわしいのかというのはしっかりと議論をする必要があると思いますが、そういう意味で、改めてお聞かせいただきたいと思いますが、そもそも人権擁護行政というものはどういうものなのかという考え方について大臣の所見をお伺いいたしたいというふうに思います。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 人権が尊重され、人権侵害が生じない社会を築く必要があると、このことは国の最重要課題の一つであると考えております。
 しかし、現実には、同和問題を始めとする差別、あるいは児童、高齢者に対する虐待、学校におけるいじめ、あるいは身障者に対する人権侵害もあろうかと思いまして、様々な形態の人権侵害が実際に存在をしているわけでございまして、そうした方々を救う、そしてまた人権啓発に関する施策の推進に引き続き努めていく、とりわけ人権侵犯事件の調査、救済活動をより一層強化していきたいと、こういう思いで人権擁護行政をやっているわけでございますが、それはいろんな、ドメスティック・バイオレンスじゃありませんが、個別法があればいいじゃないかとか、いろんな意見があるのは分かりますけれども、あるいは何でも裁判でやればいいじゃないかと、すべて裁判よ、裁判よと、私はそういう訴訟社会が日本に到来することは決していいことだと思っておりません。
 したがって、裁判でなくて、人権擁護に対する基本法があって、そうした形で救われる方が出てくるというのが正しい形なんだろうと。だから、日本の国に、人権を守り、侵害された場合にこれを救うという考え方を持った基本法がないというのは先進国として寂しい限りだという考えを表明しているわけでございます。

○松岡徹君 ありがとうございます。
 私も、そもそも人権擁護行政とは何かといった場合、そもそも人権とは何なのかというところから始まるべきだと思っているんですね。
 人権とは、差別を受けている人たちだけのものではなくて、すべての人間にひとしく生まれながらにして命、自由、平等というものが保障されているもの、これが私は人権だと思っています。それが侵害される。すなわち、命あるいは自由、平等というものがそれぞれの理由によって奪われていく。例えば障害を持つ人たち、あるいは女性、あるいは被差別部落、様々な理由によって自由や平等、そして命が脅かされるということがあってはならないというふうに思います。
 擁護とはどういうことか。すなわち、そういった侵略や、あるいは命を奪おうとしているところからかばって守るということが擁護ですね。そういう侵害をされようとしている、されていることからかばって守る、人権を擁護するというのはまさに私はそういうことだというふうに思っています。それを進めるのが人権擁護行政だというふうに思っています。
 そういうことからすると、人権擁護行政のための根拠となる基本的な法律というのは私も全くそのとおりで、その人権の定義というのは、私は日本国憲法に書いてある基本的人権の理念といいますか、あれが一つの人権の物差しといいますか、我が国が守るべき憲法に保障された人権が私は人権の基本としてベースになるべきだと。あえて付け加えるならば、人権にかかわる国連の諸条約、人権諸条約ですね、例えば女性差別撤廃条約とか、あるいは子どもの権利条約であるとか、あるいは人種差別撤廃条約であるとか、そこに我が国が批准した、賛成をした条約の中に書かれてある人権規定というものが一つの物差し、基準の物差しになるんではないかというふうに思いますけれども、大臣の人権に関する基準といいますか、とらえ方というのはいかがでしょうか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 松岡先生は世の人権を守るために大変な活躍をされてこられた方でありますから、私など松岡先生に比べれば物の数ではないわけです。ですが、そういう先生の今のお話を心を無にして聞きほれておったわけでございまして、要は、同じ人間でありながら全くいわれのない差別というものがある、これを何とかなくしたいという気持ちの強さでは私もそうそう人に負けないようなものを持っていると思います。
 問題を特化させてはいけないとは思いますけれども、「橋のない川」とか「夜明けの旗」とか、私は見ると必ず涙が出ます。何度見ても涙が出ます。それは、そういういわれのない理不尽なものが世の中に存在しているということ、それに勇敢に闘ってこられている方がいるということ。それ以外にも様々な人権侵害があるわけですから、とにかく人権侵害とは何だと言われても、それこそこの定義はまたいずれきちんとしなければならないと思いますが、思想として、哲学として、人権侵害、いわれのない差別許すまじという気持ちをいつも心の中心に持っていようと、こう考えております。

○松岡徹君 私も、是非とも人権擁護にかかわる基本となる法律が我が国に整備されていくというのは本来だというふうに思っています。
 すべての人間がひとしく持っている平等の権利でありますから、個別具体の個別法ではなくて、基本となる法律ができて当たり前だと。それを守るために、個別具体に現れる人権侵害に対する対処は個別法でもいいかもしれません。しかし、基本となるものはやっぱり要るべきだというふうに思っています。
 私は、今回も議論になっていますが、人権擁護法、すなわち人権侵害を受けた人たちを救済しようという法律です。問題は、人権侵害というものがどういうものなのかということを見ていく必要があるというふうに思うんですね。
 そこで、公人とか私人間とかいうのはありますが、例えば前も、以前の法務委員会でも私議論させていただきましたが、例えば部落問題でいえば、一昨年に、七月の一日に東京地裁で判決が出た事件があります。連続差別はがき事件であります。一人の男が五百通を超えるはがきを六人の人間に対して送り付けた。しかも、その人だけではなくて、その人の住んでいる周りに、こいつは部落民だというふうなはがきを周辺にまくと。あるいはもっと、殺してやるとか、そういったはがきが、五百通を超えるはがきが出ている。そのときに、当然その被害者の人たちは法務局にも相談にも行きました。残念ながら、法務局の擁護行政は被害者を守ろうという手だてとすれば非常に大変な問題があったというふうに思いますが、いずれにしましても、その実行者が逮捕されまして、判決は懲役二年の実刑になりました。彼は去年、その実刑を終えて出所してきました。私たちは半年以上も彼と接触をしまして、私も今年の一月に彼と直接話をしました。この判決で有罪の根拠は名誉毀損と脅迫罪でありました。それが認定されました。こういうことは非常にまれであります。
 これは明らかな人権侵害だというふうに思うんですけれども、大臣も当然そのように思われますよね。しかし、この事件の被害者はだれだとお思いですか。この五百通を超えるはがき事件で有罪になった事件の被害者はだれだと思います。お願いします。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 差別はがきの事件についてはもちろん聞いているんですけれども、受取人だけではないような気がしますね。つまり、もちろん、そのはがきを送り付けられた、はがきの受取人なんていうくだらないメモが入っていますけど、私は受取人だけではないと思いますね。やはり、そのはがきを何のためでそういうことをするかといえば、個人を一人だけやっつけるとかいうんじゃなくて、やはり同和問題あるいは部落とか、そういうふうな形で大勢の方を一どきに傷つけていると私は思います。

○松岡徹君 ありがとうございます。
 ただ、私たちは、この一月の末にその人と、彼が服役中も我々は面会に行ったりして人間関係つくってきたんです。そして一月に、六人の実名ではがき書かれた本人と私たちとで彼と話合いをしました。彼も率直に自らの過ちを我々の前で謝ってくれました。そして、これからもこういった間違いを犯さないようにしたいということでありました。彼のこういった行為をした動機は、彼自身がリストラに遭って就職できないとかいろんなその背景があって、そしてそういう差別行為に思い付いていく。それは、おまえら部落民のくせに何でこんなことしているんだと。すなわち、自分よりも弱い者といいますか、そういうふうに見てしまうことがありました。そのことを率直に語っていただきました。
 私は、この場合の事件の人権侵害に対して、だれがどうやってだれを救済するのか、この被害者はだれかということを特定しなくてはなりません。当然この六人も、実名ですから、なりますけれども、今大臣おっしゃったように、この六人に類する人たちも当然被害の一端を担っているんですね。どうして救済するのか。
 もう一つの事件は、これも愛知県で起きた、インターネット上にありました。インターネットにその愛知の被差別部落の所在を住所、名前、そして挙げ句の果てには動画まで載せて、ここには近づくなと、殺されるぞとか、そういったことを書き込んだホームページがインターネット上で出ました。彼も逮捕されまして、有罪になりまして、名誉毀損になったわけであります。
 様々形を変えていきます。そして、今もまだ十分未解決でありますが、行政書士の方が他人の戸籍謄抄本を取得して一通三千円から一万円で売っていた。それを依頼したのが興信所、探偵社でありました。これは今もありまして、去年の暮れに見付かったんですが、三重の行政書士が一つの会社に契約しまして、その会社がその契約者である行政書士に依頼するんです。これはプライベートリサーチという会社なんですね。これ横浜にある会社なんですが、この横浜にあるプライベートリサーチが幾つかの行政書士に契約するんです。そして、行政書士が自分たちの職務上請求用紙を使ってプライベートリサーチから来た依頼の個人の戸籍謄抄本を取って、それを一通三千円から一万円で売っていた。このプライベートリサーチ社というのはもう今閉めて、事務所もないんですね。我々、会いにも行きましたけれども、もう事務所はもぬけの殻でございました。
 この調査依頼の調査依頼内容についてその三重の行政書士からいろいろ協力をいただいて、見ました。そうすると、調査の目的は結婚とかあるいは就職にかかわる調査がほとんどでございました。我々の知らないところで職務上の権限を不正利用して、他人を結婚や就職から除外していくというようなことが我々の分からないところで起きている。
 実はこれは三年前にも兵庫や大阪、あるいは東京、名古屋、福岡でそういった行政書士による他人の戸籍謄抄本の不正入手事件が相次ぎました。それで、戸籍法の一部を改正をいたしまして、それに依頼をした興信所、探偵社まで罰せられるという刑罰化になったんですが、残念ながらこの事件が起きたときはまだそれが施行前でありまして、今もそうですけれどもね、施行前ですからこの刑罰に当たらない、すなわちやり得、逃げ得になってしまっていると。
 実は五年ほど前に大臣に申し上げたわけですが、こういったことは人権侵害に当たるのかどうか、他人の戸籍謄抄本でそういった就職や結婚の自由を阻害するような行為は人権侵害に当たると思われますか、思われないですか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 人権侵害に当たりますけれども、結局、現在のその人権擁護行政では説示、勧告というぐらいしかないわけですね。これが刑事事件になるかというと、なかなかこれ、巧みにやると微妙な形でなかなか刑事事件にならないという部分もあるかもしれない。だから、今の人権擁護行政で説示とか勧告というのは残念ながら弱い、弱いものしか持っていない。じゃ、何でも裁判で決着付ければいいじゃないかというのはまた非常に著しく困難ですから、その間を埋める人権を守る基本法が必要だというのはまさにそういうところから申し上げているわけです。

○松岡徹君 私は是非大臣にお願いしたいのは、人権侵害というものが具体的にどういう形で起きているのかというのを是非ともつかんでいただきたいと思うんですね。法務省の人権擁護局の方に相談に来た件数とかいうことだけではなくて、こういったことは残念ながら法務省はつかんでいないんですね。それで、被害者を救済するんですから、その結果、そういった人権侵害事案に対してどんな被害が起きているのかということをしっかりと認定することが大事です。私はこんな被害を受けましたと言われたら、言われるままではなくて、実際それが本当に被害なのかどうかも含めてやっぱり調べる必要があるのではないか。是非ともこの法を制定すべきだというふうに私は思いますけれども、是非ともそういった人権侵害の実態を法務省としてつかんでいただきたい、実態把握をしていただきたいというように思いますけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(鳩山邦夫君) それは、今松岡先生のおっしゃるような方向で努力をさせます。

○松岡徹君 それで、問題は、次は救済なんですね。どうしたら救済できるか。
 例えば、大臣、ハンセン病元患者の人たちが求めている基本法あるいは障害者団体が求めている障害者差別禁止法、これ御存じだというふうに思っています。そこにも、ハンセン病元回復者の人たちが求めている、基本法を求める請願とか今署名活動されています。その中にもハンセン病元患者あるいはそういった病気に対する世間の偏見とか差別というものがあるというふうに具体的に言っていますね。それらをなくしてほしいということが基本法制定要求の中に彼らの要求として出ています。私は、しっかりとその辺の部分も実態、まさに人権侵害の事実としてつかんでいただきたい、実態把握していただきたいというふうに思うんですね。
 すなわち、例えば黒川温泉の宿泊拒否という問題ありましたですね。菊池恵楓園というハンセン病療養所の、熊本にあります菊池恵楓園という、入所者といいますかハンセン病元患者の人たちが黒川温泉に宿泊を申し込みました。しかし、その黒川温泉のある施設は宿泊を拒否しました。それは、ハンセン病元患者ということで拒否されたんですね。彼らの理由は、この間の日教組のプリンスホテルのあれではないですけれども、ほかのお客さんに迷惑を掛ける、だから断ったと。これは人権侵害に当たるかどうかなんですよ、ハンセン病元患者に対する。これ当たると思いますか。私は人権侵害に当たるんではないかというふうに思いますよ。ただ、なぜそんなようなことを起こすのかというのは、黒川温泉のあの宿泊の施設の人たちがハンセン病問題についての認識が非常に弱かったということが背景にあろうかと思いますが、救済の仕方、こういった人たちをどういうふうに救済するのかということになります。
 ちなみに、もう申し上げますが、時間もございませんので、こういう私人間の救済の仕方をどうすればいいのかというのと、もう一つは、今日も出ていましたけれども、鹿児島の志布志事件で新聞記事ありました、送っていただきましたけれども、接見内容の聴取は違法だというふうに判決が出ました。すなわち、弁護士と接見している内容を調書にしてしまう、聞き取って、ということは違法だと。個人の権利を、憲法に書かれている権利を侵害していると。これ公権力が行っているものなんですが、これも人権侵害に当たるかどうか、大臣、見解をお聞かせいただきたい。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 後者の方は、いわゆる国賠訴訟という形で一人一千百万請求したところ五十万支払という形で、あれは国と県と両方でしょうか、接見交通を妨害したようなものですね、接見交通した内容を聞き出して調書にしたわけですから、それは被疑者、被告人には接見交通の権利があるわけですから、それを不当に侵したということで国家賠償でそういう結果が出たというわけで、これは人権侵害というか裁判でそういうもう結論が出た事案だと思います。
 ハンセン病の方々が、元の患者の方々が言わばハンセン病問題の基本法の制定をしてくれと、あるいは障害者団体の方々も障害者差別禁止法の制定をという運動をされておられます。これらの方々に対する差別は、疾病あるいは元の疾病かもしれませんね、あるいは障害に基づく差別ですから、重大な人権侵害だと法務省ではとらえるわけでございまして、先ほどの黒川温泉ホテルは完全な人権侵害を行ったという認識でございます。

○松岡徹君 時間が来てしまいました。大臣の率直な答弁に感謝申し上げたいと思います。
 日本における人権侵害、後で徳島の刑務所問題も若干大臣の見解も聞こうと思ったんですが、また是非、次の機会にさせていただきたいと思っています。私は、これもある種の人権侵害ではないかというふうに思ったりしています。
 最後に、人権擁護法といいますか、名称はどうなるか知りませんが、こういった法律が一日も早く制定されるべきだと、そのためのしっかりと議論をした方がいいと思いますが、その制定へ向けた最後に大臣の決意といいますか考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(鳩山邦夫君) 人権擁護法は、議員立法でなくて閣法という形で法務省が用意をした、それがけんけんがくがくの議論の中で、特に与党内の議論がまとまらない、場合によっては相当激しい感情的な対立まで生んで廃案になった、再び提出しようかという機運が盛り上がったときも同様であったと、こういうことでございまして、私は、だから同じことを繰り返してはいけないし、今、太田誠一さんの調査会で自民党でもまさにかんかんがくがくの議論が続いていることは知っておりますので、私はその会の最初のときに行きまして、前に出した人権擁護法、閣法の人権擁護法案を基にすればまた同じような議論になるから、みんなで知恵を出し合って、人権擁護法のときに賛成した方も反対した方もみんなで一緒に知恵を出し合って、これならいいというものを白紙から作り上げていいものを作ってくださいよと、こういうふうにお話をしたので、その気持ちは今も変わりません。

○松岡徹君 終わります。

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