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2009年4月23日 (木) 更新

[発言録] 取調べ可視化法案について法案発議者として趣旨説明と答弁

2009年4月23日
参議院法務委員会

○委員長(澤雄二君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 発議者松岡徹君から趣旨説明を聴取いたします。松岡徹君。

○松岡徹君 私は、発議者を代表いたしまして、ただいま議題となりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案、いわゆる取調べ可視化法案について、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。
 我が国の刑事司法の目的は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の尊重を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することにあります。このように、我が国の刑事司法が適正手続の保障の下での事案の真相解明を使命とする以上、被疑者の取調べが適正を欠くことがあってはならず、それを防止するための方策が必要であるとともに、また、被告人は訴訟の当事者として十分な防御の機会が保障されなければなりません。
 刑事訴訟法は、当事者主義の下、被告人と検察官とを対等に取り扱っておりますが、現実は、真相解明についての両者の力量には格段の差があります。特に捜査段階では、被疑者は取調べの対象とされ、また自白は証拠の王とも言われて、ともすれば自白偏重に走りがちであります。密室での取調べでは、威迫的あるいは誘導的な取調べを受けて真実と異なる供述がなされる場合もしばしば見られるところであり、公判において供述調書の任意性をめぐって長期間の裁判が繰り広げられていることも少なくありません。
 近時、冤罪とされる事件が続発しております。代表的な事件として富山の氷見事件、鹿児島の志布志事件、佐賀の北方事件等が挙げられます。特に前二者については、異例なことではありますが、最高検察庁も「いわゆる氷見事件及び志布志事件における捜査・公判活動の問題点等について」と題する検証報告書を明らかにしました。この報告書の中では最高検察庁は、志布志事件の判決が自白成立の過程で追及的、威圧的な取調べがあったことをうかがわせると指摘したことを受け、検察官としては、自らが適正な取調べに努めることはもとより、警察における取調べの状況をも的確に把握し、後の公判において取調べの適正に疑問を抱かれることのないよう努めなければならないとしています。こうした冤罪を防止する観点から、適正な取調べの担保を確保する意味で、本法案が目指す取調べの全過程の録音、録画による可視化は大きな意味を持ちます。
 また、間もなく開始される裁判員制度においても、取調べの適正化は極めて重要であり、一般国民である裁判員の前に事実に反する自白調書が提出されないよう細心の注意を払う必要があります。自白調書の任意性、信用性が争われることになれば、到底三日から五日の審理では決着が付かず、十日、二十日と裁判員を拘束することにもなりかねません。裁判員制度の開始を目前に控える今こそ、是非この取調べの全過程の録音、録画による可視化を実現する必要があります。
 取調べにおける捜査の必要性との調整も必要でありますが、取調べにおける可視化は、無実の者を誤って処罰することほど重大な不正義はないとの刑事訴訟の要請に合致し、時代の要請でもあり、強大な権力である検察・警察権の行使を適正化する必要な制度改革であります。
 検察、警察は取調べの一部分の録画をスタートさせたとしていますが、供述調書の読み聞かせと署名の部分だけの録画では、それまでの取調べが実際にどのようになされたかは明らかにならず、かえって裁判員等に誤った印象を与えることにもなりかねません。
 この法案は、このような状況にかんがみ、被疑者の取調べ等の全過程について録音、録画を義務付ける制度を導入するとともに、被告人と検察官との間の実質的な平等を確保し、実体的真実を追求するためには証拠の隠ぺいを許すべきでないとの趣旨から、公判前整理手続において検察官の手持ち証拠の開示に向けたすべての証拠の標目の一覧表の開示を求めるものであります。
 以下、法案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一は、被疑者の供述及び取調べの状況等の録音、録画を行うことであります。
 被疑者の取調べ等に際しては、被疑者の供述及び取調べの状況のすべてを映像及び音声を同時に記録することができる記録媒体に記録しなければならないものとすることとしております。また、取調べ状況等の録音、録画の義務規定に違反してなされた取調べにおいて作成された自白調書等は、証拠とすることができないものとすることとしております。
 第二は、公判前整理手続において、検察官の手持ち証拠の開示に向けたすべての証拠の標目の一覧表の開示を行うことであります。
 既に公判前整理手続においては証拠開示の方法が定められておりますが、被告人側は、そもそも検察官がどのような証拠を有しているのか分かっておりません。実体的真実を解明するためには有利不利を問わず明らかにされるべきものであり、その前提として証拠の標目の一覧表の作成並びにその開示をすることとしております。
 以上がこの法案の趣旨及び内容であります。
 本法案は、既に昨年六月に参議院で可決され衆議院に送付後審査未了により廃案となった法案と同一の内容のものであります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決、成立させるようお願い申し上げます。

○委員長(澤雄二君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○松浦大悟君 民主党の松浦大悟です。
 いよいよ来月から裁判員制度が始まろうとしております。
 法社会学者の河合幹雄さんの取材によりますと、この裁判員制度というのは、九〇年代から法曹三者の間で静かに準備されてきました。刑事訴訟法六十周年の今年、いよいよその司法の大改革が行われようとしております。もしこれが成功すれば、司法の近代化のみならず、私たちの社会の在り方が大きく変わるだろうというふうに思います。この社会は私たち一人一人が支えているのだという自覚が国民の間に芽生え、民主主義の強化につながると私も大きく期待をしているところでございます。
 ただ、この裁判員制度をうまく機能させるためには、その周りに幾つものサブシステムを適切に配置をしなければならないというふうに考えます。サブシステムというのは、証拠リストの開示であったり、代用監獄制度の廃止であったり、あるいは透明な公判前整理手続、法学リテラシー教育などです。そして、取調べの可視化もその一つだと私は考えています。実際、諸外国では、そのようにサブシステムをうまく組み合わせてうまく機能をさせているという現状がございます。
 そこで今日は、まず森法務大臣と米田刑事局長に、それぞれお二人に伺いたいと思います。
 法務省と警察庁はこの取調べの全面可視化につきまして極めて消極的でございますが、それはなぜなのでしょうか。国民からの要求も高く、この裁判員制度をうまく回すために、もし全面可視化ということになれば物すごくいい制度になるにもかかわらず、これに対して消極的である理由をお聞かせください。

○国務大臣(森英介君) 取調べの録音、録画等を始めとする取調べの在り方について考えるに当たりましては、捜査の適正の確保とともに、治安を維持改善し国民の安全、安心を確保するという刑事司法に課せられた本来の使命を適切に果たすためにどのような方策があり得るのかということを、我が国における刑事手続全体の在り方を踏まえた多角的な観点からの検討が必要不可欠であろうと考えております。
 まず、我が国の刑事司法手続においては、諸外国で認められているような刑事免責ですとか司法取引あるいは通信傍受といった強力な捜査手段が認められていないという状況でございまして、そうした中での被疑者の取調べは事案の真相を解明するため不可欠な捜査手法でございます。裁判において客観的な事実を追求し発見しようとする立場を取る我が国の刑事司法の下で、極めて重要な役割を果たしているということが言えると考えます。
 そして、被疑者の取調べの全面的な録音、録画を義務付けることにつきましては、これは再々申し上げていることでございますけれども、被疑者に供述をためらわせる要因となるとともに、関係者のプライバシーにかかわることを話題とすることが困難になるなど、そうしたことの結果、取調べの機能を損ない真相を十分に解明し得なくなるという重大な問題があると考えております。そうなりましたら、裁判において真実を追求する以前に、真相が解明できないために検挙や起訴そのものを断念せざるを得ない事例が多々生じ、真犯人を野放しにして治安に悪影響を及ぼすおそれが生じかねないと考えるところでございます。
 このように、この問題を考えるに当たっては、捜査の適正の確保とともに、治安を維持改善し国民の安全、安心を確保するという使命を適切に果たすという観点も十分に考慮しなければならないので、取調べの全過程の録音、録画の義務付けには様々な観点から慎重な対応が必要であると申し上げております。
 もとより、取調べを含む捜査が適正に行われなければならないことは当然でありまして、捜査の適正の確保もおろそかにしてはならないと考えております。捜査機関においては従来から取調べの適正の確保に努めてきたところであり、最近においても、被疑者の取調べの適正確保のため、逮捕、勾留等の被疑者と弁護人等の間の接見に対する一層の配慮をすることなど、種々の措置を講じているところでございます。
 取調べの適正は、種々の問題がある録音、録画の義務付けによらなくても、捜査機関において現に取っているこれらの取調べの機能を損なう危険のない方法で確保し得ると考えております。

○政府参考人(米田壯君) 犯罪の捜査の遂行は、基本的人権を尊重しつつも、刑事事件の真相が正しく解明され、国民の安全と安心が確保されるという仕組みであることが重要であると考えております。そういうことからいたしますと、取調べの全過程を録音、録画することを義務付けることにつきましては、事件の真相解明に重要な役割を担っている取調べの機能に大きな影響を及ぼし、事案の真相を十分に解明することを困難にし、犯罪の検挙活動に支障を及ぼすおそれが大きいということから適当ではないと考えております。
 なお、これにつきましては、司法制度改革審議会の意見書におきましても、刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であるとされているところでございまして、警察といたしましても様々な観点から慎重な検討が必要であると考えております。
 なお、取調べの適正化については、警察におきましては取調べ適正化施策を策定をいたしまして、本年四月一日から監督制度を中心とする適正化施策を全面施行をしております。また、裁判員裁判に対応するためには様々な工夫をしておりますが、その一環として取調べの録音、録画の試行を昨年九月から開始し、これも四月一日から全都道府県警察に拡大して実施をしているところでございます。

○松浦大悟君 昨日質問取りに若い官僚の方が来られて、米田さんと同じことをおっしゃっていました。現在一部の可視化が行われていて、何のトラブルもないんだからこれで十分なのだという御説明でございました。しかし、私、これ違うと思います。
 例えば、ジーパンの後ろのポケットに穴が空いていたとして、その穴から財布が落ちそうになっているとします。穴が空いているので、あなた財布落ちそうですよというふうに指摘をする、いやいや、私は今まで財布落ちたことないからこれで十分なのですというふうに言っているように私には聞こえるわけですね。穴が空いているんだから縫えばいいじゃないですか。せっかく国民の皆さんがこの全面可視化をやれば安心して裁判員制度に参加できると言っているのだから、警察庁も取調べの在り方変えればいいじゃないですか。なぜ国民のこうした要求を聞かないんでしょうか。国民の足を引っ張る警察庁は私は要らないというふうに言いたいと思います。
 刑事裁判では、百人の罪人を放免するとも一人の無辜の民を刑するなかれという推定無罪の原則が採用されております。しかし、取調べの全面可視化に反対している警察の皆さんの主張を聞いていますと、過って無辜を一人たりとも処罰してはならないというのはあくまで理想であって、少々のことには目をつぶってでもホシを挙げるということを優先しているように私には見えて仕方がありません。
 そこで、法案提出者に伺います。
 刑法の推定無罪の原則を踏まえて、なぜ取調べの全面可視化が必要なのか、改めて教えてください。

○前川清成君 おはようございます。
 可視化に関しては、私たちは二つの意味で必要だろうと思っています。一つは、今ありましたが、冤罪をなくすというために必要、もう一つは裁判員制度の基礎的な前提条件として必要だと考えています。
 お尋ねの無罪推定の関係を申し上げれば、被疑者は、当然のことですけれども、真犯人と確定したわけではありませんので、世界人権宣言等において無罪と、こう推定されるわけです。しかしながら、捜査段階においては、捜査官の皆さん方が仕事に熱心な余り、あるいは被害者や世論の厳しい処罰感情であったり、あるいは捜査官本人が大変凄惨な犯罪現場に赴いたなどから、時として非常に厳しく被疑者と向かい合って、あるいは無理やりに自白を獲得しようとするということが往々にしてあるわけであります。しかし、その無理やりに獲得した証拠、強引に獲得した証拠というのは、免田事件始め四件の確定死刑囚の無罪事件などが教えるように、真実ではありません。真実でない自白に基づいて裁判がなされてしまったならば、冤罪を生み出すことになります。
 この点で、私たちの国の刑事訴訟法は、必罰主義ではなくて、様々な基本的人権を守りながら刑事裁判を遂行していくというデュープロセスの考え方に立って、憲法の中にも数多くの刑事訴訟に関する基本的人権が盛り込まれています。この基本的な人権が守られていたならば冤罪は当然発生しないはずでありますけれども、先ほど発議者の松岡委員からも説明がありましたが、氷見事件など、近時においても様々な冤罪事件、とりわけ無理やりに自白を獲得しようとしたために発生した事件が起こっています。
 ですから、私たちは、この無罪推定の原則を更に推し進めて、そして冤罪をなくすために、この憲法の規定から更に一歩前へ行って、そして世界水準である可視化を導入することによって私たちの国から冤罪事件を根絶したいと、こんなふうに考えているところでございます。

○松浦大悟君 引き続いて伺いたいと思いますが、取調べの全面可視化を実施することによって自白率が下がるということはあり得るのでしょうか。既に行われているイギリス、オーストラリアの実情はどうなんでしょうか。教えてください。

○松野信夫君 私どもの方でいろいろ諸外国の事例も検討させていただきました。諸外国では、取調べの全面的な録音、録画をしているところ、あるいは取調べの弁護人立会いを認めているところ、これは諸外国でも様々でございますが、私どもが調べた限りにおいては、そういうような録画、録音することによってしゃべらなくなったとか、あるいは自白が得られなくなったとか、そういうようなことでは決してないというふうに聞いております。
 今委員が御指摘されたイギリスとかオーストラリアでも、取調べの全過程は録音、録画が既に実施をされているわけですが、例えばそういうような自白率が下がったというような報告は聞いておりませんし、むしろ逆に、それまでは警察あるいは検察で不当な取調べが行われていたのではないかというような非難、攻撃がなされた場合もありましたけれども、近時はそういうような取調べに対する非難、そういうものが減ってきていると、こういうことでございます。

○松浦大悟君 お話を伺えば伺うほど、全面可視化はいいこと尽くしというふうに聞こえて仕方ありません。
 さて、国民の皆さんは、もし冤罪になれば自分に責任を取ることはできるだろうかと心配をされております。
 四月の二十一日のNHKの報道で、千葉大学の松村良之教授の研究が紹介されておりました。松村教授のグループが不安と裁判員への参加意欲との関係について調査をしたところ、不安が強い人ほど裁判員になりたくないと回答し、参加への拒否感が強いことが分かりました。つまり、国民の中には、裁判員制度は本当に制度として公正さを担保できているのかという漠然とした不安があるのだというふうに思います。
 そこで、法案提出者の皆様に伺います。
 私は、国民が安心して裁判員制度に参加するためにはその不安を取り除く必要があるだろうというふうに考えます。取調べの全面可視化は国民の皆さんの不安を取り除くことにつながりますか。

○前川清成君 可視化によって裁判員に関するすべての国民の皆さん方の不安を取り除けるものではないと思います。
 一昨日、和歌山のカレー事件の最高裁判決がございました。これによって、ここ数日は、裁判員の皆さん方が死刑判決を下さなければならない、このことに関する不安が指摘されております。そのほかにも、裁判員に関して、法律的な知識は大丈夫だろうかとか、あるいは事実認定ができるだろうかと、様々な不安もあると思います。
 ただ、裁判員の皆さん方にとって実際上も大きな不安になるのは、供述調書の任意性が争われた場合ではないかなと思います。その供述者が作るのではなくて、捜査官の方が一人称でお作りになると。ですから、字面としては理路整然としておりますし、また、ほかの関係証拠との関係も整理されている。その供述調書が任意になされたものであるのかないのか、これを後日、その書面を見て、あるいは関係者の話を聞いて判断するということは、それまで裁判員になったほとんどの皆さん方は任意性という言葉さえお聞きになったことがないのでしょうから、大変難しい問題があると思います。
 この点で、その取調べの状況というのがビデオに録音、録画されていたならば、その取調べ状況を再生することによって立ち所に任意になされた供述かどうか、これを判断することができますので、その意味においては、可視化は裁判員の皆さん方の不安を一つ取り除くことができると思います。
 なお、この機会に少し付言をさせていただきたいんですが、任意性については、裁判員の皆さん方だけではなく、プロの皆さん方、裁判官の皆さん方も実はそんなにたやすく判断できていた課題ではありません。
 多くの事件では、任意性が争いになった場合に、裁判所が任意性に関する判断を避けて信用性のところで落とすというようなこともよくありましたし、大変有名な論文で、平野龍一先生、刑事訴訟法を勉強する方々は多くがこの方の教科書をテキストにされたと思いますが、平野先生が昭和六十年にお出しになった「現行刑事訴訟の診断」、これは、最後に、我が国の刑事司法はかなり絶望的であると、こう結論付けている論文でありますけれども、その中で、裁判官が自室で見抜く眼力、つまりは調書の任意性を見抜く眼力を持っていると裁判官が考えるのは自信過剰であると、ここまで言い切っておられます。ですから、私は、これは、裁判官の皆さん方も実は可視化については歓迎をされているのではないかなと。
 ちょっと時間をいただいて申し上げれば、米田さんやあるいは森法務大臣は可視化について反対だと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、現場の捜査官の皆さん方、警察官やあるいは検察官の皆さん方、実はこの可視化を私は歓迎されているのではないかと、そう思っています。
 なぜならば、日本の警察官の皆さん方、検察官の皆さん方、ほとんどの方々は一生懸命お仕事をされている。森法務大臣じゃありませんが、法と正義に照らして適正な捜査をしておられる。ですから、ほとんどの警察官の皆さんや検察官の皆さん方にとっては、可視化があったとしても何ら困るところはないはずであります。エリートの皆さん方が可視化は反対だ反対だと、こうおっしゃるのは、私は現場の捜査官に対する信頼という点でいささか疑問に思っているところでございます。
 以上です。

○松浦大悟君 森大臣、事件は現場で起きているんです。是非現場の声を聞いていただきたい、そういうふうに思います。
 さて、取調べの可視化は、私は裁判員制度とセットで行わなくてはならないと常々思っておりました。なぜなら、この取調べの可視化というのは、裁判員制度をうまく回すための一つのサブシステムであるというふうに私はとらえているからです。しかし、今回の法案では、この裁判員制度の開始に試行が間に合いません。本来なら同時にスタートさせるべきだったというふうに思いますが、この試行の時期についてはどのようにお考えでしょうか、法案提出者に伺います。

○松岡徹君 御指摘のとおりでありまして、この法案では、公布の日から六月以内に証拠の一覧の開示については実施していくと。重大事件の取調べの録音、録画については一年六月以内、そして、その他の事件については三年以内にそれぞれ政令で定めるというふうになっています。
 来月の二十一日にはもう裁判員制度がスタートしますので、実質間に合わないということでありますが、私たちは、一昨年の十二月に今回の法律と同様のものを提出をさせていただいて、昨年の六月に参議院では可決、成立をさせていただいています。そのときの思いを、実は今年から始まります裁判員制度に何とか間に合わせたいという思いでありましたが、残念ながらこういう結果になってしまったわけでありますが、今委員御指摘のように、非常に大事な制度だと私たちも考えておりまして、政府としても、その趣旨を踏まえて、法律の施行を待たずにできるところから、特に重大事件等々はできるところから全過程の録画、録音を実施することになってほしいというふうに期待をしているところであります。

○松浦大悟君 次に、現在行われています取調べの一部可視化についてお伺いをいたします。
 警察の皆さんが主張する取調べの一部可視化では、私は自白が強要されたものであるかどうかということを事後的に検証することはできないというふうに思っております。メディアリテラシー研究によりますと、映像は幾らでもうそをつくとされています。
 例えば、皆さん、イラク戦争のときのニュース映像を思い出していただきたいと思います。例えば、イラク戦争でバグダッドが陥落したときのニュース映像を皆さん覚えていらっしゃるでしょうか。イラク国民が公園でフセインの銅像を引き倒して歓喜している場面が流れました。ところが、後日、公園全体を映した映像が公開されたところ、銅像の先にはロープが付いていて、アメリカ軍の戦車が引き倒したものだということが分かりました。フセインの圧政に苦しんだ市民が自発的にフセイン像を倒したのではなくて、アメリカによるやらせ映像だったということが分かったわけです。
 映像は幾らでもこのようにうそをつくことができます。どの部分を選択するかで全く違ったメッセージになってしまうと。こうしたメディアリテラシー研究を踏まえて、各国では取調べのカメラの台数を増やすなど、様々な工夫をしております。私は、こうした映像の特性を考えれば、一部可視化は言語道断だというふうに思いますが、法案提出者の皆様はこの一部可視化についてはどのように考えていらっしゃいますか。

○松岡徹君 メディアリテラシーの問題は昨今大変重要な問題になっておりますが、今回の私たちが提案をしている法案は、すべての場面を可視化するということであります。検察の方では既に一部録音、録画を実施しているということでありますけれども、まさに編集が故意に編集されるという可能性があるわけでありまして、この法案の中にもそういったことを防止するような条項を設けておりますが、警察、検察がもう既に行っている一部の録画、録音というのは、結局、被疑者に自白後に供述調書を読み聞かせるところ、あるいは確認する場面とか、その動機を尋ねるところでありまして、それで十分だというふうにおっしゃっていますけれども、むしろ問題は、その供述に至るまでの取調べの内容が問題なわけでありまして、逆に、裏返して言えば、そこまで検察、警察が取調べで自白を、供述調書を取ったと、それの証明をして、署名をしている場面を録画するならば、そこまで自信のある結果を録画、録音するならば、その前のすべての取調べも録音すればいいだけの話でありまして、そういう意味では、私たちは一部の録画、録音というのはまさにこの趣旨に合わないというふうに思っております。
 ちなみに、メディアの、言うところのメディアリテラシーという部分では多少今回の録画、録音の趣旨とは違うかと思いますが、そういう疑いといいますか懸念が生じる以上は、すべての場面を録画、録音するべきだという立場に立っております。

○松浦大悟君 一部の切り取られた映像というのは、確かに現実を映しているかもしれないが、それは真実ではないということを強調しておきたいというふうに思います。
 次に、裁判の長期化の大きな要因に自白の任意性の争いがあると思います。これは全面可視化によりかなり改善されるのではないかというふうに私は考えますが、法案提出者の皆さんはどのように思われるでしょうか。
 逆に、検察や警察で進められている一部可視化ではどのようになるというふうにお考えでしょうか。
 以前、テレビ番組で行われた実験がございます。その実験では、一部の可視化では、一般国民はその自白が正しいのか無理やり自白をさせられたのか見分けが付かないという結果が出ておりました。一部の可視化では逆に私は裁判が長期化してしまうのではないかというふうにおそれを抱いていますが、法案提出者の皆様の御意見を伺わせてください。

○松野信夫君 委員からとてもいい指摘がありまして、私も委員と同様の認識を持っております。
 我が国の刑事裁判というものは、密室での取調べ、そしてその結果得られる自白調書、これに大変依存をしているわけでありまして、そうすると、その供述調書が作成された過程が果たしてどのようなものであったか、本当に任意に自発的に発言がされたのか、取調べがどうなされたか、これが時として裁判の大きなテーマになって、何人もの取調べ官が法廷に呼ばれては証人尋問を受ける、それが裁判長期化の非常に大きな要因になっていたわけであります。
 我々が主張するこの取調べの全面的な可視化をすることによって、一つには、そういう不当な取調べを抑止するという効果が期待できるわけでありますし、またもう一つには、何人もの証人を裁判所に呼んで取調べがどうだったかというものをやる必要がない。ビデオできちんと確認をすれば、ある意味では立ち所に取調べの様子が分かるわけでありますので、長期化を防ぐ非常に大きな要因になるだろうと思っております。
 それから、一部の可視化ではどうかということでありますが、現在行われている一部の可視化というものは、まさに自白をした部分、供述調書読み聞かせの部分、ここだけをビデオ録画するということでありますので、それまで実際にはどういう取調べをしていたのか、肝心なところが抜け落ちるわけであります。かなり厳しい追及的、威迫的な取調べをして、それで完全にもう何を言っても聞いてもらえない、結局迎合的な形になってしまって、その迎合したところだけ取るということになるとやっぱり任意性が争われる、任意性が争われると取調べ官を次から次に証人尋問しなきゃいけないと、こういうことで、一部ではかえって裁判の長期化を招きかねない、このように考えております。

○松浦大悟君 これまで密室での捜査の在り方には様々な批判があったわけでございますが、もし全面可視化が実施されたならば、警察官もこれまでの取調べの方法と意識を変えなければならなくなるでしょうか。その点はどうでしょう。

○前川清成君 前回の法務委員会で少し、私、米田刑事局長と議論をさせていただいたんですが、そもそも、可視化を待たずとも、裁判員制度がスタートすることによって警察の捜査の在り方というのは大きく変わらざるを得ないのではないかと、私はそう思っています。
 司法制度改革の一環として裁判員制度がスタートいたしまして、三人の職業裁判官とともに六人の裁判員の皆さん方が刑事裁判を担っていただくわけですけれども、この裁判員の皆さん方に、今までのように、何百ページあるいは何千ページという供述調書を御自宅に持って帰っていただいて、そして裁判官のようにそれを読み込んでまた裁判に臨むということは事実上不可能です。ですから、裁判員裁判のその場所で目で見て分かり、耳で聞いて分かる、そういうような立証をしなければならなくなります。
 捜査というのはもちろん刑事裁判を前提としてあるわけですから、目で見て分かる、耳で聞いて分かる立証手段を考えて捜査も進むわけで、そういう意味からしますと、膨大な調書を作ったところで、結局は刑事裁判の役に立たないというか、刑事裁判に提出することができないわけでありますので、是非警察やあるいは検察庁においてもその点を御認識をいただいて、より分かりやすい捜査の在り方、要するに、密室で被疑者と向かい合って、そして延々と一人称の供述調書、物語風の供述調書を作ってそれを裁判所に出すという今までのやり方では裁判員制度が維持できないということを是非御理解をいただいて制度の改革等にお努めいただきたい、こんなふうに思っています。

○松浦大悟君 私は裁判員制度を成功させたい、だから警察の皆さんにも変わってもらいたいと思います。私たちと一緒に公正な取調べの方法を目指して頑張りましょう。
 以上です。

○松村龍二君 自由民主党の松村でございます。
 本日、刑事訴訟法一部改正法案について質問をさせていただきます。
 私も、冤罪者が出てはいけないといった思いは人後に落ちないつもりでございます。その意味において、捜査当局において限りなく適正な捜査をやっていただきたいということを望むわけでございます。
 私は、ただいまの質問者と違う立場から質問をさせていただきます。
 取調べというのは、一つのやっぱり技術といいましょうか、一つの力が必要なわけですね。例えば、私が犯人に向かって、お名前は何とおっしゃいますかと、それで、何か殺人事件があったんだけれども、あなた犯人ですか、いや、そうじゃありません、ああそうですかということでは捜査にならないわけです。
 私は、過去、警察に勤めていたことがあるわけですが、今から二十年近く前になるんですが、県警本部長時代にこういう経験をいたしております。
 私が警察本部機関誌に、本部長とベテラン何とかが語る、ベテラン刑事十人、ベテラン婦人警察官十人、ベテラン麻薬捜査官十人というふうな催物をいたしまして、十人ほどの刑事を集めて座談会を始めますと、出席している刑事の一人が、本部長、刑事の喜びは何か知っていますかと、こういうふうに尋ねられたわけです。そこで、捜査で真犯人を検挙して結論が出ることかな、しかし喜びというのは何のことか知りませんというふうに申したところ、世間の耳目を引く重大事件で、被疑者が検挙されたがなかなか自供しない、取調べに当たる刑事の情理を尽くした取調べにかかわらず自供しない、また捜査陣の必死の組織捜査、物証を集める組織捜査と取調べに当たる刑事が努力を尽くした結果、ようやく被疑者が自供する、その後に、その自白を得た刑事が同僚の二人の刑事と別室でたばこを吹かし、ああ、この結果を知る者は取調べチームの我々二人だけだな、この瞬間、世間の方はだれも知らない、マスコミも知らない、警察本部長と上司のだれ一人事件の解決を知らない、このひとときが刑事の喜びですということを聞かされまして、私どもが日ごろある面から見ている実態と違う面をかいま見たような気がしたわけでございます。
 戦後の世間を揺るがす大事件がこのような努力で成果を見たことがあることは事実であるというふうに思います。
 そもそも、被疑者取調べを含む捜査や刑事司法制度の在り方は、犯罪捜査や社会情勢、これを支える国民感情、さらには捜査や刑事司法に対して国民が求めるものなどを踏まえて検討すべきものであり、これらが国ごとに異なるものである以上、捜査や刑事司法制度の在り方も国ごとに異なるのは当然であるというふうに思います。
 ちょっと話が飛びますが、近年、経済分野等について新自由主義ないしグローバリズムといった考え方、これが世界標準の自由主義であると。その世界標準の形成を志す向きもありましたけれども、最近ではこれを志向していた人の中からも見直そうとする機運が見られるところであり、まして、一般に国内的な側面の強い捜査や刑事司法制度の在り方については、各国の実情を十分に踏まえ、各国それぞれに特徴のあるものであってしかるべきものと考えます。その意味で、我が国の捜査や刑事司法制度は我が国の事情を適切に反映した我が国にふさわしいものであるべきであって、この点を忘れてはならないことを最初に指摘させていただきます。
 そして、そのような観点から見たとき、本法律案は被疑者の取調べの全過程について録音、録画を義務付けるものでありますが、我が国の刑事司法において取調べが極めて重要な役割を果たしていることが全く顧みられていないように思われますし、被疑者の人権を保障するとともに、事案の真相を踏まえて罰すべき者を正しく罰し、もって治安を維持して国民の安心、安全を守るという二つの要請を調和させ全うするという視点も欠いているのではないかというふうに思われます。
 被疑者を始めとする国民からの要請にこたえまして、事案の真相を解明するため、我が国の捜査における取調べでは、被疑者の身上、経歴や犯罪の動機、態様、結果等について詳細に聴取し、また被疑者に真実を供述させるために捜査官が粘り強い説得に努めている実態があります。
 そこで、まず法務当局にお尋ねいたしますが、我が国の刑事司法手続において、被疑者取調べや事案の真相を解明する上でどのような役割を果たしているか。特に、いわゆる可視化が進んでいると言われている外国との比較で法務当局に説明をお願いします。

○政府参考人(大野恒太郎君) 我が国の刑事司法におきましては、事案の真相を解明する上で取調べが非常に重要な役割を果たしているわけであります。真犯人を確実に検挙するという点ではもちろんのことでありますけれども、同時に、動機、態様、結果等の事情を十分に明らかにしないと適正な処分、科刑が実現しないわけであります。
 我が国におきましては、取調べ以外の捜査手段が諸外国に比べまして非常に限定的であります。したがいまして、物証等の客観的な証拠の収集あるいは関係者の取調べと並びまして、被疑者の取調べは大変重要な役割を果たしております。
 例えば、物証のない事件がございます。あるいは犯人だけが事件のかぎとなる重要な事実を知っている事件等では、被疑者から真実を聞き出さなければ真相を解明できない場合が少なくありません。また、組織犯罪におきましては、末端の実行犯から真実の供述を得なければ組織の実態を解明して首謀者を検挙することが困難であります。さらに、先ほども申し上げましたように、適正な量刑を実現するためには、犯行の動機、態様等につきまして被疑者から真実を聞き出さなければ解明できない場合が少なくないわけであります。
 そうしたことから、我が国におきましては真相を十分に解明するために詳細な取調べが行われております。その中では、真実の供述を得るための説得が行われますし、犯罪事実はもちろんのこと、身上、経歴や情状についても適正な量刑を得るために取調べが行われているわけであります。
 捜査機関は、令状主義の下で、被疑者の身柄拘束には特に慎重を期しているわけであります。その上で、合理的な疑いを超えて有罪の立証ができるという高度な確信が得られた場合に初めて起訴が行われるという運用がなされているわけでありますけれども、これを支えているのが取調べを中心とする綿密な捜査であるということになるわけでございます。
 翻りまして、諸外国はどうかということでございます。諸外国の中には、先ほど来御指摘がありますように、取調べの録音、録画等を義務付けている国もございます。
 その典型例として挙げられるのがイギリスでございますけれども、イギリスでは確かに警察拘禁中の被疑者の取調べについては原則として録音が義務付けられておりますけれども、イギリスの刑事司法制度の中では取調べが証拠収集の手段としては重視されておりません。実際、起訴されるまでの間、一回三十分程度の調べが行われることがあるにとどまるというように聞いております。また、取調べ以外の様々な強力な捜査手段がありまして、それによって証拠が得られるわけであります。さらに、言わばあっさりした捜査に基づいて、我が国に比べて緩やかな基準で起訴がなされておりますので、相当数の無罪事件があるということで、我が国と事情が大きく異なっているわけであります。
 仮に、我が国においてイギリスのようなあっさりとした捜査の下で、しかし現在のように起訴は慎重に行うということにいたしますと、起訴そのものを断念せざるを得ない事態が多々生じまして、真犯人を野放しにして治安に悪影響を及ぼすおそれを生じかねないわけであります。
 他方で、それほど真相の解明にこだわらずむしろあっさりとした捜査に基づき緩やかな基準で起訴を行うこととすればどうなるかということでありますが、その結果、それは裁判において無罪判決が頻発するというようなことにもなりかねないわけでありまして、これが我が国の国民が支持するとは考え難いところでございます。
 るる申し上げましたけれども、事案の真相を解明しつつ被疑者の人権保障を全うするためには、いろいろなバランスの中で各国の刑事司法が組み立てられているわけでありますけれども、我が国におきましては取調べの果たす役割は極めて大きいと申し上げるべきだというふうに考えております。我が国は外国と比較いたしましても被疑者の取調べが事案の真相を解明するために不可欠な役割を果たしていると申し上げたいと思います。

○松村龍二君 どうもありがとうございます。
 ただいまの答弁にありましたように、取調べは我が国の刑事司法制度において真相を解明するため極めて重要な役割を果たしております。そもそも、我が国の刑事司法制度において事案の真相を究明し真犯人を適正に処罰することが国民から強く求められると考えます。
 例えば、殺人事件を始めといたしまして、ある程度国民の耳目を集めるような事件が発生いたしますと、マスコミは事案の真相解明に強い関心を示すのが通常であると思われます。これは、多くの国民が、単に事案の真相解明に関心を寄せるというだけでなく、そのような事件を契機として社会や政治の在り方を変えていく必要があるかどうかを考える上で、なぜそのような事件が発生したのかを知りたいと考えているからであろうと思います。
 しかし、本法律案を見ますと、提案者は、被疑者を取り調べて真実の供述を得ること、端的に言えば、真犯人から自白を得ることの重要性をきちんと認識しているのか疑問に思います。
 仮に全面的な取調べの録音、録画が義務付けられますと、多くの者はマイクやカメラを向けられれば身構えてしまうのが普通であろうし、録音、録画を義務付けられれば、警戒心や、自分がやったこととはいえ恥ずべき犯罪について話すことについての羞恥心、報復の恐れへの恐怖感などから被疑者が供述をためらうこととなるのが容易に想像できるのであります。さらに、カメラを意識して、うそを言ったり演技をするような者も出てくると考えられます。
 特に、組織的な犯罪においては、組織からの報復を恐れて、被疑者は組織の関与や上位者に関する供述をためらうことになるおそれが特に大きいのであります。このような事案では取調べ官が時間を掛けて被疑者を説得し、まずは調書化を前提としないで真実を語らせるという段階を踏むことも必要となりますが、すべてが録音、録画されてしまっていてはそのような説得すら不可能になるものと思います。その意味で、調書には取調べ室で語られたことのすべてが記録されているわけではなく、被疑者が自らの供述として記録することに納得したものが記載されるものであります。
 同じように、我が国においては調書化を前提としない被疑者の供述に基づいて証拠を収集し真相究明を図る捜査手法も行われていると聞きますが、そうした手法も取り得なくなるわけであります。
 オウムの事件のときに、あの上九一色の一斉捜索、検挙、その前に地下鉄サリン事件が起きたと。地下鉄サリン事件の前に捕まったオウム真理教の被疑者が、自分たちがそのことにかかわっているということを述べたことによってあの事件の検挙に至ったというふうな話も本人の書いた本に書いてあるわけであります。
 全面的な録音、録画によりこうした弊害が生じれば、取調べにより悪質な犯罪者の関与を解明することができずに犯罪者が野放しとなり、被害者を始めとする多くの国民の声にこたえられなくなると。この法律は、結局のところ、国民の生活の安全を犠牲にするものではないかと思われます。
 提案者はこのような点についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

○松岡徹君 私たちの考え方は、この録画、録音を義務付けると取調べの機能が低下するとは考えておりません。国民の期待というのはまさに真実を明らかにすることであります。間違っても無辜の者を裁いてはならないという期待もあるというふうに思っています。
 適正な取調べによりまして適正に自白を得ることができなくなるということはおよそ考えられないというふうに思っております。現に、否認する被疑者も、客観的な証拠があれば起訴し有罪立証することもできるわけでありますし、更に言えば、録画、録音によって否認そのものの問題点がより明確になるということにも当然なるわけでありまして、録画、録音は真相を究明するに資するわけであるというふうに考えています。
 そのような正当な捜査の手法まで否定し、取調べの機能の低下とか、あるいは国民の声にこたえられないという決め付けは当たっていないのではないかというふうに思っています。捜査機関の側で適正な捜査をしようとする意欲がないことを逆に現わしているのではないかというふうに思っています。
 なお、自白を強要して無辜の者を起訴した場合、逆に言えば真犯人が野放しにされているわけでありますが、結局は治安の改善に寄与していないということを思い致すべきではないかというふうに思っています。このことは、犯罪の被害者との関係でも、真犯人を捕まえることができなかったということに不満を抱かせることになってしまうのではないかというふうに思っております。
 私たちとすれば、むしろこの可視化は捜査に資するし、あるいは国民の声にこたえることになるというふうに考えております。

○前川清成君 済みません、少し補足をさせていただきたいと思うんです。
 私たちは、取調べが重要でないとか、そんなことは一切考えておりません。先ほど例としてお示しになったように、捜査官が、おまえやったのか、いいえ、やっていません、ああそうですかと、これで捜査が終わるとも思っていません。御存じのとおり、捜査機関は二十三日間被疑者の身柄を拘束できるわけでありますから、その間で様々な説得があることも当然だろうと思っています。
 それと、捜査があたかも自白だけに依拠しているのかと。それは、実際、決してそんなことはないだろうと思います。御存じのとおり、自白だけであれば憲法の補強法則であって有罪とはできないわけでありますから、客観的な証拠も指し示した上で、あるいは状況証拠等も勘案した上で捜査がなされているというのが実態であろうかと思います。
 それと、もう一点申し上げたいのは、あたかも大野刑事局長は日本の捜査の在り方が特殊だかのごとくおっしゃいます。ある意味特殊な点はあろうかと思いますが、ただ、人類の文明の大きな流れ、大昔は拷問してでも真犯人をつかまえたらいい、それは日本だけではなく、ヨーロッパの国々でもイスラムの国々でも考えられていた。しかし、大きな流れとして、今はそうではないですよ、こうなってきているわけです。この点はきっと委員も御了解いただけると思います。
 そして、同じように、取調べ状況を可視化する、これも世界の大きな流れになっているわけでありますから、その大きな流れの中で、真相の解明とそれと基本的人権の保障、つまりは冤罪を出さない、このバランスを図るために捜査手法も変わらざるを得ないし御努力もいただかなければならない、この点も申し上げたいと思います。

○松村龍二君 民主党は、可視化は国際的な潮流であるという主張をしておられるようであります。しかし、そもそも、身柄拘束の有無を問わず、取調べの全過程の録音、録画を義務付けている国はごく一部の国にとどまり、決して世界の潮流であるなどとは言えないはずでありますが、その点は別といたしましても、そのような意見は諸外国と我が国との刑事司法の構造の違いを無視した乱暴な意見だと言わざるを得ないと思います。
 例えば、取調べの録音等が義務付けられている英国等では、強力な捜査手段が認められているとともに、我が国に比べて取調べの果たす役割が小さく、真相を供述するような説得は行われていないこと、最近に至って取調べの録音、録画を導入した韓国ではこれを義務付ける制度とはされていないことなど、各国ごとに事情が異なります。諸外国で導入されているから我が国に導入しても大丈夫だと単純に決め付けることはできないはずであります。
 そこで提案者にお尋ねしますが、まず、取調べの全過程の録音、録画が義務付けられている国においては、その制度の概要や運用の実情がどのようになっていて、録音、録画を含めて捜査が全体としてどのように行われているかについて説明をしていただきたいと思います。また、提案者はこうした我が国と外国との違いについてどのように考えているのか、お伺いします。

○松野信夫君 諸外国との比較ということで御質問をいただきました。
 我々も諸外国がどのような取調べをしているのか、調べさせていただいております。法務省の方からも資料を取り寄せて調べ、また、これ日弁連が非常に熱心に外国まで委員を派遣して調査をされておられまして、そういう調査結果なども十分に踏まえて今回の法案を作ったわけでございます。
 これは、詳しくは法務省の方が調査もしておられますが、取調べの全過程の録画、録音をしていて、また弁護人の立会いも認めているというのは、イギリスがそうであります。また、イタリアもそうであります。また、アメリカはいわゆるミランダ・ルールというものが定着しておりまして、弁護人が取調べに立ち会うということになっておりますし、また取調べの全過程の録画、録音、これはアラスカ州、イリノイ州などの州では実施をされているということでございます。そのほか、オーストラリアでも取調べの録画、録音と弁護人の立会いを認めている。韓国も、今委員が御指摘なされたように、既に実施がなされている、両者とも実施がなされている。ただ、韓国の場合は現時点ではまだ義務付けではなくて検察官の裁量と、そのレベルにとどまっているようではございます。
 ただ、こういうふうに、取調べの録画、録音とそれから取調べの弁護人の立会い、両方ともやられていないというのは残念ながら日本だけのようでございます。今申し上げたイギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、韓国、台湾等々調べてみますと、残念ながら今のところ日本だけが両者ともバツ、バツと、こういう結果になっているわけであります。
 確かに、取調べに対する重要度というものは、これは確かに各国とも様々でありましょうし、また、割合日本はこの取調べの重要度が高いということは委員も御指摘のとおりでございます。ただ、私はもう、やはり世界的な潮流、例えば何度も日本は国連の拷問禁止委員会とか人権規約委員会辺りから指摘も受けております。代用監獄をやめなさい、あるいは取調べの録画、録音をやりなさいと、こういうことを何度も指摘を受けている。これは歴然たる事実でありまして、それは、我が国は取調べが重要なんだからそんなのは無視していいんだと、そういうようなことにもやはりならないのではないか。
 それやこれや考えますと、私はやっぱり今は大きな転換点に立っているのではないかと。今までの密室での取調べ、その自白偏重、そして裁判では調書裁判、これは伝統的な我が国の刑事司法でずっとやってきたわけで、これに対する愛着というのはあろうかと思いますけど、その結果とんでもない事件が、例えば氷見事件、志布志事件、起きたわけでありまして、警察、検察庁もこれは十分に反省をして、検証報告書まで御用意をされているわけで、やっぱりそういうような、とんでもない密室での取調べで無罪事件が出るのをやっぱりもういいかげんにやめていかなければいけないと、こういう歴史的な転換点にも立っているし、また、何度も申し上げているように裁判員制度がいよいよ来月からスタートする、こういう時期においていまだに全面的な録画、録音もやらないというのではスムーズな裁判員裁判にも移行しないのではないか、このように考えているところです。

○松村龍二君 提案者の主張は、外国の制度のうち自分の考えに沿う一部だけを切り取って我が国に導入しようというものでありまして、これは、取調べの全過程の録音、録画を義務付けている国はごく一部であることや、刑事司法制度はそれぞれの国のシステム全体を踏まえるべきことを全く無視した主張であると言わないといけないと思います。そのような形で外国の制度を取り入れたところで、我が国の制度全体として有効に機能することは難しいと思います。
 ところで、検察では平成十八年から被疑者の取調べの録音、録画の試行を行い、検証結果を公表しておられます。この録音、録画は裁判員裁判対象事件における任意性立証のための有用性が確認されるなど成果も上げておりますが、一方で録音、録画が取調べに与える影響も浮き彫りにしているようであります。その概要について法務当局から説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(大野恒太郎君) 検察当局におきましては、これまで実施してまいりました検察官の取調べの録音、録画の試行の結果につきまして、本年二月、最高検察庁からその検証結果、試行結果を公表しているところであります。
 検証結果にもありますように、検察庁で試行した録音、録画につきましては、検察官にとって有利であるか不利であるかを問わず、自白の任意性等を刑事裁判になじみの薄い裁判員にも分かりやすく効果的、効率的に立証するために有用であるというような評価がなされております。短時間にその点についての判断をしていただくことができるということでございます。
 ただ、他方で、今委員が御指摘になりましたように、録音、録画をした場合にやはり取調べに支障を生ずる場面というようなことも報告されているところでございます。
 実際に録音、録画を実施しなかった事例といたしまして、暴力団組長の関与があったと思われる組織的な強盗事件、対立する暴力団との抗争事件、あるいは外国人による組織的薬物密輸事件などにおきまして、録音、録画を実施すると被疑者が報復を恐れて共犯者や組織的な背景に関する供述を拒むおそれがあると考えられる事案があったわけであります。また、外国人事件におきまして、通訳人がやはり被疑者に恨まれるのは困るというようなことで、録音、録画についての協力が得られなかったというような事案もあったとされております。それから、実際に検察官が録音、録画をするということを告げたのに対しまして、実施しようとしたのに対して、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、共犯者や暴力団等からの報復を恐れて被疑者がそれは拒否するという事案や、あるいは取調べを受けている惨めな姿を他人には見られたくないという理由で拒否する事案もあったと聞いております。
 また、録音、録画を実施した事案の中で、それまで自白していたものが否認に転じたり、あるいは供述内容が後退した事案もありました。そうした事案につきましては、その後の裁判をフォローしているわけでありますけれども、裁判におきましては変化する前の供述、録音、録画をする前の供述が真実に合致していたというような判断になっているところでございます。
 したがいまして、検察当局といたしましては、この検証結果の中で、録音、録画を実施した場合にやはり供述内容等に影響があり得るものが相当程度存在しているというように考えております。したがって、録音、録画が取調べの真相解明機能に影響を及ぼす場合はやはりあるのでありまして、その実施方法につきましては真相解明の観点から十分な慎重さを要するという認識を示しております。
 今年の四月以降、今申し上げたような検証結果を踏まえまして、裁判員裁判事件、裁判員裁判対象事件につきましては、自白をしていてこれが将来裁判で用いられることが見込まれる事件、原則としてその全件につきまして、取調べの真相解明機能を害しない範囲内で、取調べの相当と認められる部分の録音、録画を本格的に実施しているというように承知しているところでございます。

○松村龍二君 警察でも昨年から取調べの録音、録画の試行を開始したと聞いておりますが、その実施状況や検証の結果について警察当局から説明いただきたいと思います。

○政府参考人(米田壯君) 警察におきましては、裁判員裁判における自白の任意性の効果的、効率的な立証方策を検討するために、昨年の九月から録音、録画の試行を実施しております。これは、昨年九月から実施しておりますのは五つの都府県警察でございます。そして、開始後半年間の結果の検証をいたしたところであります。
 検証の結果を申し上げますと、試行に係る録音、録画の内容に関しまして、取調べ室の状況あるいは取調べ官の発問状況、被疑者の供述状況、表情、声の様子等が客観的に明らかになると認められたことから、今次試行に係るDVDについては自白の任意性の効果的、効率的な立証方策となり得るというように考えております。
 一方、被疑者が取調べの録音、録画を拒否する事例が警察においてもございました。それから、録音、録画により供述内容や供述態度に変化が生じた事例は相当な割合に上っております。したがいまして、取調べの真相解明機能に影響を及ぼす場合もこれはあるんであろうということも明らかになったところでございます。今後、実施に当たって録音、録画の方法等について十分に配慮するべきであると考えております。
 ただ、現在までのところ限られた都府県警察の限られた実施例でございまして、本年四月以降全都道府県警察に試行を拡大をしております。そのことによりまして試行を積み重ね、また公判においてこのDVDがどういうような活用のされ方をするかというようなことも踏まえまして、今後、裁判員裁判において自白の任意性の効果的、効率的な立証に資するにはいかなる方策が有効であるかということを多角的に検討してまいりたいと考えております。

○松村龍二君 ただいまの説明からも明らかなとおり、被疑者の中には録音、録画が行われることで供述内容を変える者もいるし、録音、録画を拒否する者も相当数いると考えられます。全面的な録音、録画について指摘される弊害は決して観念的、抽象的なものではなく、実施直後から間違いなく発生する現実なのであります。
 今回の法案では、被疑者の同意の有無にかかわらず取調べの録音、録画を行うこととされているが、提案者は、録音、録画を拒否する者の取調べは行わなくてもよいという考えなのか、もしそうであれば取調べを通じた真相解明を余りにもないがしろにする考え方であります。
 あるいは、提案者は、羞恥心等から録音、録画を拒否する被疑者についても録音、録画を強制するということか、被疑者が拒んだ場合もすべて録音、録画を強行するという趣旨であれば、被疑者に供述をためらわせるだけでなく、捜査機関に対する強い反発を招くこととなり、出頭拒否や供述拒否を招くこととならないかが危惧されます。
 加えて、組織犯罪の被疑者や性犯罪の被疑者等が録音、録画しなければ供述すると述べているような場合でも録音、録画しなければならないとするのは明らかに不合理ではありませんか。
 提案者はこの点をどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

○松岡徹君 先ほどの警察それぞれからありましたけれども、被疑者が供述を拒否する場合とか供述しなくなるのではないかという弊害があるんではないかというふうに言われていますけれども、例えばその中の理由に惨めな姿をさらしたくないとかいうようなことをおっしゃっていましたけれども、そんなことを言う前に自分が犯罪をしたことの方がもっと大事なんですが。
 要するに、被疑者が録画、録音されていれば証言したくないというそのもの自身が真実なのかどうか、本当に被疑者が拒否しているのかどうかというのが分かりません。そういう意味では、私たちは、先ほどもありましたように、例えば一部録画、今警察、検察で行っている一部録画のやり方も、先ほどの松浦委員の指摘がありましたように、その前の内容、その結果についての一部録画、録音でありますけれども、問題はその結果を導き出すまでの取調べがむしろ問題なのでありまして、我々とすればすべてを録画、録音するという立場に立っています。
 それは近年の冤罪事件や無実の事件が証明しておりますし、例えば志布志事件のあの威迫的な取調べがどうであったのか。あのことがもし今警察、検察が行っている一部録画、録音でしたら、あのような取調べの仕方は当然のように映っていないというふうに思うんですね。むしろ問題なのはその結論に至るまでの取調べになるわけですから、すべてを行うということが大事だと思います。
 あるいは最近の事件でも、例えば布川事件だと思いますが、ここで後で提出された録音テープというのがありまして、その録音テープの中に、出された証拠として自白のテープとして提出されたというふうに聞いていますが、しかしそれは実はそのテープが切り張りをしてあったということが認められて証拠として採用されなかったということも聞いております。
 むしろ、私たちは、拒否するかどうか、なぜ拒否しているのか、本当に拒否しているのかどうかというそのものも分かりません。すなわち、それも取調べの一部でありまして、すなわち取調べというそのものは公権力の行使でありますから、そういう意味では常に適切になされているかどうかという検証が必要になるわけでありまして、被疑者の個人的な思いだけで決められるものではないという立場に立っています。そういう意味で、必ず録画、録音を行うべきだというふうに思っております。

○松村龍二君 提案者は、捜査の実態として、組織犯罪等において被疑者である暴力団組員が暴力団組長の関与について供述した場合に組織から報復を受けないように調書化しないことが少なからずあることなどを全く無視しており、日本全国に対し、暴力団組員は暴力団組長の関与について供述しなくてもよい、あるいは暴力団組員が暴力団組長の関与について供述する以上、組織から報復を受けても仕方がないというメッセージを送るに等しいということを指摘いたします。
 それから、この法律案の内容をよく読みましたところ、被疑者又は弁護人は、取調べの状況を録音、録画の方法により記録された記録媒体を時間的、回数的な制約なく閲覧できる、又は複製を作成することができるという法律になっております。
 しかしながら、このように無制約に記録媒体を閲覧し、又は複製を作成できることとした場合、長時間にわたる取調べで被疑者が供述した一言一句をそのまま記録した記録媒体が、意図的であるか否かを問わず、被疑者又は弁護人の手元から第三者に漏出するおそれが大きく、一たびそのような事態となれば、被疑者の口から語られた被疑者あるいは被告人、被害者その他事件関係者や被疑者の周辺者のプライバシーにかかわる事項が広く世間の好奇の目にさらされるなどして、それらの者のプライバシーが著しく侵害されるなどの弊害があると懸念いたします。
 これがゆえなく漏出した場合には、懲役一年の刑又は百五十万円以下の罰金というものはありますけれども、御承知のとおりこのDVD等のあの媒体は複写が簡単にできる。インターネットを通じて外へ出してしまえば、もうだれがどう情報を漏らしたか分からない。ある人が、取調べの内容のみならず、刑事から取調べを受けていると、その部屋の景色が世間に漏れただけで大変な問題を含むと。そういう意味において、この法律はこの点において思慮が足りないということを御指摘いたします。
 それから、次は取調べの場所でありますけれども、本法律は警察官及び検察官が行うすべての取調べについて全面的な録音、録画を義務付けておりますが、特に発生直後の初期段階において事件捜査は流動的、発展的であり、捜査官としては機動的かつ柔軟に事案に対処することが求められていると思われます。本法律がこのような捜査の実態を十分に理解していないのではないかと。
 まず、被疑者の取調べというのが警察等の専用の取調べ室の中だけで行われるのか、警察当局にお伺いします。

○政府参考人(米田壯君) 被疑者の取調べはもちろん取調べ室の中で行われることもございますし、例えば人質事件とか誘拐事件とかといった場合、被害者の生命、身体への危険が急迫しており、被疑者をその現場で押さえて必要なことを聞き出して、それを基にまたその仲間を検挙するというようなこともございますので、その場合はどこの場所かということはもう全く、大変広い範囲になるということでございます。
 それから、被疑者側の事情あるいは秘密の保持ということを考慮いたしまして相手側の自宅の方に出向いて取調べをする、あるいは相手側が指定をしたホテルの一室で取調べをするというようなこともあるところでございます。
 それから、屋外において何か犯罪が発生した場合に、取りあえず例えばパトカーの中あるいは場合によっては路上、そういったところでその取調べを行うということもございます。
 それから、多数の被疑者が絡みますと、例えば大規模なけんかのような場合でありますと、それを警察署にその関係者を連れてくると。そこで、その取調べをするのに個室である取調べ室は到底それは足りないということになりますと、それは大きな大部屋の中でそれぞれ簡単な事情聴取をするというようなこともございます。
 そういったことで、取調べは事案に応じまして様々な場所、様々な場面で行われます。そういうときにちゃんとした複製不可能という機械を備えて録音、録画をするということは、これはなかなか難しいのではないかというように考えております。

○松村龍二君 提案者にも同じ質問をしたかったのですが、時間も制約されていますので、先に進ませていただきます。
 被疑者や取調べの録音、録画を義務付けている外国では、例えば司法取引や刑事免責が制度化されていたり通信傍受やおとり捜査に関する法整備がなされていたりして、それらの手段により事案の真相を解明することができるため取調べの重要度は低いと先ほど来お話ありました。
 法務省としては、こうした新たな捜査手法の導入について検討しているか、またそうした捜査手法を導入すれば取調べは行わなくてもよいようになるのか、法務当局にお伺いします。

○政府参考人(大野恒太郎君) 刑事訴訟の目的は、先ほども御指摘がございましたけれども、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障等を全うしつつ事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することであります。真相解明と人権のバランスをどうやって取っていくかということでございまして、この目的を実現するために各国いろいろな取組がなされていると。また、現在のように社会や時代が急速に変化している中でありますから、それはやはり捜査の在り方、刑事訴訟の在り方については多角的な角度から今後検討していくことが必要であろうというふうに考えております。
 諸外国でありますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、日本と大分違う強力な捜査手法がございます。
 例えば、刑事免責であります。共犯等の関係にある者のうち一部の者につきまして免責を付与いたしまして、供述拒否権を失わせて供述義務を課するというような制度であります。また、司法取引というものもございます。検察官が訴因の縮小や求刑の軽減を行うことと引換えに、被告人から有罪答弁等を得るという仕組みであります。また、通信傍受、これは我が国におきましても認められているわけでありますけれども、要件等の関係で昨年は二十二件の実施にとどまっているわけでありますけれども、諸外国におきましてはこれが非常に活用されている、けたがそれこそ三けたぐらい違うような活用が行われております。また、我が国で全く認められていない捜査手段として、屋内会話の傍受というようなものもあるわけでございます。さらに、おとり捜査や潜入捜査。おとり捜査につきましては、判例上若干の範囲で認められているものの、諸外国で活発に行われているようなおとり捜査は日本では全く行われておりませんし、潜入捜査というものは、警察官等が犯罪組織に入っていくわけでありますが、これは全く認められておりません。さらに、捜査機関による出頭や証言の強制というようなことも認められている国がございます。
 そうした捜査手法がとりわけ組織的な犯罪における組織の実態や首謀者等を解明する上で一定の有効な対処方策になっておりまして、これは我が国においても様々な角度から検討を要するんだろうというふうに考えております。
 ただ、こうした制度につきましては、他方で国民の法感情や公正感に合致するかというような問題も指摘されております。法務省におきましては、そうしたことから、我が国の犯罪それから犯罪捜査の実情等を調査するとともに、諸外国の制度運用の実情等も勉強いたしまして、そうした様々な制度の導入が我が国捜査、公判全体に及ぼす影響などを踏まえて時代に即した捜査の在り方について検討を進めてまいりました。今後とも、引き続き必要な調査検討を行っていく必要があるというふうに考えております。
 ただ、このような新しい捜査手法を仮に導入したとしても、やはり取調べにより供述を確保することの重要性というものは引き続きあるんだろうというふうに考えております。やはり犯人が語らない限り真相が解明されず処罰ができない場合もあるわけであります。あるいは、犯人に対して適切な処分を科するという意味でも、やはり取調べの有する機能、役割というのは重要でありまして、諸外国で認められているような新たな捜査手段を導入しても、それによってすべてが補えるわけではないというように考えているところでございます。

○松村龍二君 最後に、大臣に御意見を伺います。
 これまで議論してきたとおり、取調べを含む綿密な捜査を行って真相を解明するという現在の捜査の在り方は今後も維持されるべきであると。取調べの録音、録画を義務付ければ、事案の真相解明が困難になり、ひいては治安の維持に悪影響を及ぼすことになるが、このような懸念に対して提案者から私としては納得のいく説明がない。まずは運用の改善を図るべきであり、警察、検察当局における取調べ適正化方策の効果を見定める必要がある。新たな捜査手法の導入も含め、刑事司法手続全体の在り方の中で慎重に検討を重ねなければならない。取調べの録音、録画の義務付けだけを迅速に行おうとすることはバランスを欠いていることから、本法律案には大きな問題があると指摘せざるを得ません。
 最後に、ただいまの質疑を踏まえました上で、法務大臣の御所見をお伺いいたして、私の質問を終わりにさせていただきます。

○国務大臣(森英介君) ただいま松村委員から御議論をいただいてまいりましたように、取調べの全面的な録音、録画を義務付ける制度を導入した場合には、取調べの機能が損なわれ、諸外国で認められているような強力な捜査手段などが認められてない我が国においては、これは今詳しく刑事局長から御答弁申し上げたところでございますけれども、真相を十分に解明し得なくなり、ひいては治安の維持にも悪影響を及ぶことが危惧されるなどの問題がございます。この問題については、委員からも御指摘のとおり、刑事手続全体における被疑者取調べの機能、役割やその他の捜査手段の在り方との関係を始め、様々な観点から慎重な対応が必要であると考えております。
 いずれにいたしましても、法務省としては、被害者を始めとする国民の期待にこたえるべく、取調べを含む捜査の適正を確保することはもちろん、国民の安全、安心を確保するという刑事司法に課せられた使命を適切に果たすことができるよう、今後とも努めてまいりたいと考えております。

○松村龍二君 どうもありがとうございました。

○木庭健太郎君 私ども公明党の方は、法案提出というより、あの氷見事件等を踏まえて、平成二十年でございましたが、あるべき取調べの適正化についてという提言を二十年三月にまとめさせていただいて、一つは、取調べの録音、録画の実施についてまず試行的に検察、警察やるべきではないかという御指摘をさせていただいて、それを踏まえた形で検察、警察それぞれ、先ほども少し御報告がありましたが、今この取調べの録音、録画という問題に試行的に取り組んでいるという現状だと認識をしております。
 改めて、簡潔で結構でございますが、この取調べの録音、録画の実施、試行をなさっているようでございますから、その結果とともに、今後それを更にどうされるおつもりでいらっしゃるのか、ここをまず法務当局及び警察当局にそれぞれ伺っておきたいと思います。

○政府参考人(大野恒太郎君) ただいま委員から御指摘のありました公明党の平成二十年三月の提言をちょうだいいたしまして、検察当局は平成二十年四月から、裁判員裁判対象事件の原則として自白調書、証拠調べ請求することが見込まれる全件につきまして録音、録画を試行してまいったわけでございます。そして、その結果、先ほども申し上げましたが、今年の二月、最高検察庁におきましてその試行の検証結果を公表いたしました。
 これまでの試行件数でございますけれども、この検証結果のカバーしております昨年の十二月末までに、合計ちょうど一千九百回の取調べの録音、録画を行ったわけでございます。そのうち、実際に裁判所でこの録音、録画に係るDVDが取り調べられたのは十六件にとどまっているわけでございます。実際、録音、録画をいたしましても、任意性を争われる事件が実はそれほど多くないというか、かなり少ないということを反映した数字であるというふうに考えております。
 この録音、録画の評価でありますが、試行に係る録音、録画は、検察官にとって有利であるか不利であるかを問わず、自白の任意性等を刑事裁判になじみの薄い裁判員にも分かりやすく効果的、効率的に立証するために有用であるという評価がなされております。また、同時に、この検証結果の中では、自白の任意性を争うというような主張を明らかにされていた弁護人が取調べの録音、録画のDVDの証拠開示を受けるわけでありますけれども、証拠開示を受けた後そうした主張を撤回した事件が少なくとも十一件あるというようなことも報告されておりまして、こうした録音、録画につきましては、一定程度、自白の任意性に関する争点を解消する効果があるのではないかというふうに考えております。
 他方、先ほども松村委員の御質問に対する御答弁の中で申し上げましたように、録音、録画が取調べの真相解明機能に影響を及ぼす場合もあるということが明らかになりまして、その実施方法については十分な慎重さを要するとされているところでございます。
 今年の四月以降はいよいよ裁判員裁判にかかる事件も出てくるわけでございますので、これまでの検証結果を受けまして、取調べの真相解明機能を害しない範囲で、相当と認められる部分について録音、録画の、これは本格的に実施してまいりたいと考えているところでございます。

○政府参考人(米田壯君) 警察の録音、録画の試行につきましては、先ほども御答弁をいたしましたとおり、昨年九月から警視庁、千葉県警察、埼玉県警察、神奈川県警察、大阪府警察の五都府県警察において実施をしております。五つの都府県警察にとどまっているということ、それから検証いたしましたのは開始後半年間であるということで、実施件数は六十六回にとどまっております。その検証内容は、先ほども申し上げましたとおり、自白の任意性の効果的、効率的な立証方策にはなり得ると考えておるところでございまして、また、取調べの真相解明機能に影響を及ぼす場合もあるということも明らかになったところでございます。
 いずれにいたしましても、まだ実施件数が少ない段階でございますので、これを全都道府県警察に四月一日から試行を拡大しておりまして、その試行を積み重ね、実施例を集積することによりまして、裁判員裁判において自白の任意性の効果的、効率的な立証に資するにはいかなる方策が有効であるかをより多角的に検討してまいりたいと考えております。

○木庭健太郎君 もう一点、やはり氷見事件とか、いわゆる自白の強要というような形になりがちな問題について、取調べの在り方そのものについてもやはり変えていかなければならない点もあるんじゃないかということで、あの提言の際に、私どもの提言の際に、取調べ時間に関する規制の問題とか接見に対する配慮の問題とか取調べの適正確保方策についてもきちんとまず取り組むべきだということを御提言申し上げたんですけれども、これについてもどういう取組に結果的になっているのかということを簡潔に法務当局及び警察当局から御答弁をいただいておきたいと思います。

○政府参考人(大野恒太郎君) 最高検察庁におきましては、公明党の御提言受けまして、昨年の四月三日、取調べの適正を一層確保するための方策というものを公表いたしました。その後、最高検の通達等において、これらが既にすべて実施をされているわけであります。
 一番目は、接見への一層の配慮でありまして、被疑者から接見の申出があった場合には直ちに弁護人等に連絡する、弁護人等から申出があった場合にはできる限り早期に接見の機会を与えるということで、そうした申出の経過等をすべて記録することにしたわけであります。二つ目は、取調べに当たっての一定の配慮、一層の配慮ということでありまして、深夜あるいは長時間の取調べに関する配慮等でございます。三つ目は、取調べに関する不満等への対応でありまして、被疑者等から不満が述べられた場合には、これを上司が把握して所要の調査を行い、必要に応じて検察官等に対しまして指揮、指導を行い、またこれを弁護人等に説明するなどの必要な措置を講ずるというような対応を求めたものであります。さらに、取調べ状況報告書につきましては、これを被疑者等に閲読してもらって署名指印を求めることとされておりまして、すべて現在これが実施されております。
 検察当局といたしましては、従来から取調べの適正の確保に努めてまいりましたけれども、今回、昨年新たに導入いたしましたこうした適正確保方策も着実に実施することによりまして、一層適切な捜査・公判活動に努めているというように承知しております。

○政府参考人(米田壯君) 警察庁におきましては、昨年の一月、警察が当面取り組むべき施策を警察捜査における取調べ適正化指針として取りまとめたところでございまして、この指針において、取調べに対する監督の強化、取調べ時間の管理の厳格化、その他適正な取調べを担保するための措置、捜査に携わる者の意識向上、この四つを柱として具体的な施策を講ずることといたしました。
 この中で中心となります取調べ監督制度につきましては、本年四月から被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則に基づきまして全面的に実施しているところでございます。この制度は、都道府県警察において犯罪捜査を担当しない総務あるいは警務部門に取調べの監督を担当させて、警察組織内部におけるチェック機能を発揮することによって取調べの適正化を図るものでございます。また、この規則によりまして、被疑者取調べに関する苦情の申出を集約するとともに、苦情の申出を一つの端緒として監督を行うこととしております。
 このほか、被疑者取調べ状況の記録制度の一層の充実、あるいは状況を把握するための施設整備の推進、捜査員等に対する適正捜査に関する教養の徹底等を実施しております。
 また接見につきましても、先ほど法務省からの御答弁があったとおり、警察庁においても同じように取り組んでいるところでございます。

○木庭健太郎君 提案者にお伺いをしようと思うんですが、今法務当局及び警察当局にどういうことを取り組んできたかというのを答弁をさせました。もちろん、皆さん方も警察及び検察がどういう試行をやったかというのはよく御存じだと思いますが、そういう試行結果を踏まえると、取調べについての録音、録画の問題、もう踏み切らざるを得ないというところまで今来ているんだろうと私は認識しております。ただ、これが今御提案なさっているように全面的な録音、録画ということになると疑問を持っているというのが今の当局の在り方なんだろうと私は認識をしておるんですが、ともかく、もう少しそういった措置の結果を検討する必要があるんじゃないかと私どもの党は現在認識をしておりまして、提案者にまずお伺いしておきたいのは、こういった検察、警察の取組、どんなふうに評価をなさっているのか、また法案の作成の際に、そういった試行的取組ということについてどんなふうにそれを配慮されたのか、そういった点があるのか、その点について伺っておきたいと思います。

○松野信夫君 私どもも警察、検察の方で取調べの適正化ということに向けていろいろと御努力をいただいていることは承知をしておりますし、また一部について録画、録音、これは警察とも検察ともスタートさせているということも承知をしておりまして、その結果、検証結果というものが警察、検察それぞれから報告書が出されている、この点もよくよく承知をしているところでありまして、それなりに取組がスタートしているのかなというふうには見ておりますが、しかし、じゃどういうふうに評価をするかといいますと、極めて不十分だし、私どもは、かえって一部の録画、録音ということでは危険な側面が強い、こういうふうに言わざるを得ないのではないかと思っております。
 一部の録画、録音ということになりますと、ある意味では検察、警察にとって都合のいいところだけ、自白したその供述調書の作成のところだけ撮る、それを場合によっては裁判員裁判でも裁判員の皆さんに見せる、こういうことで、あたかも自白が真実であり、また適正な取調べによって得られた自白だというのを裁判員に印象付けよう、そういうこともあろうかと思いますが、しかし、それは逆に危険な側面もあるわけで、取調べでは不当な威迫、強迫、誘導、そういうのをやって、そこは録画、録音はしない、被疑者の方はもう何言ってもどうしようもないということで迎合的な形で自白をする、もしかしたらそれは真実でないかもしれない、そういうようなことにもなりかねないわけで、ある意味では、その結果のところだけというのは、今申し上げたように、真実でない自白が入り込む余地というのは十分にあるわけで、それを裁判所あるいは裁判員に見せるというのは誤判のおそれもむしろ高まるのではないか、このように見ているところで、私どもは、やはり全面的な可視化を進めなければかえって誤判の危険性が高まる、こういうふうに見ております。
 それから、念のために申し上げておきますと、今年の二月に最高検察庁の方は取調べの録音・録画の試行についての検証結果というものを公表しておりまして、その中を見ますと、任意性の立証のためにDVDが取り調べられた事件における裁判所の判断、これも掲載されておりまして、これを見ますと、一つは、大阪地裁の殺人未遂の事件について、一部の録画のDVDが取り調べられたんですが、結果的には任意性なしという、これが裁判所の判断になっているわけです。やはりこれも、裁判所の判断、確認しますと、被告人が調書の読み聞かせ等によっても内容を正しく理解できず、迎合的であることを理解しながら、十分な配慮もしないまま、被告人の弁解を無視して誘導、誤導、押し付ける取調べ方法は任意性に疑いを生じさせるというふうな、こういう指摘もありまして、この一部の録画、録音だけでは全体像が把握できないということをやっぱり裁判所も認めているのではないかと、このように考えています。

○木庭健太郎君 今は提案者の方から、取調べの一部の録音、録画になった場合は、むしろ極端な言い方をすれば意味がない、弊害しか残らないというような御指摘もあって、検察というか法務当局が出されたものにも基づいて今御発言があったわけですが、現実に、その一部の録音、録画という問題に対して、何回も提出なさっているわけですから、一例を今紹介をしていただきましたが、全体的にどんなふうにこれ裁判所が見ているのかという点について、法務当局にここはちょっと伺っておきたいと思います。

○政府参考人(大野恒太郎君) 先ほど、千九百件試行した録音、録画の中で裁判所でDVDが取り調べられたのが十六件あるというふうに申し上げました。この報告書を作成した時点で、それについての裁判所の判断が示されたものは十五件ということになります。十五件の中で十四件につきましては任意性が認められました。また、残る一件は、今、松野委員から御指摘がありましたように、任意性が否定されたわけであります。
 任意性を認めた事件におきましては、DVDに録音、録画された供述状況は、その前後に録取された検察官調書における自白の任意性を認めるべき証拠に当たるというようなことになっているわけであります。そうした形で任意性が認められたのが十四件ございます。
 それから、もう一件、今詳しく該当部分の御紹介がありましたけれども、そのDVDに入っているやり取りを見ると、検察官が被告人の弁解に耳を傾けず、供述を誘導ないし誤導していると。そうすると、押し付けるような調べをしていた疑いが残るということで任意性が否定されている事件もあるわけであります。
 そうしたことも含めまして、先ほど、この取調べの録音、録画のDVDというのは、検察官にとって有利不利を問わず、裁判所が任意性を判断するための有用な証拠になるというように申し上げたわけでございます。
 なお、若干、先ほど来の質疑の関係で申し上げますと、編集はございません。編集はございません。実際に録音、録画を始めますと、そのやり取りは全部入ってしまうわけであります。
 それから、それまでのやり取りにおかしな脅迫等があった場合に全く出ないじゃないかと、こういう御指摘でございましたけれども、しかし、やはりその前におかしなやり取りがあれば、おのずとそれはその録音、録画をしている取調べにも反映されるだろうというふうに考えておりまして、実際に任意性を否定した事件につきましても、そうしたそれまでのやり取りがそこに反映されたんだろうというふうに考えております。
 それからもう一つ、任意性についての立証責任は検察官にございます。したがいまして、検察官はDVDを提出する、もちろんそれに限ったわけではございませんけれども、そうしたものを見ていただいて、やはりその任意性について疑いが残るということであれば、これはもう裁判所で任意性が否定されることはやむを得ないというか、これは当然のことでございます。
 そうした意味で、DVDを見ても一部であると分からないじゃないかという御指摘もあるわけでありますけれども、検察官が任意性が立証できなければ、それはその自白調書は証拠として採用されないということを申し上げたいというふうに思います。

○木庭健太郎君 提案者に、これ全部を録音、録画するということになった場合、実際の公判でこれを供述の任意性のために証拠として用いるという話になりますと、何が起きるかというと、法廷になるのかどうか、何十時間とか、取調べによっては百時間超えるようなものも、そのすべての過程を再生するというのは問題が起きてくるんじゃないかなと。そうすると、裁判員裁判にとってこれが非常に重い負担になりはしないかという懸念というのが指摘をされているわけであって、この点についてどういうふうに考えていらっしゃるかという点を聞いておきたいと思います。

○松岡徹君 木庭先生の御指摘もそのとおりで、私たちも裁判員制度で裁判員に負担を掛けてはならぬというふうに思いますが、問題は、その自白の任意性が争われるという場合もそうでありますけれども、公判前整理手続がありまして、弁護側が当然のようにその任意性について争う場合は、そのどの部分、公判前整理手続で整理されるわけですから全部を見るということではないと思うんですね、それで、公判前整理手続で、どの部分を再生するか、どのような再生の仕方をするか、それも含めて裁判長が判断をしていくものだというふうに思っています。
 御指摘のように、すべてを見るということではない、公判前整理手続で争点が整理されて、その部分を見る必要があるのかどうかということが当然のように整理されていきますから、もし再生するということがあってもすべてではない、そういう意味では、争われる部分の再生に限られてくるんではないかというふうに思っています。

○木庭健太郎君 そこはまた、それこそどの部分をどうするかということで争いになった場合ですよ、公判前手続の場合ですね。最終的にどうするかという判断するときにその辺をどう判断するかと、これはまた難しい課題を残しているんじゃないかなという気が私はちょっと若干ここはしているんです。
 それとともに、もう一つやはり心配する点は何かというと、先ほども御指摘があったんですけれども、要するに被疑者がいろんなことをしゃべるわけですから、第三者のプライバシーに関する供述、当然いろいろ入ってくるわけであって、例えば公判でビデオが再生されることによって心配されるのは、例えば例として言うならば、性犯罪なんかの事案において取調べの中で言及された被害者のプライバシーにかかわる事柄、生々しく公になることがあり得るんじゃないだろうかというような心配もされますし、いわゆる関係者のプライバシーの問題ですね、この点が過度に侵害されることがあってはならない、それはもう同じ認識だと思います。そういった点をどうやって確保させるのか、このプライバシー保護というところをどうやればいいのか、その辺はどんなふうにお考えか、これも提案者にお聞きしておきたいと思います。

○松岡徹君 木庭先生、去年も私たちこの法案を六月に提案したときに同じ指摘をしていただきまして、同じような答えになるんではないかということを前もってお断りをしておきたいと思うんですが。
 先生も御存じのように、裁判そのものがもうプライバシーといいますか、名前もすべて明らかになるわけでありますから、それをDVDで映したからといってそれがプライバシーの侵害に当たるのかどうかというものがあります。
 そういう意味では、そのプライバシー、裁判そのものがそういうことでありますから、ただ、それが裁判の外に漏れるとか、先ほど松村先生の御指摘にもありましたけれども、事前に弁護士の方が閲覧できると、それが漏れたらどうするんだと。しかし、この法案の中にはそれに対する罰則も規定をしておりますし、それを悪用して弁護人が他のところにやればその罰則に当然のようにかかるわけですから、そうしますと、弁護士法にもなりまして、弁護士資格まで失うというぐらいのところにまでなっているわけです。
 むしろ、私たちは、去年も答弁したと思いますけれども、警察の方の捜査情報が流れていくということにもっと、管理をしている側の方にもっと注意をすべきではないかというふうに思うぐらいなんですね。三年前にウィニーによって、京都とか愛媛とか北海道あるいは愛知、岡山、警視庁などから大量に情報がウィニーを通じて流出したという事件は記憶に新しいところであります。その流出した情報の中にも、木庭先生指摘のように性犯罪者の履歴も流出しているということになっているんですね。
 そういう意味では、先生がおっしゃるような心配は、むしろ私は管理している側の警察、検察の方で流出しないようにどうするのかというふうになるんではないかというふうに思っています。そういう意味で、先生の御懸念は分かりますが、当たらないのではないかと思っております。

○木庭健太郎君 同じ法案を出していただきましたので同じような質問になったところもあるとは思います。
 ただ、私は、裁判員制度が始まる前にこういった法案をきちんとした形で出さなければならないというお気持ちも十分察した上で、私がやっぱり今少し我が党として感じているのは、まだもう少し検察、警察含めてこの可視化の問題、本当にどういった在り方がいいのかということについてもっと積極的な取組をしていただくとともに、先ほどから御指摘されているように、じゃ今の捜査を補強するような新たな捜査手法というのを本当に取り入れるべきなのかどうなのか、この辺も本当はこの可視化の法案と併せた形で何か必要だったろうと思うし、それから、先ほど松野先生からもお話ありましたが、じゃ弁護人の立会い権の保障の問題どうなっているんだ、ここも本当はこの可視化の問題と併せて捜査手法であり、弁護人をどう取り扱うという問題であり、さらにこの可視化の問題というのが、ある意味じゃうまくバランスが取れたときに初めて本当にいい形の捜査というのはでき上がるような気がいたしまして、そういった意味で、私どもとしては、今、全面的可視化と言われると、ちょっと時期尚早という立場を取らざるを得ないというのが私たちの立場なんですが。
 法務大臣に是非これは望んでおきたいのは、やっぱり司法全体のバランスという意味で様々に考慮して取り組まなければいけない問題が今まだあるような気がいたしておりますし、大臣に是非、捜査の適正化とか治安の改善、総合的に刑事司法全体の向上へ向け、是非とも様々な取組を、法務大臣、先頭指揮で執っていただきたいと思っておりますが、これについての見解を法務大臣から伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(森英介君) 全くおっしゃるとおりでございまして、取調べの録音、録画等を始めとする取調べの在り方について考えるに当たりましては、捜査の適正の確保とともに、やはり一方で、治安を維持改善し国民の安全、安心を確保するという刑事司法に課せられた本来の使命を適切に果たしていくためにどのような方策があり得るのかということを、我が国における刑事手続全体の在り方を踏まえた多角的な観点からの検討が必要不可欠であると考えております。
 そういった全体的な多角的な観点からの検討なしに、一部だけ、いいとこ取りというか、手足を縛って歩けと、こういうふうに端的に言って受け取れないこともないわけでございまして、いずれにしても、取調べの適正を確保することは重要であって、検察当局においては、平成二十年三月に御党から賜りました御提言をも踏まえて取調べの適正確保方策を実施しているところでございまして、法務大臣としては、今後ともこうした取調べの適正確保に向けた検察の取組をしっかりと見守っていきたいというふうに思っております。

○木庭健太郎君 終わります。

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
   〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕
 この全面可視化の問題について、今大臣から手足を縛って歩けと言わんばかりのものだというお話が出ましたけれども、私は目をしっかり見開いて刑事司法の現実をちゃんと見ようじゃないかという提案だと思っております。
 今日、これまでの法務省や警察庁の御答弁を伺っておりますと、どうもこれまでの取調べを変える必要はないと言わんばかりのお立場のように聞こえますので、ちょっと質問、通告と順番が違うんですが、まず警察庁刑事局長にお尋ねしたいと思うんですね。
 志布志事件で鹿児島県警への信頼というのは地に落ちたわけです。この信頼を回復すると言ってこられた時期のことだと思うんですけれども、昨年の、つまり平成二十年の三月二日、この志布志署のお隣に鹿屋署がありますが、ここの警察官二人が喫煙をしていたということで十七歳の少年を補導して、その少年に対する行為によって特別公務員暴行陵虐罪容疑で書類送検されたということがございました。これは事実ですか。

○政府参考人(米田壯君) お尋ねの事件、そのとおり、特別公務員暴行陵虐の被疑者ということで検察庁に送致をしております。

○仁比聡平君 これ、新聞報道で紹介しますので、もし違っているというんだったらお話しいただいていいんですけれども、鹿屋署の二人の警察官が喫煙していた少年十七歳を補導して、態度が反抗的だとして、警部補は署内の道場で少年の頭を黒板に数回擦り付けたり足払いを掛けて数回転倒させたりしたというわけですね。これ、結果としては不起訴になっているようなんですけれども、その不起訴時の理由について、少年を更生させたい思いからやった行為だというふうに次席検事が説明したという記事もございます。
 今日、この起訴、不起訴についての当否をもちろん私言うつもりはございませんが、この道場で黒板に頭を擦り付けるとか足払いを掛けて転ばせるとか、これが、あれですか、真相の解明ですか、あるいはこれが先ほど来議論があっている更生の意欲を引き出すということなのか、局長、どうですか。

○政府参考人(米田壯君) これは、真相の解明とかあるいは更生の意欲を引き出すというようなことでは到底ないというように考えております。
 大変遺憾なことでございまして、処分は先ほど委員の御指摘のとおりで、これはちょっと警察として特にコメントできませんけれども、このように事件処理をいたしまして、そして検察庁に送致をしたということでございます。

○仁比聡平君 つまり、ほんの一年前のことですよ。志布志事件が起こってたたき割りが行われていた時期、このお隣の鹿屋署も決して無縁ではなかったと思います、県警挙げての捜査をやったわけですから。その志布志事件において、ありもしなかった事実がさもあったかのように収れんされていくという自白の変遷をもたらした違法な取調べと捜査があれほどの弾劾を受けて、県警は信頼が地に落ちて、私も県警本部長、お会いしましたけれども、信頼回復するために努力をしているというふうにおっしゃられていた時期に、現場では少年を道場でこんな目に遭わせる。反抗的だったかどうかは知りませんけれども、関係ないじゃありませんか、そんなこと。反抗的であろうが何であろうが、道場に呼び出して、道場に呼び出してじゃないでしょうね、連れていってこうした目に遭わせるということが現に行われているのが日本の警察なんだということなんですよ。
   〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕
 今日の議論は、統計だとか、あるいは取調べの抽象的な必要性、一般論的なと言ってもいいですけれども、そうしたことを議論、前提にされていますが、私は、現に取調べの現場が一体どうなっているのか、それを担っている取調べ官は一体どういう認識でやっているのかという、ここの現実から出発しなかったら冤罪や人権侵害をなくすことはできないし、裁判員制度の実施を目前にして国民の皆さんの期待にこたえることは決してできないと思うわけです。
 私、大臣、先ほど目を見開いてというふうに申し上げたのは、そうした捜査の現場を私たち政治家がしっかり直視して、ここで国際人権法や私たちの憲法、そして刑事訴訟法に照らして何が求められているのかということをしっかり決断をしていくことが必要な時代になっていることを申し上げたいと思うんですね。
 もう一つ、鹿児島県警にかかわって資料をお配りいたしました。
 これは、こうした志布志事件などもあって、取調べが適正に行われているかの監督が必要だという議論があって、鹿児島県警においては、全国よりもやや先駆けて取調べの監督官制度というのを運用を始めたわけです。その実態に関して、南日本新聞が監督官が取調べ状況を目視で監督した回数など運用の実態が分かる関係の文書を開示してくれというふうに請求したら、鹿児島県ないし県警は、文書は存在するが、全面的に不開示、一切明らかにできないという決定をしたというわけですよね。事実ですか。局長。

○政府参考人(米田壯君) 昨年十二月に被疑者取調べ監督制度の試験運用状況に関する公文書が開示請求がございまして、鹿児島県の情報公開条例に基づいて不開示とする旨を回答したというように聞いております。

○仁比聡平君 鹿児島県の条例の運用にかかわる話だからというのが今の局長の答弁の御趣旨なんだろうと思うんですけれども、鹿児島県警には警察庁からたくさんの幹部が、出向というんでしょうか、行っております。本部長もそうですよね。
 この記事によりますと、不開示の理由は、「取り調べ件数が明らかになると、捜査の進捗状況が推察され捜査に支障が生じる」などとされているようなんですけれども、こんなへ理屈はないでしょう。取調べの中身も個人名も抜きにして県警全体の取調べを監視している回数が明らかになったら、何で捜査の進捗状況、捜査に支障が生じるんですか。私には全く理解がなりません。
 これ、鹿児島県警だけではなくて、全国で取り組んでおられる取調べの監視ですね、これというのは透明性を確保しようということが趣旨なんだと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(米田壯君) 取調べ監督制度は、警察内部で、捜査を担当しない部門によって内部でのチェック機能を生かして、そして取調べの適正化に資するというものでございます。
 その透明性という点につきましては、情報公開に関しましては、これは各県の情報公開条例の解釈、運用によるものであろうと思っております。
 それから、刑事裁判におきまして、その部分が何か争点に関連するということになりましたら、争点関連証拠ということで監督制度の運用状況に関する文書というものが開示請求の対象とはなり得るというように考えております。

○仁比聡平君 当該事件において裁判上の必要で証拠開示を全面的にやっていくべきだというのは、これは私は当然のことだと思いますし、今日議論になっていますこの法案での証拠の標目の開示なども含めて全面的な証拠開示を私は求めたいと思うんですが、刑事手続においての証拠開示の問題とは別の問題として、市民が刑事司法に判断権者として直接参加するという裁判員制度を実施されるそういう時代にあって、刑事司法に対する国民的な監視こそが私は求められていると思います。
 これしきの情報公開に応じることができずに市民を裁判員裁判に臨ませるというのは、結局、これまでの密室司法、人質司法、ここに市民を巻き込もうとするものではないのか、警察はそんなつもりなのか、悪事に加担させるつもりかと、そういうふうに言われても仕方がないと思うんですが、私、こういう態度は情報公開においても改めるべきではないかと思いますけれども、いかがです。

○政府参考人(米田壯君) 警察庁におきましては、各県の情報公開条例に基づいて適切に情報を開示していくように指導してまいりたいというように考えております。

○仁比聡平君 これから実際にこんなことが繰り返されたら、本当に警察の信頼は地に落ちますよ。局長のお立場から今日はそこまでしか答弁ができないのでしょうから、これ以上は求めずに次の問題に移りたいと思うんですけれども。
 この記事の一番下の段に、御覧いただきますように、監督官の一人がこう述べたというので、「取り調べの目視は三十秒、一分のときもある」というわけですね。先ほど志布志事件の踏み字のお話が出ていましたけれども、三十秒、一分見ていて、ここで問題がありませんでしたということで何の担保になるんですかということが私の申し上げたいところでございます。
 この間、検察や警察が何の取組もしていないとは私は申し上げませんけれども、こうした取組を経てもなお捜査組織、警察組織の根深い体質というのはいささかも変わっていないのではないかと私は思うんです。
 提案者にお尋ねをしたいんですが、そうした状況の下で今国会で昨年に続いて改めてこの法案を提出し、そして成立を願われていると思うんですけれども、その必要性をどのようにお考えでしょうか。

○前川清成君 もう何度も繰り返しておりますので簡単に申し上げますが、今、仁比委員が御指摘になられたように、捜査を適正化する、それをもって冤罪をなくすという意味でも大変必要ですし、来月二十一日から始まる裁判員制度において、任意性の判断で裁判が長期化してしまい裁判員の皆さん方に過大な御負担を掛けない、そのためにも必ず必要だと思っています。
 仁比先生の友情に甘えて一分間だけお時間をいただきたいんですが、先ほど松村委員の御発言の中に、捜査実務において調書を作らない場合もある、それを無視しているんじゃないかとか、あるいは私たちが報復があっても当たり前と考えているんじゃないかなどの大変看過し難い御発言がございました。敬愛する松村先生ですけれども、私たちが提案しております条文の三百二十二条二項、これを御覧いただきましたならば、その御発言が誤りであるということを容易に御推察いただけると思います。
 それと、私たちも治安の維持は極めて大事だと思っていますし、国民の安心、安全を守ることは政治の大変重要な役割だと思っています。そういう意味で、私たちは正しい警察の大応援団のつもりなんですが、先ほど米田刑事局長が誘拐事件を例に挙げて、現場で聞き出すこと、これもあたかも刑事訴訟法百九十八条で言う取調べのようにおっしゃいましたけれども、そういう御発言が国会で確定してしまいますとむしろ捜査に支障が来すのではないかと。それは刑訴法の取調べとして扱うのが適当なのか、むしろ警察官職務執行法等々で規律されるべき問題なのか。この点は是非十分に御検討いただいて御答弁をいただかなければならないということを付け加えさせていただきます。

○仁比聡平君 私も、前川委員始め提案者の皆さんが刑事司法の適正な在り方について一貫して御質問もされていることをよく承知をしているわけで、この大切な取調べの全面可視化の問題について、余り現実から離れた、それこそイデオロギッシュな議論みたいになってしまうのはいかがなものかというふうに思っております。
 昨年、参議院で可決はしたが、衆議院では残念ながら成立ということにならなかったわけですね。そこで、今国会における法案の審議に何を期待をするのかということについて提案者の方にもお尋ねをしたいと思うんですけれども、私は、こういうときにこそ、国会での審議を尽くすということの意味や国民的な機能が果たされるときはないと思うんです。
 世論を見ますれば、この全面可視化を求めるという声は大変あるわけですね。けれども、警察庁や検察庁の方では先ほど来のような御議論があると。このときに、どういう点が中心の争点であって、その点について、どのような根拠やあるいは実態の調査に基づいて、これはあるいは国際的な調査ということも含めてということですけれども、それに基づいて国会で議論がなされているのか。このことが真摯に議論が尽くされることが必要だと思います。
 そして、そうした審議の経過が国民の皆さんに明らかにされて、国民の皆さんが当委員会の審議の行方に大変注目もいただいて、その中で国民的な判断がどこに向かっていくのかと。それだけ国民的な合意を形成していくのに十分な審議の時間や期間というのをやっぱり私たち国会は持っていく必要があると思うんですね。
 今日は、趣旨説明がなされて、こうして審議に入って、この後採決も予定をされているという本当に慌ただしいことが昨年に続いて繰り返されるわけです。このまま衆議院で昨年と同じような扱いにされるということは私はあってはならないと思うし、大変残念なことだと思いますが、提案者、いかがですか。

○松岡徹君 昨年のこの法案を、同じような法案を提案したときは、私たちは何としても今年の五月二十一日からスタートする裁判員制度にとって必要不可欠な整備すべき制度だという立場で提案をさせていただきました。
 仁比委員が御指摘のように、思いは私たちもそのとおりでございまして、しっかりとした議論をするというのは、この法務委員会の中だけの議論ではなくて、まさに日本の司法制度の大事な根幹を成すところだと。まさに裁判員制度が目の前に迫って、この議論は国民の課題としてもあるいは問題としても議論になるような、徹底した議論を是非とも私たちも積み上げていくようにしたいというのが本音であります。
 去年はああいう事態になりましたけれども、私たちは是非とも、今日ここで採決までというふうになってはおりますが、衆議院の場においては是非とも国民をも巻き込んだような徹底した議論がなされるように私たちは期待をしておりますし、同時に成立がされるように期待をしているところであります。仁比委員の問題意識としては共有をするところがたくさんあるということを申し上げたいと思います。

○仁比聡平君 委員長に、あるいは委員会の同僚議員の皆さんにお願いも申し上げたいと思うんですけれども、私、このテーマにかかわって、今日も話題になっておりますが、諸外国の運用の制度や実情、また我が国の取調べ等捜査方法のありよう、国際人権法の求める理念や価値判断と我が国の現状などについて、当委員会での引き続きの調査、加えて参考人の質疑も含めて行うべきだと考えております。
 加えて、昨年来ですか、一貫して求めてまいりましたけれども、冤罪の被害者の方を直接呼んで違法な取調べの実態というものを私たち自身が直接伺うというような取組もあっていいのではないかと思いますので、よろしく御検討をお願いしたいと思います。

○委員長(澤雄二君) 今の御提案については、後刻理事会で検討させていただきたいと思います。

○仁比聡平君 そうした中で、大臣、その国際人権法、条約の理念と我が国のこうした議論について少しお尋ねをしたいんですけれども、世界人権宣言あるいは国際人権規約に基づいて、自由権規約委員会や国連の拷問禁止委員会からこの日本の刑事捜査の在り方について大変厳しい勧告が相次いで重ねられてきたわけです。
 一つ、二〇〇七年の五月に出されました国連拷問禁止委員会の総括所見について取り上げますと、端的に言いまして取調べ過程の全面録画を直ちに実行する、あるいは警察拘禁期間、代用監獄を始めとして警察の下に被疑者が長期間勾留されるというこの状況を変えるべきである、あるいは取調べの時間について法的規制をするべきであると、こうしたテーマが出ているわけですね。
 今日あれこれに大臣の所管外のことまでお尋ねするわけにもまいらないと思うのですけれども、今日テーマになっております取調べ過程の全面可視化というのは、つまり国際人権の感覚から見たときに看過し得ない構造的な問題を抱えている日本の刑事捜査と不可分のものとして全面的な可視化をするべきではないのかという勧告が出ているんだと思うんです。
 これに対して日本政府が国連に答えている中身はもう今日あれこれ繰り返されてきましたから大臣に改めてお答えいただく必要はないんですけれども、私は政治家としてあるいは大臣としてお尋ねしたいんです。日本はこの国連の人権理事会に立候補されました。人権理事会に立候補されるときに日本は主要人権条約を誠実に履行していますというふうに述べているんですね。これは当然のことだと思います。この国連からこうした指摘が重ねて行われると、つまり国際人権法の水準に照らしたときに日本はおかしいですよというふうに何度も何度も言われるということについて、大臣はどんなふうにお感じなんでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 十分な御理解がいただけていないということは誠に残念に思いますけれども、本件の最終見解は国連文書として公表されたものでございますので、これを踏まえまして、今後ともこの拷問を許さないという価値観を国際社会と共有し、我が国の実情等を勘案しつつ適切に対処してまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 今日、前の議員の質問の中でも我が国の実情というお話が何度も何度も出てくるわけですね。それぞれの国や社会にそれぞれの実情があるのはそれは当たり前です。だけれども、それだけを述べていたのでは国際社会とか国際人権とかいうのは成り立たないでしょう。
 加えて、刑事捜査というのが人権侵害の危険性を持っているというのは、これは重大な犯罪的な結果が起こって、その真犯人や真相を究明するというそのプロセスにおいては人権侵害的な状況が起こり得るというのは、これは殊更我が国だけの問題ではなくて、世界中どこでも、どの社会でも同じなんですよ。だからこそデュープロセスという理念が発達をしてきたのであり、我が国の憲法三十一条は正面からそれを採用したわけですね。そういった我が国の憲法の理念というのは国際人権法の水準に照らして決して遜色はない、本当にその水準の先頭を行っているような条文になっているんですけれども、だけれども刑事捜査の実態はそこから懸け離れているということが私は問題なんだと思うんですよ。
 先ほど、大臣、実情に応じてとおっしゃいました。実情を無視しろと言っているわけではないんです。だけれども、理念の問題、しかも人権や刑事司法の在り方というここの理念の問題はもっと真剣に受け止めるべきではないかと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(森英介君) 今確かに刑事手続というのは、被疑者、被告人の権利保障と一方で真相の解明という、時に相対立するような要請の調和を図る役割を担っております。そういう意味で、当然、委員会が指摘する各点についてはそれを刑事手続全体の在り方との関係において検討すべきであるというふうに考えておりまして、これは先ほど来申し上げているとおりのことでございます。

○仁比聡平君 時間がなくなりましたから、今の点も踏まえた上で、最後、提案者に一問伺いたいんですけれども、それは一部録画ではなぜ駄目かということにかかわる話なんですけれども、これまでこの委員会で、虚偽の自白というのがなぜ起こるのかと、人がやってもいないことをさもあったかのように、やったかのように供述するというのは、なぜそういうことが起こるのか。あるいは目撃証人が、本当は見ていなかった、あるいはそのようなことは見ていなかったことが後から明らかになるんですけれども、あってもいないことをさもあったかのように供述するということがなぜ起こるのかと。そこに刑事裁判が供述証拠を使用せざるを得ない中で大変な危険性が潜んでいると思うわけです。
 志布志事件でも経験をしましたように、供述の変遷が繰り返されるということもあります。あるいは、取調べ官の誘導ないし働きかけによって記憶そのものが変容するというふうなことも指摘をされているわけですね。
 私は、そうした危険性が潜む供述証拠は全面的に初めから最後まで録画をして初めてその任意性や信用性を判断し得ると思いますが、提案者、いかがでしょう。

○前川清成君 事例的には仁比委員のおっしゃるとおりですし、事例として一つ付け加えるのであれば、あの免田事件においては三日三晩寝かせずに取調べを続けたということもあったと思います。
 本質的なことを申し上げれば、やはり刑事手続、捜査も含めた刑事手続というのは、私たちの社会に対して害を加えた人、要するに犯罪者に対して立ち向かう、そういう手続でありますので、どうしても私たちの基本的人権に関する考え方とかがその意味では弱くなりがち。ですから、この刑事手続の場面においては、やはり人権保障あるいは手続の公正さ、適正さ、これというのは幾ら強く言っても決して言い過ぎることはないだろう、そんなふうに考えております。

○仁比聡平君 諸外国の研究の中で一つだけ最後紹介しておきますと、アメリカのノースウエスタン大学のロースクールの教授でございますスティーブン・A・ドリズィン教授がせんだって来日されまして、国会でも勉強会がありましたので、松野提案者あるいは私、一緒に参加をさせていただいたんですね。
 この中で、アメリカにおいてのお話ですが、警察の捜査官が特別の訓練学校に送られて、尋問技術を学ぶとともに、拘束された被疑者の認識、判断、決定を操って自白に導くための訓練を受けている、こうしたことを多くの人は知らないだろうという文章があるんですけれども、愛媛の県警から、長時間の取調べによって被疑者を弱らせるという、そういうねらいが文書で明らかになったこともあるわけでございます。
 やっぱり全面可視化が必要だということを強く申し上げて、質問を終わります。
    ─────────────

○委員長(澤雄二君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
 本日、舛添要一君が委員を辞任され、その補欠として長谷川大紋君が選任をされました。
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○委員長(澤雄二君) 質疑を続けます。

○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 あと一か月で裁判員制度が始まるわけでございます。そういう中で、昨年に引き続いてこの可視化法案を提案をして、そしてまず参議院で可決をしたいという方向で頑張っておられます発議者の皆さんに本当に敬意を表したいというふうに思っています。
 私は、今回発議者ではありませんが、賛成者の末席に名前を加えていただきました。前回もそうでありますし、また今回、皆さんの御答弁も含めて議論を聞かさせていただきまして、改めてこの可視化法案、一刻も早くやっぱり成立をさせていかなければならないというふうに思っています。
 志布志事件、そして氷見事件の記憶はまだ実に鮮明でありますし、今ほども議論がございましたけれども、国連の権威ある機関から再三にわたって国際人権レベルから見て問題がある、是正しなさいという勧告を受けていると。しかも裁判員制度が始まると。文字どおり、今やらなくて一体いつやるんだと、こういう思いでございまして、この可視化が通らないとやっぱり国民の皆さんに安心して司法に参加してくださいと言えないのではないかという危惧の念を持っているところであります。
 ですから、私は、もう今更発議者の皆さんにお聞きすることはございませんが、ただ、幾つか当局の方に、やはりどうしても気になることがございますので、何点かお聞かせをいただきたいというふうに思っています。
 先ほど来、松村委員と警察あるいは法務当局との間の議論もございましたけれども、世界ではもう可視化を実施しているところがたくさんある。だから、そういう意味では、先ほど大臣が手足を縛って歩けというのかということに対しては、よその国でちゃんとやっているのに何で日本はできないのかということを言いたいという思いも非常にあるわけでございます。
 問題は、これ松野委員が前回も、また今回もおっしゃっておられましたけれども、可視化をしようとすると捜査当局というのはいつでも反対をする、しかし実施してみれば問題はどこも起こっていませんよ、私どもも当局の方に聞いても特段問題が起こったという話は聞いていないという話をされておりました。
 問題は二点だと思うんですね。一つは、この可視化を実施したことによって実施前と比べて治安が果たして悪化したという、実施国において治安が悪化したと、そういう実例があるのかどうか。そしてまた、可視化によって以前と比べて被疑者が話さなくなった、取調べにおいて話さなくなったと。先ほど来、暴力団の話がいろいろ出ますけれども、世界にはマフィアだとか日本の暴力団に準じたようなものというのはいっぱいあるわけですけれども、世界の国で可視化を実施したことによって急にしゃべらなくなった、その結果真実が発見できなくなった、真相解明から遠ざかってしまったと、こういうことは果たしてあるのかどうか。
 これは、警察と法務当局、当然皆さんはそのようなところをお調べになっているというふうに思うんですね。先ほど松野さんはそんなことはないというふうにおっしゃったんだけれども、皆さんは調べて、治安、あるいは話さなくなった、あるいは真相が解明できなくなった、そういう弊害が現実にあるという情報を持っておられるんですか。あるとするならば一体どういう報告を受けているのか聞かせていただきたいというふうに思います。

○政府参考人(大野恒太郎君) 外国の統計についてもちろん網羅的に把握しているわけではありませんが、比較的早い段階から取調べを録音しているイギリスについて申し上げますと、イギリスでは一九八四年に制定された警察・刑事証拠法によりまして取調べの録音制度が明文化されたというふうに承知しているわけであります。
 そこで、その前後の時期における犯罪統計を見ますと、これは犯罪認知件数でありますが、その前の一九八〇年、これが約二百五十二万件となっております。それからその直後の一九八五年、約三百四十二万件、それからそのしばらく後の一九九〇年、約四百三十六万件ということになっておりまして、取調べの録音制度が明文規定によって導入された後、犯罪認知件数は増加している傾向が認められるわけであります。ただ、私どもとして申し上げたいのは、犯罪統計は、刑事司法制度の在り方だけではなしに、経済雇用情勢その他多様な社会情勢の影響を受け得るわけであります。
 委員が指摘されました、第一点は今申し上げたようなことなんでありますが、データの点は今の申し上げたところなんでありますが、二番目の、被疑者が供述しなくなるなどしてその真相解明が困難になったかどうかという点について次に申し上げたいというふうに思うわけでありますけれども、今申し上げました例えばイギリス等につきましては、先ほど来申し上げておりますように、取調べが重要な捜査手段というふうに位置付けられておりません。つまり、被疑者が否認した場合に、それを説得して真実を語らせるというような努力はされておらないわけであります。したがって、むしろ取調べ以外の様々な手段によって証拠を収集しているというようなことでありまして、その録音、録画を行うかどうかということとそれから被疑者が自白するかどうかということは直ちに結び付いてくるものではないということを申し上げたいというふうに考えております。

○近藤正道君 全然答えていないじゃないですか。
 最初の、犯罪が増えたとか増えないという話、私はむしろ経済社会的な状況の方が強いと思うんだけれども、少なくともイギリスの国会、政治の場で、取調べの可視をやったために犯罪が増えたんではないかと、そういう議論なんかありましたか、これを一つお聞きしたい。
 もう一つは、今言ったように、取調べの可視化によって供述をしなくなった、そういうデータなんてないでしょう。はっきりさせてくださいよ、これは。

○政府参考人(大野恒太郎君) 私も先ほど申し上げましたように、犯罪統計は先ほど申し上げたとおりですけれども、それが取調べの可視化によるものであるというふうに判断しているということはちっとも申し上げているわけではありません。それはむしろ社会経済情勢によるものだろうというふうに申し上げているわけであります。
 それから次に、取調べの可視化と自白、否認の関係でありますが、例えばイギリスを例に取りますれば、否認したからといって説得して真実を語らせるというような捜査の手法は元々取られていないわけであります。基本的に取られていないわけでありますから、録音、録画を導入することによってそこのところが変わったかどうかというようなことを議論するそれだけの大きな状況にない、むしろそこは日本と違うということを申し上げたかったわけでございます。

○近藤正道君 いずれにいたしましても、皆さんが非常に強調される、可視化によって被疑者がしゃべらなくなる、あるいは真実発見から遠ざかる、これは全く実証的なデータはない、まさに皆さんがそういう宣伝をまき散らしている、それ以外の私は何物でもないというふうに思いますし、今の議論でこれがはっきりしたんだろうというふうに思うんです。
 もう一つお聞きしたいのは、この間、裁判員制度の集中審議がここでありました。ここで三人の参考人が来られまして、お一人の四宮さんという方が明確に申し上げていたんだけれども、彼は、裁判員制度、やっぱりこれが必要だと、この国の司法の民主化には必要だという話の一番最後に、法廷が変わるんだと、これから。つまり、皆さんが、捜査当局が作った膨大な調書を基に事実認定をするんではなくて、法廷において顕出された証拠によって、まさに見て聞いてその場で心証を取るんだと、そういうふうに法廷は変わるんだと、法廷が変われば捜査が変わるんだと、捜査のやり方も変わるんだと、そういうことを非常に強調されていました。つまり、法廷が変われば捜査は変わると。
 皆さんはこの発言についてどう思いますか。こんなもの、裁判員制度が変わって法廷が変わっても捜査は全然変わらないと、今までどおりだというふうにおっしゃるのか、それとも、裁判員制度になって直接主義、口頭主義が法廷できちっと実現すれば捜査も変わるんだと、変わる点はここなんだというのか、どちらなんですか。もし変わるんならどこが変わるのか、おっしゃってください。

○政府参考人(大野恒太郎君) まず、捜査の基本的な役割……

○近藤正道君 時間がないから簡潔に。

○政府参考人(大野恒太郎君) はい。
 捜査の基本的な役割、つまり事案の真相を解明して起訴すべきものを見分けるという、そこのところは変わらないというふうに考えております。
 ただ、裁判員裁判ということになれば、まさに公開の法廷におけるやり取りで裁判官、裁判員に心証を取っていただかなければいけないわけでありますから、その際、法廷に出す証拠の在り方というのも変わってくるでありましょうし、それに応じてその収集のやり方等についても様々な工夫が必要だということで、先ほど来申し上げている最高検でもそうした新しい裁判員裁判に対応し得るような方針を先般打ち出したところでございます。

○近藤正道君 だって、裁判員制度になれば、原則として、皆さんがせっせと密室の中で被疑者を追い詰めて、そしてしゃべらせて、そして調書を取る、この調書は基本的に法廷に出せなくなるわけでしょう、原則としては。ただ、いわゆる検面調書の言わば二号書面、特信性がある場合、あるいは自白調書で任意性があるような場合、これは例外的に出る。しかし、だからといってそれは簡単に出せるものではなくて、刑事訴訟法の規則の百九十八条の四、これは、迅速かつ的確な立証に資するようなものしか出せない。
 つまり、特信性とかあるいは任意性、これを裏付けるものとしては、私は当面、言わばビデオ、DVD、これは可視化を前提とするんだろうと思うんだけれども、これしかもうなくなってくるんじゃないですか。皆さん膨大な調書を取ったって、それは基本的に出せないわけでしょう。DVDは一番有力な、まさに、取調べ状況に関する資料を用いるなどして迅速かつ的確な立証に努めなければならない、その最も有用な証拠というのはDVDでしか私はなくなるんではないかと。
 そうすれば、このDVDは一部ではなくて、先ほど来ありましたように、読み聞かせ以降の一部の録画ではなくて、全面的な録画しかやっぱりなくなると、この事実をやっぱり率直に認めて、やっぱり可視化という方向で、全面可視化の方向で頭を切り替える以外ないんじゃないですか。何でここへ来て四の五の四の五のと抵抗するのかなと思えてしようがないんだけれども、どうですか。

○政府参考人(大野恒太郎君) 済みません、先生の発言を正しく理解しているかどうか自信がございませんけれども、公判廷における立証が証人といいましょうか、中心にウエートが掛かっていくだろうということは予想されているところでございます。ただ、事被告人以外の証人につきましては、先生も御案内のとおり、現在でも捜査段階に作成された調書について弁護側が不同意であれば証人尋問が行われるわけであります。その点は、調書による立証が行われるんじゃないかという、そこの御指摘はちょっと私としては理解し難いところでございます。二号書面のことをあるいはおっしゃっているのかもしれませんけれども、ちょっと正しく質問の趣旨を理解していないと思いますが。

○近藤正道君 証人とかあるいは被告人が法廷で取調べと違うことを言ったときに、また取調べ段階で作った調書を証拠として出してそしてその信用性とかあるいは特信性を争えば、結局延々とした水掛け論になってくるんではないかと、そういう事態というのは基本的に裁判員制度では許されないことなんではないですかと、私はそう言っているわけですよ。
 そういう事態を回避するためには、それは録音、録画をやって、それを法廷にやっぱり出す、しかも、膨大な録音、録画の言わばDVDを全部見るってそれは大変だから、公判前の整理手続の中で証拠開示してもらって、事前に十分チェックをして重要なポイントだけをやっぱり出すと、そういう形を取る以外にないんではないですかと。そうじゃないと、裁判員に膨大な負担を掛けることになるんではないですかと。
 結論は大体おのずから落ち着きどころというのはもうはっきりしているんじゃないですかと。ならば、もうその可視化、録音、録画、そして、万一特信性だとかあるいは任意性が争われるときには録音、録画のそういうDVD、そういう機材を法廷へやっぱり出す、そういう形しかもう残っていないんではないですかと。単に調書の信用性をめぐって延々と争うようなことになったら困るんではないですかと、くどいようですけれどもそう言っているわけですよ。どうですか。

○政府参考人(大野恒太郎君) 済みません、まず犯罪事実の立証等に用いられるいわゆる実質証拠につきましては、それはまずは証言ということになってくるんだろうというふうに考えております。DVDによって供述内容を立証するということは、現在のところ検察当局においても考えておりません。あくまでも証人尋問によって立証する。そして、捜査段階と違う供述をした場合にはそれは調書が出てくる場合もあるかもしれませんけれども、DVDが用いられるとすれば、その特信性の立証の局面で使われることはあり得るかもしれないということでございます。
 実際に、最高検の検証結果でも、千九百件録音、録画を実施しているわけですが、うち三回特信性の立証にこのDVDが用いられて、その際にはいずれも特信性が肯定されているというように承知しております。

○近藤正道君 特信性だとかあるいは任意性の問題はもちろん一つありますけれども、やっぱり私はもう一つの問題として、密室での取調べ、私はこれの効用を全面的に否定するものではない、それはそれなりに効用はやっぱりあるんだろうというふうに思っています。
 ならばなおのこと、これだけ問題がこの国で起きて、しかも、先ほど来議論があるように、捜査当局の体質は依然としてやっぱり変わっていないところが散見される、こういう状況の下では弊害の除去の努力をやっぱりちゃんとやる必要があるのではないか、そのことをやらないで取調べの効用だけを一般的に強調するというのは、非常にフェアなやり方ではないし、世界的にも通用するものではないというふうに思っております。
 これ以上言ってもしようがありませんので、今日はやめます。
 最後に一点。今日は、私途中でいなくなったので、もしかするとどなたか聞いておられるかもしれませんので、そうだったらお許しをいただきたいんですが、この法案には言わば検察官の手持ち証拠のリスト化の問題がございます。この問題について、なぜこういうものが今必要なのか。弊害をおっしゃっている方もたくさんおられますけれども、弊害に対する反論を含めて、なぜこういうものがこの国の司法の今必要なのかということを簡潔におっしゃっていただきたいというふうに思います。

○松野信夫君 最後にいい質問をしていただいて有り難く思いますが。
 御指摘のように、可視化の点とそれから証拠のリスト開示、この二つが本法案の大きなポイントでありまして、いずれもやはり真実を解明し、公正公平な裁判を実現するためのものであります。
 我が国の刑事司法、言うまでもありませんが、いわゆる当事者主義の構造を取っている、検察と弁護が公判でそれぞれ攻撃、防御を交わすことによって真実を解明し、実体的な真実解明に基づいた裁判をする、こういう建前になっているわけですが、現実には、検察官の手元には膨大な証拠書類がある、また証拠もたくさんある、一方、弁護側の方には必ずしも十分な証拠があるわけではない、こういうようなことになっているわけであります。検察官の手元の証拠の中には被告人に有利なものも不利なものもいろいろとあるわけでございます。やはり検察官というものは、当事者主義の中でも公益の代表者として、やはり手持ちの証拠については被告人に有利不利問わずやっぱり開示をする中で真実を追求する必要があるだろう、このように考えているわけであります。
 弁護側とすれば、検察官がどのような証拠を持っているのか分からない中で十分な弁護をしろと言われても、なかなかそれはできないわけでありまして、最近では、類型証拠の開示あるいは主張関連証拠の開示、こういうようなものが法的には認められておりますが、しかし、そもそも検察側がどういう証拠を持っているのか、これが分からなければ開示請求もできないということで、実質的な平等性を担保する意味で少なくとも証拠のリストは開示をするべきだ、こういう考え方に立っているわけであります。
 確かに、最近の最高裁の判決等を見ますと、例えば捜査官の捜査メモも開示請求の対象にしていいんだと、こういう判断もなされてはおりますが、しかし、それでもどういう証拠が検察官の手元にあるのかが分からなければ開示請求すらできない、こういうことになっているわけでありまして、我々とすれば、証拠リストの開示というものは弁護側にとってのある意味では弁護権を自主的に果たすための少なくとも最低限の権利ではないかと、このように考えているわけであります。
 確かに……

○委員長(澤雄二君) おまとめください。時間が過ぎています。

○松野信夫君 はい、分かりました。
 プライバシーの問題等々もありますが、それについても我々は目的外使用禁止ということで一定の罰則を設けるなど、十分な配慮もなされていることを最後に申し上げたいと思います。

○近藤正道君 終わります。

○委員長(澤雄二君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 本法律案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本法律案に対する意見を聴取いたします。森法務大臣。

○国務大臣(森英介君) 本法律案については、政府としては反対であります。

○委員長(澤雄二君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、刑事訴訟法の一部改正案に対する賛成の討論を行います。
 我が国の刑事司法は、志布志事件に示されたように、被疑者を代用監獄に長期間拘束し、踏み字など、無理やり自白を獲得しようとする構造的問題を持っています。このような取調べに基礎を置く結果、冤罪、誤判が後を絶たず、多くの裁判所が被疑者の身柄拘束を認め、捜査段階の調書を安易に採用し、有罪を認定してきました。
 国連の自由権規約委員会、拷問禁止委員会の再三の勧告、指摘をまつまでもなく、これが国際人権基準に著しく反することは言うまでもありません。
 国民参加の裁判員制度の実施を前に、こうした自白偏重の冤罪をつくり出してきた土壌をそのままにして、あってはならない冤罪に裁判員を巻き込むことは断じて許されないことです。捜査、取調べにおける全面可視化は、捜査の適正と刑事司法が失った信頼を取り戻す上で不可欠の条件です。
 裁判員制度の導入を機会に国際基準を遵守し、真に国民のための司法を実現するその努力を呼びかけて、賛成の討論といたします。

○委員長(澤雄二君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(澤雄二君) 賛成多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十三分散会

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