2010年3月16日
参議院法務委員会
○松岡徹君 おはようございます。
元々の予定は今野先生は二十五分やったんですが、四十分やってしまいましたので私の時間が短くなりましたので、手際よくしたいというふうに思っています。
千葉大臣のさきの所信表明につきまして、所信演説を受けまして御質問したいと思いますが、私は、この間、ちょっと混乱している状況を見るにつきまして、これからの課題というものを明らかにしたいという思いで、千葉大臣の考え方をお聞かせいただきたいという思いで聞かさしていただきます。
民主党の政権になってから、鳩山総理は命を大事にする政治をつくり上げていきたいと。私は、さきの代表質問でも命を守るという中に、人権侵害や差別によって命を落とすという状況を見れば、我が国における人権政策の確立が命を守る政治の重要な政策の一つではないのかということも質問をさしてもらいまして、人権侵害救済に関する法律、あるいは民主党がマニフェストで挙げている取調べの可視化等につきましても非常に重要な課題だと思っておりまして、その中で特に部落問題について大臣の考え方といいますか、というものを聞かせていただきたいと思っています。
先ほどの今野先生の話を聞いて、可視化はいよいよ必要だなという必要の範囲が、入国管理のところまで可視化せなあかんのかなというような気がしましたが、弁護士に相談をする権利まで奪っているという状況はやっぱりどうしても許せないというふうに思いますが、いずれにしても今日は私はそういう質問ではございません。部落問題に絞っていきたいというふうに思っています。
もう釈迦に説法でございますから、多くは語りません。日本の、世界にはない日本固有の差別として部落差別というのがございます。この問題をめぐって日本政府とあるいは世界の国々、特に二月に行われた人種差別撤廃委員会、ジュネーブでの会議あるいは国連の人権理事会等での議論等々で混乱をしておりますし、そして一向に部落問題を解決するための方策がなかなか見えてこない国内の状況いうものを考えますと、しっかりとした考え方をこの際確立をしていくべきではないのかという思いであります。
そこで、一つ目の、これまで部落問題を解決するために日本政府が取ってきた、いわゆるそのスタートとなった一九六五年、内閣同和対策審議会の答申というものがございます。この評価で、その後六九年から同和対策事業特別措置法という法律が施行されまして、三十数年間にわたる事業法が展開をされてきました。特に、この部落問題を解決するための方策として取られてきた三十数年間の事業法というのは、その名前のとおり事業でありますから、今から約四十年ほど前に全国一斉に同和地区の指定が行政の手によってなされました。その数は四千六百に上ると言われています。それでもまだ全国で千地区の未指定の地区が存在をしてきたわけでありますが、その当時、行政によって行われた地区指定、そしてそれが同和地区であり、そしてそこに住む人たちが地区住民としてこの事業の対象になってきたわけであります。
御存じのように事業が中心でありますから、それは差別によって生まれた劣悪な住環境を整備していくと。劣悪な状況を放置していけば差別が再生産されるという認識の下でありました。これは大きな成果を上げてきたことも事実でありますし、二〇〇二年にその役割を終えて法律は期限切れを迎えました。こういった一連の経過がございますが、この根拠となっている同対審答申、そしてそれによって行われてきた国の施策というものに対して今の、今日の時点で千葉大臣はどのように評価しているのかということをまずお聞かせいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(千葉景子君) 今、松岡委員からこの間の言わば部落問題、同和対策についての取組の経緯等についてお触れをいただきました。
そして、この間、これまでの間、取組については総務庁に設置をされていた地対協の意見具申におきまして、物的な生活環境を始め様々な面で存在していた格差が大きく改善されたことや、差別意識の解消に向けた教育及び啓発が様々な創意工夫の下に推進されてきたこと等により、全般的に見ればこれまでの特別対策がおおむねその目的を達成できるものと考えられ、これまでの対策は大きな意義があったと。しかし他方、差別意識は着実に解消へ向けて進んでいるものの、結婚問題などを中心に依然として根深く存在している等深刻な課題が残されているということが指摘をされております。
私は、この地対協意見具申で示された実情というか認識、これは基本的には現在でも当てはまっているものではないだろうかというふうに認識をいたしております。そういう意味では、こういう実情を踏まえたこれからの取組というんでしょうか、これが大切ですし、求められているものだというふうに基本的に考えております。
○松岡徹君 今大臣おっしゃっていただきましたように、一九六五年の同対審答申、当時の内閣は佐藤栄作内閣でございました。その後、九六年の地対協、今おっしゃったように、総務庁の中に設置された窓口、そこでの審議会、地対協意見具申が出ました。そういう意味では、今、千葉大臣がおっしゃったことも、九六年地対協意見具申の中のこれまでの取組の評価と課題そして政府のそれが方針というふうに理解して、今日も変わらない方針だというふうに理解していいわけですね。
○国務大臣(千葉景子君) 基本的にはそのような理解でよろしいというふうに思います。
○松岡徹君 この地対協の意見具申というのは一九九六年に出されました。これが同和問題に関する我が国の基本的な認識と取り組むべき課題、責務、方針というふうに理解をしています。
その中で、残念ながら依然として我が国における重要な課題と言わざるを得ないと、国際社会における我が国の果たすべき役割からすれば、まずは足下とも言うべき国内において同和問題などの様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは国際的な責務でもあるというふうに九六年の地対協意見具申、文言を今引用をさしていただきました。
今後とも、国や地方公共団体はもとより、国民の一人一人が同和問題の解決に向けて主体的に努力していかなければならない。同和問題を人権問題という本質からとらえ、解決に向けて努力する必要があるということも今後の課題として提起を九六年の意見具申ではされていますが、これについても大臣の認識は同様なのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(千葉景子君) 今お話がございましたように、この地対協の意見具申において、今後の残された問題として、依然として存在している差別意識を解消すること、そして人権侵害による被害の救済等への対応などが挙げられているというふうに思いますし、私もそのとおりだというふうに認識をいたしております。
そういう意味では、これまでも、これ、総務庁の手から離れて、そして人権問題という形で法務省もこの問題に対して対応させていただいているわけですけれども、例えば法務省の人権擁護機関では、この具申で指摘された課題について、例えば平成十四年には、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律七条に基づいて、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育・啓発に関する基本計画を策定して、これに基づいた人権啓発活動を実施をしていると、こういう中に部落問題ということも当然人権の差別の一つとして含まれるというふうに私も承知をいたしております。
また、平成十六年四月に、人権擁護推進審議会の答申を踏まえまして、現行制度の枠内において可能な範囲で被害者に対するより実効的な救済を実現できるようにするため、人権侵犯事件調査処理規程を全面的に改正して、人権侵犯事件の迅速かつ適正な調査・救済活動を展開をすることができるようにしておるなど、取組をしております。
今後とも、こういうことの更なる進展とともに、人権啓発・救済の活動について関係省庁とも連携協力しながら更なる取組をしていく必要があるだろうというふうに思っております。
○松岡徹君 大体今まで聞いてきた内容と同じような内容なんで、ざっくばらんに聞きたいんですが、今なお部落問題という、部落差別は大臣は存在していると思いますか、今の社会の中で。
○国務大臣(千葉景子君) なかなか難しい問いであろうかというふうに思います。
いわゆる、そういう、何というんでしょうね、部落を何か一つのキーワードにして差別をするというような行為とかあるいは問題、そういうものが存在しているということを私は承知をしているというか、そういう認識でございます。
○松岡徹君 今までも歴代の法務大臣に私は質問をしてきました。その中の、例えば士業の人たちがその職務上の職権を利用して他人の戸籍謄抄本を取って、それを一通三千円から一万円で興信所、探偵社に売っていたという事件が全国で発覚しました。これはもう三年ほど前の話です。そのときに法改正がされて、例えば行政書士の方はこれまで行政罰だったのが刑事罰になっていく、あるいはそれを請求した人間にまでその刑罰が及ぶというふうに刑法が改正されていったという歴史が以前ありました。
これも、なぜ士業の人たちがその職務上の職権を利用して他人の戸籍謄抄本を取るのか、それによって何が起きたのかということを私は言ってきたんですね。何が差別かということを言うときに、その行為によって何が起きたのかということをしっかり知ってなくてはならないと思うんです。
すなわち、例えばその人が部落であるかどうかということによって不利益を生じるような行為が起きれば、これは差別につながると思うんですよね。しかし、その人が部落出身であるということを知っていても、その人の不利益になるような行為はないと。すなわち、共存共栄といいますか、そういうようなことになれば一番いいわけでありまして。
行政書士の方が、あるいは司法書士や弁護士の方がその立場を利用して、そういうことによって行われた行為によってどんなことが起きているのか、これを私たちは調べてきました。それによって、結婚や就職、具体的に就職で排除したという企業も明らかになっています。今なおそういったことが起きています。
あるいは、グーグルの古地図の問題も私は去年森法務大臣のときに説明をさせてもらいました。グーグルで出された古地図、日本の古地図の提供者はラムゼイさんという歴史学者のアメリカの方でありました。その方からも連絡をいただきまして、その人は歴史学者ですから、歴史ですから事実なんです。その古地図の中には、えた村とかえた寺とか、そういう記載があると。これは事実なんです。
しかし、その出身によって不利益を生み出すような行為が生まれる。結婚や就職や様々なところで起きてくる。こういった行為が差別だと。こういった行為によって何が生まれているかということをしっかり見なかったら駄目だと思うんですよね。私は、今も部落差別が存在しますかということを申し上げました。明らかに存在するんですよ。今はあるんですよ。だからこそ政府はこれからも大事な課題として方針を持っていると思うんですね。
ところが、残念ながらこの国に同和問題の窓口がないんです。それは法務省でよろしいんですか。もう一回確認しますけれども、同和問題のこういった問題を、あるいはこれからの同和問題の解決のための窓口は法務省でいいわけですか。これまで総務省にありました。総務省の同和対策室というのが設置されていました。あるいは、地域改善対策室に名前を変えて窓口として存在していました。その後、法務省になっているんですが、法務省のどこにこの問題の議論をする窓口があるのかというのがいまだにちょっと理解ができないんですが、大臣はどういうふうに思われているんですか。
○国務大臣(千葉景子君) この問題については、冒頭の委員からの御指摘がございましたが、昭和四十年以来、総務庁を窓口として様々な施策が推進をされてまいりました。そして、それが平成八年の地域改善対策協議会意見具申という形で大きく整理がされ、そして、それによってこの同和問題と言われるものに対しては、個別で対応をするという形ではなく、人権の大きな課題の一つということで取組をこれから進めていくべしということに私はなったものだというふうに思っております。
そういう意味で、法務省の人権の部署におきまして、人権の啓発あるいはそれについての救済等を含めて全体として法務省の人権部局が対応しているということではございますけれども、同和対策あるいは部落問題ということに特化して法務省が対応しているということではないかというふうに私は認識しております。
○松岡徹君 私は、特化するというか、窓口はちゃんとつくるべきだと思うんですよね。どこで議論をするのかというのが分からない。事実、インターネット上での差別というのはもう大臣もよく御存じだと思います。これは、部落差別だけではなくて様々な人権侵害事案がインターネット上で起きています。要するに、人間社会の成長とともに人権侵害という形態は変わってくるんですよね。これにどう対応するかということが大事なことです。すなわち、現状どうなっているかということをしっかりとつかむ必要がある。実態把握というものがあります。
そういう意味では、九六年の地対協意見具申が政府の今日も生きている方針だと言いながら、もう十四年たつんですよね。その間に様々なこの変化したところで違う新たな形態として差別事象が起きてきていると。それにどう対応すればいいのかというのは、人権侵犯等処理規程に基づいてやっていると言っているけれども、それすらも見えないという状況になっているんですね。
そういう意味では、しっかりとした今日的な実態をつかむ必要があるというふうに思います。これは要望でありますが、是非とも検討をお願いしたいと思います。そういった実態を把握するということをこれはやっぱり是非行ってほしい。人権侵害の実態というものを、差別の実態、現実というものをつかむ、実態をつかむ努力を是非ともお願いを申し上げたい。そのために今、窓口はどこが担当するのかとかいうこともありますので、私は是非ともそういうことを検討をしていただきたいというふうに思います。
そこで、こういった混乱、状況が、さきの二月の二十四、二十五と国連の人種差別撤廃委員会というのがジュネーブで開催されました。そこで、当然、日本の政府も参加しています。外務省を中心に各省も参加しています。
その中で、日本の政府報告書に対する様々な各国の委員からの質問があります。その中の一部を抜粋をしていますが、特に日本の報告の中で、アイヌの人たちを先住民族として認めたことは高い評価を受けています。それに対する取組がこういう形で始まっているという報告を受けたときには高い評価を受けています。しかし、日本にはまだ沖縄の人たちとか部落問題というものの先が見えないと言っていますね。
その中で、特徴的なことを言いますが、国連の人権人道大使というのが日本の代表として出席をしているんですね。各委員から様々質問が出ています。例えば、部落差別、部落問題とは何なのか、部落民とは何なのか。部落民の人たちが差別されるというのは、部落民とはどういう定義をしているのか、部落問題とはどういう定義をしているのかというのが日本政府にはあるんですか、ないんですか。
○国務大臣(千葉景子君) これ、なかなか定義は難しいのではないかというふうに思います。
これもまた昭和四十年の同和対策審議会答申によれば、いわゆる同和問題というのが日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的、社会的、文化的に低位の状態に置かれ、現代社会においても、なお著しく基本的人権を侵害され、特に近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという最も深刻にして重大な社会問題であるというふうに、解説といいましょうか、そういう認識が出されているんですけれども、そういう意味合いだということだというふうに思います。なかなか定義となると難しい問題ではないかな。
ただ、こういう実情、実態といいますか、そういうことについて部落問題なんだという認識ではないかと、それは、日本政府もそういう意味では、そういう認識の下でいろいろな対応を取っているものだというふうには思います。
○松岡徹君 日本の部落問題の定義は、今おっしゃったような同対審答申なり、そのときに議論されてきたことが一つのことになっています。
憲法で十四条に社会的身分又は門地、この中に日本の部落問題が入っているという理解で今も生きています。社会的身分又は門地というものをどういうふうに定義していくのかということが大事なんですね。
しかし、今なお部落差別が存在するというのは、先ほど言ったように、その出身を暴く、暴くということは、この人はどこの出身か、どこの生まれかというのを暴くことによって、この人は部落の出身だということが認知されるんですね。そこで差別が起きるかどうかは別問題ですよ。
私も大阪ですから、大阪で新幹線に乗ってきても、だれも私のことを部落民だと言う人間はだれもおりません、分からないんですから。しかし、それを、戸籍謄抄本を取ったりとか身元を調べると、私は大阪の被差別部落の生まれでそこに住んでいるということが分かれば、社会は私は部落出身だということが分かるんですね。認知される。そこで差別が起きるかというのは利害関係にも絡んできますし、様々な、ないかもしれません。
しかし、そういう意味では、部落問題というのは非常に独特なんですね。しかし、日本にしかない差別なんです。だから、海外でもなかなか理解されないというのがあります。
私の子供は、私の連れ合いは沖縄出身ですから子供は半分半分ですけれども、差別されるかいうたら、部落に住んでいますから部落差別受けているんですよ。同時に、沖縄に対する見方もされるんですね。二つ、ダブルで差別を受けるんですよ。
要するに、なぜこんなことが起きるのかというのがあるんですね。どうやったら効果的にこの問題を解決できるのかということを考えていくときに、日本政府とすれば、やっぱり部落問題の定義をしっかりすべきだ、すべき時期に来ているのではないか、この差別はどういう差別なのかということをはっきりしなくちゃならぬと。
結局、二月の二十四、二十五の人種差別撤廃委員会の中で、様々、各国の委員から日本政府に質問がありました。その中で特徴的なのが、例えば、封建時代の社会階層に発するのであればカーストではないのか、民族問題なのか文化の違いなのか、身分階層制の残渣ではないのかとか、いずれにしてもマイノリティーだというふうにずっとやっているんですね。要するに、宗教が違うわけでもないし日本語も話すし、顔を見ても日本人だと。分からないと言ったら、この日本政府の代表の上田人権人道大使という方は、もう何も違いはない、区別できない、私自身も部落民だと言うんですね。こんなすかたん答えているんですよ。これが各国をまた混乱させるんです、日本の定義がないからなんですね。
結局、それを、その上田大使が発言した後に外務省が引き取って何を言っているかいうたら、今、千葉大臣がおっしゃったように、同対審答申の中身を引用するんですよ。日本社会の歴史的、社会的過程において形成された身分階層構造に基づく社会問題だと言っている。近年、江戸時代に重点を置いた通説が批判されているので差別は多様性を帯びている。何を部落とするか、だれを部落民とするかは不明確であり定義できない、外務省はこういうふうに言っているんですね。
それを明確に答えている日本政府の定義はないんです。この間、二月、先月の二十四、二十五で行われたやつですよ。そのくせ、この人種差別撤廃委員会の中にこの部落問題は当てはまらない、すなわち対象外だと言っているんですよ。対象外だと言うぐらいはっきりした部落問題の定義を持っているんなら、それを言いなさいと。しかし、そういう答えをしていると。これ、非常にあいまいなんですよね。所によって言い方を変えているというふうにしか見えないんですよね。
ですから、やっぱりこの際、しっかりとこの辺の議論を、定義をはっきり明確にしていただきたい。これ、外務省がはっきりするんではなくて、この担当省庁としては当然法務省だと思うんですけれども、そういった議論、今すぐ、明日にというわけにはいかないと思いますけれども、是非、この混乱状況を避けるためにも、今日の部落問題の定義とかあるいは実態、残された課題というものを明確にしていただきたい、その努力をお願いしたいと思うんですが、いかがですか、大臣。
○国務大臣(千葉景子君) この問題について松岡委員が代表質問の中でも御指摘をされました。人権問題という大きな意味では、鳩山総理も、大変重要な、政府として考えていかなければいけない問題であるというような答弁もなさっております。
そういう意味では、やはりこれから政府全体として人権問題、そしてそこに当然部落問題というのも含まれるでありましょう、差別ということが現に存在をしている、こういうことについて、やはり政府としてどう対応していくのかということを全体で考えていく、こういうことが必要ではないのかなというふうに私は思いますので、そういうことをできるだけ政府全体で議論できるように私も提起をしてまいりたいというふうに思っておりますし、また、そのための様々な仕組みですね、そういうこともこれから考えていかなければいけないことであろうというふうに思いますので、そういう人権問題をきちっと受け止めることのできるような、そういう箇所をどうやってつくっていくのか、こういうことも併せて議論を進めていきたいというふうに思っております。
○松岡徹君 非常に抽象的な話なので、そういう答弁しかできないというのは私もよく分かった上でなんですね。
ただ、そういうふうに混乱している状況、それは国自身が、例えば人権行政を進めていくに当たっても、一体人権とは何かという定義もやっぱりしっかりとしていく必要があると思うんですね。私は、日本国憲法で保障されている人権の定義が我が国の今のスタイル、それにプラス我が国が批准した人権条約、国際人権条約の中に定義されているものが私は人権の定義だと思うんですよね。それが差別という行為によって侵害されていくということが人権侵害のことだと思うんです。
人権侵害を起こしてしまう人たちをどうするのかということだけではなくて、人権侵害を受けたことによってどんな人権が侵害された状況になっているのか、どんな権利が奪われているのかということをやっぱりしっかり見ていくべきだというふうに思うんですよね。そこにやっぱりしっかりとした法の網を掛けていかなかったら私は絶対駄目だというふうに思います。人権政策の中身を豊富化していくということは、一つ一つの個別課題の現状というものをしっかりと把握していただいて、その上で課題、方向などをやっぱり明らかにしていくということが大事だと思います。
是非とも、九六年の地対協意見具申が部落問題の政府にとっての方針だというならば、それから十四年たっているわけですから、今の現状はどうなっているのかという把握をする努力をしていただきたい。そして、この混乱状況になっている同和問題を解決するための政府の定義といいますか、部落問題の定義というものを明確にしていくような努力をしていただきたい。
先ほど、千葉大臣は政府全体でとおっしゃいましたけれども、だから最初に私は、なぜこの問題の窓口がないんですかと聞いたんですよ。どこに言ったらいいんだ。政府全体のどこに言ったらいいんですか。やっぱり、それはまずは法務省だと私は今は思いますから、是非とも、千葉大臣の先ほどの決意を形にしていただきたいというふうに思っています。そのことを是非とも千葉大臣にお願いを申し上げたい、そのために私たちも努力をしていきたいというふうに思っています。
ただ、国際的な場で日本の政府代表が非常にちんぷんかんぷんな、あいまいなことを各国の質問に対して答えているという状況は直ちに是正すべきだというふうに思っています。したがって、少なくともこの問題についてどう解決をしていくのかという政府の方針だけはしっかりと打ち立てられるように努力をお願いを申し上げたいと思います。
時間がなくなってまいりましたので、私は、人権侵害を受けた人たちが、あるいは人権侵害の結果、どんな被害が生まれているのかということをしっかりと見ていく、そこに視点を置くということが効果的な方策、施策が生まれてくるというふうに思います。
すべてを批判するつもりはありませんが、人権侵犯処理規程によって処理されてきた人権侵害事案の内容について我々は逐一報告を受けたことはありませんが、先日も千葉大臣から、昨日、法務省の人権作文の表彰式の冊子をいただきました。その中でも、あの御巣鷹山に登った経験のある女の子の作文がありました。結婚を間近にした女の人があの犠牲者の一人でございました。その人が実は被差別部落出身だった。それを知っただれか分かりませんが、匿名で、おまえが乗っていたからこの飛行機は落ちたんだと、部落の人間はテロリストだというようなことを、二十五年前の日航ジャンボ機が落ちたときの犠牲者の中に部落の人、出身がいたからあの飛行機は落ちたんだというようなことを聞いて、彼女は非常に残念がって作文に書いていました。
要するに、そういった理不尽なといいますか、そういうようなことはたくさんあるんですよね。あるんですけれども、それによってどういうことが生まれているかということをしっかりと見ていく必要があるんではないかと思います。
私は、冤罪事件のときに免田栄さんが来られて、年金を受けていないということの相談があって、年金を是非とも受けたいと。もう八十五歳です。もうここにおられる先生方、免田事件というのは、もう一九八三年に冤罪で死刑囚から無罪になった人ですけれども、その人が来て、年金受けられない、厚生労働省の窓口に相談に行ったら、年金をくれないと。いや、掛金払ってないから払えない。いやいや、掛金を払おうと思っても刑務所に入っていたんですと。そうしたら、なぜ刑務所に入っているときに掛金の免除申請をしなかったんだと言われたと。あした死刑になるかもしれない人が三十年後の年金の掛金の免除申請をするかと。しかし、その後に、一九八三年に免田さんは晴れて無実になったんですね。死刑台から戻ってきたんです。彼はまさにこの犠牲の中に、こういった結果、今なお年金を受けられないで八十五歳で暮らしている。
これを救うのは何ですか。政治しかないんですよ。今の法律の枠内で考えれば、彼に年金を支給することはできないんです。やっぱりそういうことだと私は思います。被害がどんなところで生まれているかということを、被害の実態が何であるかということをしっかりと見ていただきたいということであります。そのことを申し上げて、時間が来ましたので終わりたいと思います。
ありがとうございました。