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2010年4月15日 (木) 更新

[発言録] 公訴時効の撤廃法案について質疑

2010年4月6日
参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡でございます。
 今同僚の松野議員の方からるるありまして、私も同じ思いでございまして、そのことは今日は深くはできませんが、その中で幾つか私なりに是非とも大臣の考え方を聞かせていただきたいと。すなわち、今回の公訴時効を撤廃するという法案についての趣旨にかかわるものでありますし、それによって、克服していこう、あるいは整備していこうという今後の課題にかかわることだというふうに思っておりますので、幾つか御質問をしたいと思います。
 毎年といいますか、死刑に当たる事件について時効を迎えています。なぜこのような時効を毎年迎えることになっているのか。それは先ほど松野議員からの指摘もありました。初動捜査の問題とか様々な捜査の側の力量不足もあるかもしれません。それ以外もあるかもしれません。
 そういった現状を踏まえた上で、千葉大臣がこの法律を、改正案を提案するに当たって、被害者の遺族の方々を中心として世論とか声が高まってきているとおっしゃっておりますので、この被害者とは一体だれなのか、遺族とはだれのことを言っているのかという、まずその認識だと思います。そして、彼らが一体何を求めているのかということであります。世論が求めているものは何なのか、公訴時効を撤廃すれば事足りるという話なのかどうかという視点です。
 そういうことからすると、先ほどから質問のところでもありました、被害者、遺族の人たちの思い、あるいは世論の高まり、それを、社会正義の実現、あるいは逃げ得を許さないということをおっしゃっていました。
 改めて、その被害者あるいは遺族とはだれのことを指すのか、そして被害者、遺族が一体逃げ得を許さないでほしいということだけを言っているのか、被害者、遺族の人たちの思いといいますか、そのことをどういうふうに理解をされているのか、大臣の見解といいますか考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(千葉景子君) 今回の公訴時効の延長あるいは一部についての廃止、この大きな改正の背景には、今お話がありましたように、被害者やあるいは家族等々、あるいはそれを超える国民の意識、それの変化ということが大変大きく私もこの背景に置かれているというふうに感じております。
 被害者、遺族というのは何かというお話でございますけれども、これはまさに犯罪の、命を奪われたその御家族であるとかあるいは御遺族であるとか、こういうことになろうかというふうに思いますけれども、今回、そういう皆さんのみならず、やはり国民的にも、重大な犯罪についてはきちっと処罰を最後まですべしと、こういう意識が強まっているということも確かだというふうに思っております。
 ただ、御指摘のように、それじゃ、その被害者や遺族の皆さんがそれだけを求めておられるのか、あるいはそれで事足りると感じておられるかといえば、私も、必ずしもそういうことではないというふうに思っております。
 むしろ、その精神的な本当に苦痛あるいは負担、こういうものをどうやってサポートしたり救済をしていくのか、いろんな問題が私は更に存在をしているだろうというふうに思っております。むしろ、もう改めて何か掘り起こされるよりは、少し静かにまたこれからの生活を営ませてほしいと、こういうお声があることも、これも私もよく分かります。
 そういう意味では、公訴時効を延長すれば、あるいは廃止をすればそれで被害者、遺族の皆さんの気持ちがこれだけで本当に何か救われるということでは私はなくして、様々な被害者の皆さんのための施策、こういうものをより一層強化していくことが必要であろうというふうに思っています。
 この間も、例えば平成十七年十二月に閣議決定された犯罪被害者等基本計画、これを基本にしながら、犯罪被害者の皆さんに対する様々な救済策やあるいはサポート体制、こういうものを講じていることももう御承知のとおりでございます。ちょうどこれが、基本計画が五年間でございますので、今後、この計画の改定に向けた作業も進めていかなければなりません。そういう中で、一層充実した被害者保護の在り方について検討がなされるべきものだというふうに思っております。
 なお、これに基づいて法務省でも、被害者の皆さんの救済あるいは保護、サポート施策、こういうものをこの間講じてきているということも御承知のところであろうというふうに思いますので、今後とも、ただ公訴時効を延長あるいは廃止をするということのみならず、被害者の皆さんの本当に保護、救済により一層力を入れていかなければならないというふうに私は感じております。

○松岡徹君 私も、犯罪被害者とは一体だれなのか、身内、家族を殺された遺族が犯罪被害者の遺族だということになるのか、あるいは殺人未遂で、そのときの事件の傷が原因で体が不自由になって今なお苦しい生活をしているという方もおられます。あるいは、性犯罪なんかは心の殺人だと言われています。こういった人たちの被害者の声といいますか、やっぱり世論は、一つは、逃げ得は許さないというのはこれは当たり前の話だと思うんですよね。その中でも時効制度を取ってきた我が国はどういうふうに対応してきたというのがあります。そのときに、毎年、去年でも六十件を超える死刑に当たる事件の時効を迎えるということがありますし、年間数十件、そういう時効を迎える事件があります。
 なぜこんな事件、時効を迎えてしまうのか、ということは捜査の側の機能が弱っているのではないのか。すなわち、社会正義を貫くということは、犯罪を犯した者の逃げ得を許さないということは、やはりしっかりと捜査をしていく、そして犯人を検挙していくということが大事だと思うんですね。それをしっかりしてほしいというのは当然のことでありますから、そこの課題は何なのか、なぜ今これだけ毎年時効を迎えている事件があるのかということもしっかり見なくてはならないと思うんです。
 あるいは、あわせて、そのときにそれが大きなプレッシャーとなって冤罪を生むことがないような一方の制度を整備していくということも大事な社会正義を貫く課題だと私は思うんですよね。
 もう一つは、当然それを強く望むのは、その社会正義が貫かれたということによって被害者の人たちが持つ心の安らぎといいますか、あるいは安心といいますか、よりどころといいますか、そういったものが生まれると思うんですね。
 しかし、被害者の方々が、あるいは遺族の方々が望んでいるのは果たしてそれだけなのか。私たちの社会は、社会正義を貫くといったときに、不幸にしてそういう事件に遭った、巻き込まれた、それによって生まれる様々な被害を全く顧みない社会でもいいのか、社会正義が貫かれたということになるのかどうか。そういう意味では、今、千葉大臣がおっしゃったように、犯罪被害者の救済基本計画の五年目の見直しのときにしっかりとそのことを反映していってほしいと思うんです。
 ただ、私が冒頭言ったように、被害者とはだれなのか、遺族とはだれなのか、そしてその人たちの思いとは何なのか。社会正義を貫いてほしいということと併せて、犯罪被害者が社会の中で放置されているというか見放されていると。私たちもこの間、被害者の方々の意見も様々聞いてきました。例えば、犯罪被害者の家族がその地域で冷たい目で見られていくとか誤った世間の見方にさらされているということがありますし、あるいは子供が、自分の父親が犯罪に巻き込まれたことによってすぐに経済的な理由で子供が進学を断念するとか、そういうふうなことが起きていっているとか、様々な影響が生まれてきていますね。
 こういったものにどうこたえるかといいますか、手を差し伸べるかというのが、やっぱり社会正義を貫くという意味では大事な一方の視点だと思うんですね。そのことをしっかり持ってほしいという思いなんです。すなわち、犯罪被害者、遺族の方々の声をどう受け止めるのか。社会正義を貫くという、犯罪者の逃げ得は許さないということに力を入れてほしいけれども、あわせて、不幸にしてそんな事件に巻き込まれた遺族の人たちがその事件によって社会的な様々な苦境に立たされるということについてどう回復をできるような社会にしていくのか、これも併せて社会正義を貫く重要な課題の視点だと思うんですね。
 そういうことからすると、是非、例えば松野先生の質問にもありましたけれども、性犯罪の被害者の方々は、例えば強姦致死の場合は今回は対象にならないんですかね。あるいは性犯罪の場合は、強姦致死に至らなくても心の殺人を負って様々な、ひっそりと暮らさざるを得ないということがあります。確かな、それこそDNAという残留物が、犯人と特定できるようなものがあるにもかかわらず、それは時効を迎えてしまうということがいいのかどうかということもあります。
 こういった死刑に当たる事件以外の部分のそういった被害者の声とか事件に対する対応というのをどう考えておられるのか、今後検討するという立場におられるのか、是非ちょっと千葉大臣の考え方を聞かせていただきたいというふうに思います。

○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がありました性犯罪等につきましては、私も大変深刻な問題だというふうに認識をいたしております。この間も多くの方々からこの被害の深刻さ、先ほど松岡委員がおっしゃいましたように、本当に心の殺人なんだというような、本当に心痛い、こういう指摘も私も承知をさせていただいております。
 そういう意味では、被害の重大性というのは私も理解をしているところでございますが、今回の法改正というのが、言わば人の命を奪った殺人等で死刑というような法定刑があるというところを公訴時効を廃止をする、あるいは延長すると、こういう考え方で整理をさせていただいておりますので、この性犯罪ということ、直に今回の改正で対象にすることができなかったというものでございます。
 この性犯罪等については、公訴時効というこういうことばかりでなくて、非常に、先ほどお話があったように、犯罪をきちっと処罰をするということのみならず、そのケアとか、あるいはそれによって負った精神的な大変なる被害、こういうものに対して社会がどうやって本当に受け止めていくかということなどが大変大きな課題であろうというふうに思います。
 そういう意味では、決して、今回はこの公訴時効という面では確かに改正の中には入ってはおりませんけれども、こういう総合的な性犯罪被害、これに対してどう対処をしていくのか、こういうこと全体の総合的な検討の中で、私は是非公訴時効等の問題も改めて議論をしていかなければいけない、そういう課題だというふうに認識をしております。

○松岡徹君 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、社会正義、今回の公訴時効を撤廃するのは、国民世論や被害者や遺族の人たちの、逃げ得は許さない、あるいは社会正義を貫く制度としてつくりたいというのなら、社会正義を貫く制度、社会的な制度とすれば、公訴時効を撤廃すれば済むのかというふうな視点で私は申し上げたわけであります。
 公訴時効を撤廃する場合、当然その社会正義を貫くべき捜査の側がどんな体制やあるいはどんな部分が克服されるべき課題なのかということをしっかりと示さなかったら、公訴時効の撤廃をしたからといって社会正義が実現されるわけではないわけですから、社会正義を実現するための制度とすればどんな課題があるのかということをやっぱり併せて引き続き検討すべきだというふうに思っています。捜査の側がやっぱり捜査力を高めていくということも大事な課題でありますし、それに併せて、社会正義をというのなら冤罪を生み出さないような制度設計をどうしていくか。それは先ほど松野先生が言ったように、可視化を併せてやっていくという制度も、これは公権力を行使するに当たって公正に公平に権力を行使していることを証明するもの以外の何物でもないわけですから、そういう意味では、そういう部分も併せてこれからの重要な課題として、あるいは当面する緊急の課題として是非とも心に留め置いて、実現に向けて、先ほど聞かせていただいた千葉大臣の決意を是非とも具体化するように私たちも努力することを申し上げて、終わりたいというふうに思います。よろしくお願いします。

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